ベルーナドーム20時開演を検証してみた―野球臨研究ノート2023番外編
※このnoteにはアイドルマスター シンデレラガールズ U149 12話の若干のネタバレを含みます
またフィクションに対して現実の制約でマジレスするなという方はお引き取りください
6/28に放送されたU149 12話。
4月から毎週水曜の夜の楽しみであり、今日で終わるのか~と思いながらリアタイしてたら、開始1分でベルーナドーム(と思われる背景)が登場してそれどころでは無くなりました。
12話の1つの鍵であったのが、ライブが20時開演であること。労働基準法の規定により第三芸能課のアイドルは20時開演では出演できずにいました。
そこを何とかして開演時間を早めて第3芸能課のアイドルを出演できるようにしたのが本編。作中時間は夏であり、描かれている光線状態からおそらく15時~16時開演であると思われるので4~5時間前倒ししたものと思われます。
しかしながらベルーナドームに行ったことある方やある程度ご存じの方であれば、ここで1つの疑問が生じるでしょう
ベルーナドームで20時開演なんて可能なの?
という訳で今回はこれを現実世界の2023年時点の情報やダイヤに即して検証していきます。
法律・ルールの壁―公演時間2時間だけ!?
まずは法律やベルーナドームのルールから考えていきます。
前述の通り、労働基準法には年齢によって就労可能な時間帯があります。
労働基準法61条5項では、満十三歳に満たない児童の労働時間は20時(厚生労働大臣が必要であると認める場合は地域又は期間を限って21時)までとしています。9~12歳である第3芸能課のアイドルは、この規定によりライブに出られませんでした。
しかし労働基準法には加えて18歳未満の者に対する規定もあります。61条1項では18歳に未満の労働時間は22時(2項で厚生労働大臣が必要であると認める場合は地域又は期間を限って23時)までとされています。
近年、リアルのアイマスライブでは公演時間はだいたい3時間は超えています。これを作中に当てはめるとすれば20時開演なら23時を回ります。
つまり作中で先輩アイドルとして登場するニュージェネレーションズの3人やLiPPSのうち速水奏と城ケ崎美嘉は18歳未満のため、最後のおねしんに出てこれない可能性が高くなってしまいます。
しかしそれを上回るのがベルーナドームのローカルルール
ベルーナドームでのプロ野球開催時、トランペット等の鳴り物が使用可能なのは22時までとされており、以降は応援団の応援は笛でリード、場内演出も登場曲を使用しないなど最小限となってしまいます。
このルールをライブで適用した場合、大々的なライブができるのは22時までということになってしまいます。
なお過去に埼玉西武ライオンズの主催試合にて試合後のパフォーマンスとしてアーティストを呼んだ際、延長戦になってしまい試合時間が22時を回ってしまったことがありました。その際はアカペラのマイク歌唱のみでのパフォーマンスとなりました。また出演中に22時を回ったため、2曲目はアカペラとしたこともありました。このように22時を境にオケ音が使えるかどうかが左右される一方で、アカペラでの歌唱は問題が無いようです。延長戦になった場合も、場内アナウンスは行ってますからね。
そのため、アカペラであれば22時以降もライブができる可能性があります。
ちなみに一説によればベルーナドームでのライブは21時までに音出しを止めないという噂もありますが、真偽不明なのとMOIW2015で21:03までライブやったという記録もあるので、ここでは確証の取れてる野球ルールの22時を採用します。
ここから導き出されるのは、ベルーナドームで20時開演であるならば
公演時間を2時間のみにする
18歳以上のアイドルを集めて22時以降はアカペラライブを行う
この2択に絞られます。
うーん、ここまでするなら最初から開演時間を早めないとダメなのでは?
新幹線の壁―滞在時間わずか2分も!?
ここからは来場者側の目線で考えます。
まずは遠征民が使う新幹線の終電から
東海道新幹線から
まず山陽新幹線最終である広島、岡山、姫路行はいずれも開演前の時点で西武球場前を出ないと最終新幹線に乗ることは不可能です。
新大阪最終の東京発は21:24、品川発は21:31。これに乗るためには特急課金を厭わない場合でも、西武球場前20:04発の準急に乗らなければ間に合いません。
この西武球場前20:04が新大阪終電のデッドラインということで、ベルーナドームのライブではここまでにアンコールや新情報を除いたライブ本編が終わるように時間設定をしているようにも見受けられることもあります。しかし今回は20時終演で無く、20時開演。つまり新大阪最終に乗るには、移動時間も加味すると滞在時間が2分いられるかどうかということになります。
名古屋最終であれば20:50。ライブの前半戦くらいは見れそうですね。
続いて東へ向かう新幹線。東京、上野、大宮の時間を記載したものの、東京~大宮間の新幹線の速度制限や武蔵野線経由でのショートカットもあって、どの場合でも大宮が新幹線乗車駅となります。
秋田、盛岡、山形最終はいずれもアウト。金沢も前述の新大阪と同様で滞在時間2分です。
新潟・仙台は20:34発。最初の挨拶と3曲目くらいまではいられるかな?
