2次元と3次元を融合した武蔵野大学の新たな美術館-デジタルミュージアムの制作にかける想い-
皆さん、こんにちは。学生広報チームの岩崎と松澤です。
2024年を迎え、学校法人武蔵野大学は創立100周年となりました。これを記念して、100周年記念プロジェクトが進行しています。今回はその一つである「高楠順次郎博士デジタルミュージアム」プロジェクト責任者の小西聖子副学長に、制作にあたっての苦労やデジタルミュージアムの未来像についてお話を伺いました。
小西聖子副学長の紹介
小西先生は人間科学部人間科学科の教授で、トラウマ反応の治療やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の心理療法を専門としています。日本におけるトラウマ・ケアやPTSDの認知が低かった頃から、犯罪被害者支援に携わっています。最近はPTSDの治療をオンラインで行うという研究を進められています。
そんな小西先生は以前から絵を見たり美術館に行くのが好きだったそうです。美術館の制作に興味をお持ちだった小西先生にとって、今までにないデジタルミュージアムの制作に携われることは大変うれしいことだったそうです。
高楠順次郎博士デジタルミュージアムとは?
さて、皆さんは高楠順次郎博士デジタルミュージアムをご存じですか?
高楠順次郎博士デジタルミュージアム(以降、デジタルミュージアムと呼ぶ)とは、本学の学祖である高楠順次郎博士と関係の深い仏教関連の資料をデータ化し、オンライン上で閲覧できるサービスです。武蔵野大学のホームページで公開されている、縁バースキャンパスからアクセスすることができます。なお、この縁バースキャンパスは、オンラインで繋がれるキャンパス空間の集合体の名称です。4つの交流空間(JIZAIスクエア、武蔵野スクエア、有明スクエア、千代田スクエア)とそこから派生したいくつかのエリアから成り立っています。そしてデジタルミュージアムも、派生したエリアのひとつに含まれています。
■デジタルミュージアムへのアクセスはこちら
※どなたでもご覧いただくことができます
デジタルミュージアムが生まれるまで
「デジタルミュージアム」プロジェクトは、武蔵野大学の学祖高楠順次郎博士の業績を多くの人に知ってもらいたいという思いから始動したプロジェクトです。現在、武蔵野キャンパスの雪頂講堂には、高楠先生にまつわる資料がいくつか展示されていますが、高楠先生に対する学生達の興味が薄く、なかなか見てもらえないという課題がありました。
そこで、プロジェクトの責任者である小西先生は「展示の方法をもっと新しい形にする必要がある。展示ができるスペースが限られているなら、バーチャルを活用するのはどうだろうか。」と考えたそうです。バーチャルを活用することで、学校が所有している高楠先生の業績や高楠先生と関わりの深い仏教関連の資料すべてを、一つの場所で展示することができるようになるためです。小西先生の提案に賛同してくれた、データサイエンス学科の石橋直樹先生と岩田洋夫先生のご助力があり、デジタルミュージアムの本格的な制作が始まりました。
「人の協力がなければ出来上がらない」デジタルミュージアム制作裏話
では、具体的にはどのようにデジタルミュージアムの制作が進められているのでしょうか。
高楠先生の資料をデータ化するのは困難を極めました。それは学内中に高楠先生の資料が散り散りに保管されていたためです。そのため、制作にあたり、第一に取り組んだことは、武蔵野大学が所有している高楠先生に関する資料を年代、著者、種類といった”タグ”をつけながら整理することだったそうです。資料の総数は一万点以上にもなります。武蔵野キャンパス内に点在している資料を一つの場所に集め、そのひとつひとつの資料にタグをつけて整理していく作業は、とても地道で時間がかかるものでした。武蔵野大学には学芸員はいませんが、これらの資料を整理する役割を担ってくださった方たちの存在がありました。これらの作業は手作業で進められたそうです。小西先生は、今回のデジタルミュージアムの制作の根本にある資料の整理とデータ化に関わってくれた方々に「大変だっただろうな、ありがとう」と感謝を口にしていました。尽力してくださった方々の血のにじむような努力が伝わってきます。
そして、実は現在、縁バース上で公開されているデジタルミュージアムは制作途中の段階です。小西先生は「現在公開されているページは表紙に過ぎず、これから制作が進められることでさらに充実していく」とおっしゃっていました。
デジタルミュージアムは、生前の高楠順次郎博士の『新しいことに積極的に挑戦するというポリシー』を取り入れながら制作されています。さらにこの思いを体現しようと岩田先生の協力のもとで開発中なのが、バーチャル空間に自ら入り、デジタルミュージアム内を実際に歩くことができるバーチャルリアリティミュージアムだそうです。今後、デジタルミュージアムは、高楠先生に関する資料をデータで展示するという面と、バーチャル技術を応用して実際にデータ上のミュージアムを散策できるという二面性を持った、まさに最先端を追う武蔵野大学らしいミュージアムへと成長していくとのこと。2次元と3次元が融合した新たな美術館の完成は2029年を予定しています。
小西先生が期待するデジタルミュージアムの未来
小西先生は「今後、学内外問わず、どんな人でも、どこからでもアクセスできるデジタルミュージアムは、学校の新たな魅力のひとつとして成長する。デジタルミュージアムの中のデジタル資料は、建学科目である仏教の授業にも活用し、学生たちのさらなる仏教理解の一助としても活躍していく」と語ります。これに加え、先生はデジタルミュージアムを通して繋がりを生み出すことに大きな期待を寄せています。
「デジタルミュージアムは高楠順次郎博士と関わりの深い作品の概要や画像を端的に知ることに適している。デジタルミュージアムを入口として、武蔵野大学に興味を持ってくれたり、武蔵野大学が所有する作品を見るために実際に学校に訪れたりしてもらう。このようにして武蔵野大学と地域や人との繋がりを結びたい」と話していました。
デジタルミュージアムの完成に期待
今回はプロジェクトの責任者である小西先生にデジタルミュージアムの制作にかける想いについて取材しました。
取材を通して、デジタルミュージアムの制作は誰か一人でも欠けていたら実現が困難になっていただろうなと感じました。取材の中で、「様々な苦労の末に出来上がった現在のデジタルミュージアムが公開された時はとても嬉しかった」と聞き、私も心から嬉しくなりました。皆さんも、一緒にデジタルミュージアムのさらなる発展を見守りましょう! (岩崎)
デジタルミュージアムの取材をする前は展示されている資料が少なく、もう少し内容が充実していてほしいと感じていました。しかし、小西先生のインタビューを通してデジタルミュージアムはまだ製作途中の段階であることを知り、とても驚き、また僕自身もこれからのデジタルミュージアムの成長が楽しみになりました! それとともに、デジタルミュージアムというものをより多くの人に知ってもらいたいと思うようになりました。
この記事で少しでも興味が出てきた方がいらっしゃいましたら是非デジタルミュージアムを体験してみてください!(松澤)
次回はデジタルミュージアムの技術的な開発に携わっている石橋先生に取材を行います。お楽しみに!
※学年、肩書は取材当時(2024年8月)のものです
人間科学科1年 岩崎 璃子
経営学科2年 松澤 秀成
【学生広報チームについて】
学生広報チームは2023年9月に活動を開始しました。創立100周年事業プロジェクトの取材を行い、武蔵野大学だけでなく、学校法人武蔵野大学の中学校や高等学校の生徒や地域の方々にも武蔵野大学や100周年事業の魅力を発信できるように今後も活動していきます。