心の小瓶

小さな粒は
日に日に増えていく
私の心の瓶に
サラサラと音をたてる

小さな粒は
幸せの絶頂であるはずの
結婚当初から
積み重なっていく

夫が憎いと
私は呟く
口に出すのは初めてだ

夫は職場で出会った
気がきく優しくて
ムードメーカーだった

夫と付き合うことになって
もっと好きになって
3カ月後に夫婦になった

幸せのはずが
不安だらけだった
夫の周りには常に女友達がいたからだ

ヤキモチや束縛が嫌いな夫に
嫌われたくなかったから
私は心に瓶を置いた

今日も帰りが遅いと気にして
ひと粒ポトンと瓶に入れる
誰かに買ってあげたピアスのレシートを見つけて
また瓶に小粒を溜めていく

おまえもオシャレに気を使えと言われて
なんで俺の休みをおまえに合わせる必要があるんだと言われて
たまには遊んでこいよと言われて

私といる時間より他の人といる時間の方が長いんじゃない？
そう思いながら何故、10年も一緒にいたのだろう
ああ、私はまだ夫が好きなんだ
涙がひと粒、ガラスの瓶にポトンと落ちる

気づくのが遅いですよねと言われて
私は泣きながら笑顔を見せる
気がついていれば違った未来があったかもしれませんね
夫を殺す前に自分の気持ちを吐き出していれば

涙の入った瓶に私は静かに蓋をする