なお仙台行に関しては、乗り換え案内にしれっと出てくる西武多摩湖線青梅街道駅から武蔵野線新小平駅という知る人ぞ知る徒歩連絡ルートを使うと9分長く居られます。玄人向けルートですが。
長野なら21:04発なので1時間は見れそうですし、越後湯沢なら21:33発だから1時間半も見れるので半分くらいは見れそうです。
那須塩原終電が意外と早いですが、宇都宮までで妥協すれば在来線経由で22:18発に乗るまでいられます。高崎も在来線ルートの方が長く滞在可能。
ということで、20時開演で新幹線で遠方まで帰るのはまず無理でしょうね。
終電の壁―来場者を帰しきれるのか!?
最後に終電問題と輸送力です。
東京近郊の終電を上記のようにまとめましたが、横浜・千葉で22:34、都内近郊や熊谷を除く埼玉県各都市であれば23:16発までいられます。
しかし西武球場前の池袋方面の最終が23:16発であるため、池袋や所沢であっても各方面と同じ時間までしかいられません。西武球場前を最後に出る列車は23:29発の西所沢行ですが、西所沢到着時点で池袋線の上り列車の営業が全て終了しているためその先へは行けません。終電繰り上げの弊害ですね。つまり列車としてのデッドラインは23:16と考えた方が良いでしょう。
ですがドームに来場した人々を最終列車だけで帰しきるのは困難です。終電は8両編成のため、定員1200人ほど
作中の客席の埋まり具合(空席箇所の描かれ方やアリーナの形成方法)は現実世界におけるデレ10thファイナル公演と同じくらい。この日運転された臨時列車の本数と定員から割り出しただいたいの鉄道利用者数が20280人となりました(10連優等6本、8連各停6本運転のため、10連は定員1400人、8連は定員1200人とし、乗車率が全列車130%として計算)。終電の定員の約17倍(=1本で賄うなら乗車率1700%)です。
多少強引に乗車率160%で全列車を出すなら、9本の運転は必要です。22:18発保谷行から乗せていってなんとか賄えるかというラインとなります。なお山口線は加味しないで計算していますが、山口線の8500系の定員はわずか302人ですし22:27発が22時台唯一の列車のため賄いようがありません。
やはり22時終演までで無いと、西武の現行のコンサートダイヤでは厳しいところがあります。
ところでこの輸送問題に近い事例をやってのけたことが、先週ありました。7/1に行われた埼玉西武ライオンズvs福岡ソフトバンクホークス戦です。U149 12話放送からわずか3日後のことでした。
この日はユニフォーム配布日ということもあり、27548人が来場。試合は延長戦で決着がつき、22:37に終了しました。
野球臨についての細かい説明は昨年の野球臨研究ノート各章をご覧ください。
この日西武球場前駅で待機していたのは10連が4本。すなわち4本臨時優等を出すということになります。しかしどんなに遅いパターンダイヤでも22:26、22:41、22:55、23:10の4本が最後のパターンになります。そのため西武球場前駅発復路優等1本目は試合終了を待たずに22:26発を運行。残り臨時優等3本+定期列車5本(上記に無い22:47発と23:29発西所沢行)で賄えるのか、特発を立てるのか、西武線アプリを見ながら注目していましたが、特発を出すことなく輸送しきったようでした。
ライブ時と野球時で大きく異なるのが、鉄道利用者の割合。ライブ時は駐車場が閉鎖され、上北台・立川行のバスが運転されないため、ほとんどの来場者は鉄道、それも狭山線経由で池袋方面へ向かいます。一方で野球開催時の鉄道利用者は5~6割((2ページ目)「ライオンズ優勝!」を盛り上げた西武鉄道の“神ダイヤ”とは | 文春オンライン (bunshun.jp)より)。今回の例で言えば約15000~16000人程の鉄道利用者ということになります。また各種配信や無料の一球速報もありますから、ライブ以上に途中退席者もいますので試合が終わった時点で鉄道利用者が10000人もいたかどうかも分からない部分があります。その前にホームチームのライオンズが勝ち越しを許したので、そこで帰ったファンも多いでしょうし。
何はともあれベルーナドームで20時開演は、あまりにも現実的では無いことが良くわかります。
会長の鶴の一声が無かったら、帰宅難民続出だったでしょうね。
おまけ・開場時間もマズかった
作中のポスターでは19時開場ともなっていましたが、これも現行コンサートダイヤと照らし合わせると不都合が生じます。そもそもドームライブなら2時間前開場がほとんどですので、まず着席できてなくて開演が押すでしょう。
2023年改正のコンサート臨ダイヤも土休日ナイターダイヤをベースに作られています。そして土休日ナイターダイヤはあくまで18時や17時プレーボールに間に合うように策定されています。
その結果、18時・19時に西所沢を出る列車は毎時4本のみ。普段の16時、17時開場であれば10分間隔や7.5分間隔のフル回転で対応できます(できてあの混雑です)が、19時開演の場合は相当な時差入場を呼びかけない限りはおそらくこの本数では対応できません。先ほど使った定員を元にした計算だと、8本全てで乗車率130%なら12480人、150%でも14400人までしか賄えない計算となります。
作中世界のベルーナドームは来場者を抱え込めるくらい周辺に宿泊地が多く、都心からも近くて終電も遅く、アクセス路線は複々線くらい敷かれて15両編成が走っていたのかもしれない…。
その世界線なら堤帝国が所沢か大宮に壁付き開閉式屋根のドームを作っていたのではないだろうか…。
以上