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【1000年先へのメッセージ】書家×石材×彫士 響き合いで生まれる記念碑に込められた想いとは?

みなさん、こんにちは! 学生広報チームの加藤と金川です。今回は、創立100周年記念事業プロジェクトの一つ、「記念碑の設置」を進める教育学部の廣瀬 裕之先生にお話を伺いました。記念碑と聞いて、みなさんはどんなイメージをお持ちですか? あまり、なじみがない方も多いと思います。ぜひこの記事を読んでいただき、廣瀬先生の後世に伝えたい想いや、記念碑へのこだわりを感じ取ってもらえたら嬉しいです。

【プロフィール】

廣瀬 裕之(ひろせ ひろゆき)教授(教育学部 教育学科)

書写書道教育と書道史が専門で「舟雲(しゅううん)」という雅号で書道家としても活躍されています。教育学科に所属し、趣味は俳句、サイクリング、歴史探訪だそうで、特に旅行をしながら俳句を創作したり、大きな筆で文字を書くことが大好きとのことです。かつてフランス・パリの画廊と東京新宿の住友ビルで個展を開催されました。
 
委員歴(一部)
・2017年 9月~ 毎日書道展企画委員会 企画委員
・2022年 11月 全日本書写書道教育研究会第63回全国大会 運営委員長
受賞歴(一部)
・1990年 7月 財団法人毎日書道会・毎日新聞社, 第42回毎日書道展会員賞
・2021年 2月 公益財団法人書道芸術院, 第74回書道芸術院展・春華賞

■全てはここから始まった発祥の地「築地本願寺」

学校法人武蔵野大学は、1924年に築地本願寺の境内に「武蔵野女子学院」が創設されたことから始まります。そこから1929年に保谷村(現在の武蔵野キャンパス)に移転し、1950年に女子短大、1965年に女子大学を設立、そして時を経て、2003年に名称を「武蔵野女子大学」から「武蔵野大学」に変更。翌年、2004年には大学を男女共学化、2012年に「有明キャンパス」(東京都 江東区)を開設し、現在に至ります。

今回の記念碑の設置は、本法人創立100周年記念事業プロジェクトの一環です。武蔵野大学の原点といえる発祥の地「築地本願寺」にシンボルとなる記念碑を建て、これまでの100年の歩みを石に刻し、後世に伝えるとともに本法人が今後、未来にむかってますます発展することを願い、モニュメントを設立することになりました。

何枚も試作をくり返された書(草稿)を見せていただく

■100年後ではなく、1000年後の人々まで届けたい“想い”

「なぜ石碑?」と疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。今の時代、デジタル技術が発達して様々な記録媒体がある中、あえてアナログな記憶媒体である記念碑を選んだ理由について廣瀬先生にお伺いしました。
 
「例えば、8ミリビデオ、CD、USBのように、デジタルで残せるものは色々と開発されました。ですがこれらは技術の発展とともに、100年経たずに次々と形を変えていきましたよね。一方、記念碑は石が破壊されない限り、物理的には同じ形のままほぼ永遠にあり続けるものです。私はその、ずっと形を変えないところに魅力を感じていました。
私は武蔵野大学が日本一の大学になって欲しいという願いをいつも持っています。この願いを実現するために、武蔵野大学には100年にとどまらず、はるか未来の1000年先を目標に発展し続けて欲しいと願っています。1000年後の東京は、どのようになっていることでしょう。空飛ぶ車が走り、宇宙へ気軽に行けるようになっていることでしょう。武蔵野大学は日本一をめざし、たゆみない努力を続け、いつの間にか世界に名だたる大学に成長し、この石碑ともに創立1000年記念の日を迎えられるように願っております。そして、草創期の学校法人武蔵野大学の存在や経歴を知ってもらいたいと思います。」
 
ロマンあふれる廣瀬先生のお話によって、記念碑への興味がグッと湧いてきました。1000年後に届くものをつくるわけですから、どんな人たちが見てくれるのか、想像するだけでワクワクしますね。

■記念碑に刻む文字を夏休み返上で熟考・改良

廣瀬先生は、今回のプロジェクトの記念碑のデザインだけでなく、そこに刻む書の揮毫(きごう)(毛筆で筆を書く工程)も担当されています。まず、廣瀬先生が筆で紙に書き、その文字をもとに彫士の方が石碑を刻し、記念碑が完成します。廣瀬先生は石碑の大きさに対する文字の大きさと字配り、そして書の造形にこだわり、夏休み中も毎日、熟考を重ねて改良した結果、この書に至ったそうです。

記念碑は、表面に「武蔵野女子学院発祥の地」などの文字が刻まれ、裏面に細字でこれまでの歴史が刻まれます。石碑が完成したら「ぜひ裏側も見ていただき、記載している学校法人武蔵野大学のこれまでの歴史を読んでほしい」と話してくれました。

記念碑裏面に刻まれる実物大の草稿

■1000年先まで伝えられる石材を選ぶために全国各地へ

また、1000年残すための石材選びにもとてもこだわったそうです。記念碑は築地本願寺の境内に建立されますが、1000年の間、風化させず、より多くの人に見てもらうためには、今、一番心配な大地震とそれにともなう津波にも耐え、また雨風にさらされてもすり減って無くなりづらい石であることが必須になります。

廣瀬先生は全国各地に足を運び、様々な石を実際に目で見て触れて、香川県高松市の山から産出する「庵治石(あじいし)」を選びました。"花崗岩のダイヤモンド"とも呼ばれるこの石は、日本一摩滅しにくい岩石で水が浸透しにくく、苔も生えにくいそうです。また、経年劣化にも強く、廣瀬先生によると、現地にある300年前の「庵治石(あじいし)」で作られた灯篭や神社の階段は、最近刻されたものと見違えるほどだったそうです。

そして、この石を石工(いしく)が碑の形に加工し、彫士が文字を刻していきますが、今回この石碑に文字を刻してくださるのは、厚生労働省から卓越した技能者として表彰され、さらに、国からも勲章を受賞されているという現代では数少ない熟練の手彫り職人なのだそうです。書家×石材×彫士が響き合うことで、どんな記念碑が完成するのか、とても楽しみになってきました。

■自らの手で「書く」という行為を風化させないために

最後に、廣瀬先生から若い世代へ、自分の手で文字を書くことを意識してほしいとメッセージをいただきました。

「スマートフォンやパソコンなどの電子機器は便利な道具ですが、自分の手で文字を”書く”という行為や文化を風化させてはいけないと考えています。実際に自身の手を動かすことで、より記憶に残りやすいというメリットもあります。そのため、ノートに手書きのメモを取りながら授業を受けることがおすすめですね。私としては、文字文化に興味を持ってもらい、先人が守り育ててきた「文字を書く」という伝統文化を学んで、そして次の世代に伝え大切にする心が少しでも育ってくれたらと思っています。」
 
廣瀬先生の想いが込められた1000年先の未来は、どんな世界になっているのでしょうか。そして、それは私たちがどんな幸せを生み出して後世につなげていきたいか? という“問い”にも聞こえました。記念碑は、2024年5月の完成を予定しています。

インタビュー後の写真 (左から加藤、廣瀬先生、金川)

※学年、肩書は取材当時(2023年12月)のものです


経営学科1年 加藤 佳
経営学科1年 金川 心


【学生広報チームについて】
学生広報チームは2023年9月に活動を開始しました。創立100周年事業プロジェクトの取材を行い、武蔵野大学だけでなく、学校法人武蔵野大学の中学校や高等学校の学生や地域の方々にも武蔵野大学や100周年事業の魅力を発信できるように今後も活動していきます。


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