研究成果展「閉経後乳がんに対するビスホスホネート製剤の有効性と安全性」 益戸智香子先生
こんにちは。武蔵野大学武蔵野CLS学生スタッフです。
武蔵野CLSにて研究成果を展示されている先生方をご紹介します。
3人目は臨床薬学センターの益戸智香子先生です。
海外の治療法から新たな薬の使い道発見
CLS:今回のように、閉経後乳がん後の再発予防に骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネート製剤を使用するなど、本来の薬効ではない症状に薬を使用しようと考える手がかりは、どのように見つけるのでしょうか?
益戸:『診療ガイドライン(根拠に基づいて現時点で最適な治療などを提示している本)』を確認するようにしています。そうすると、「こんな薬がこんな病気に使用されているのだな」という処方例に気づかされます。また、アメリカ・ヨーロッパと日本で使われている薬が違う場合なども、考える手がかりにしています。
患者さんに寄り添って薬の選択を
CLS:今回の研究の中でもビスホスホネート製剤に顎骨壊死の副作用があるように、副作用は薬につきものですが、副作用と効果のバランスを考えた薬の選択はどのように行っていくべきだと思いますか?
益戸:今回の研究のように、がんの再発などは生命にかかわるため、『副作用』のリスクがあっても『効果』を優先することが多いです。一方で、今すぐ生命にかかわらない病気(例えば、高血圧など)の場合は、『効果』よりも『副作用』を重視することもあります。患者さん一人ひとりの意思や環境、身体の状況などを十分に考えて、薬の選択を行っていくべきだと思っています。
乳がんの予防薬
CLS:閉経後乳がんになる前に予防する薬など、対策はないのでしょうか?
益戸:『運動』は閉経後乳がんになるリスクを下げ、逆に『アルコール飲料』や『肥満』はリスクを高めることが分かっています。現在のところ、アメリカやイギリスでは、乳がんの発症リスクが高い女性に対しては、更年期の骨折リスクの低減を目的に使われてきた『選択的エストロゲン受容体モジュレーター』や、『アロマターゼ阻害薬』といったホルモン療法で使われる薬で、乳がんの発症を予防することが分かっています。
ご研究について教えてくださりありがとうございました。
現在ある治療薬を別の治療法に用いるという考えは盲点でした。このような研究により乳がんの予防や治療に幅広い選択薬を提示し、『副作用』と『効果』のバランスを考えて、患者に合わせた治療を行っていくことを可能にするのだと気付きました。
武蔵野CLSでは学部学科に関連したポスター展示を行っております。
ぜひご覧ください。
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