PdM講座5-2 顧客ファクトリーの設計図:5つのステップ
はじめに
初めまして!現在、株式会社contento というコンサルティング会社で代表を務めている小川正樹と申します。
noteでは、これまで私が複数の会社で働き、そこで得てきた経験について会社ごとに紹介しながら、プロダクトマネージャーとして学んできたことや日々の持論について書いていきます。
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今回はPdM講座第5回「ビジネス開発基礎④」の「顧客ファクトリーの設計図」についてです!
第5回は3編構成で書いていきます。
今回はその第2編目で、テーマは「顧客ファクトリーの設計図:5つのステップ」となっています。
顧客ファクトリーの5つのステップ
前回のおさらいですが、顧客ファクトリーとは「幸せなお客様」を作るためのモデルであり、その設計図は次の5つのステップから成り立っています。
獲得
アクティベーション
定着
収益化
紹介
今回は、この5つのステップそれぞれについて、より詳しく見ていきましょう。
1. 獲得
獲得とは、気づいていない訪問者を「興味のある見込み客」に変えるステップのことです。
具体的には、顧客に至るまでの道筋(チャネル)を構築して、顧客ファクトリーの内部に招き入れる最初の戦いが「獲得」と言えます。
マーケティングで言うところの「認知」ですね。
そして、獲得のための手段として、以前お伝えした「オファー」というものがあります。
あらためてにはなりますが、オファーには次の3つの要素があり、
この3つを備えていることで、お客様に魅力的な製品だと思ってもらうことができます。
独自の価値提案
デモ
価格の提示
この「オファー」の例として、分かりやすいものがディズニーランドです。
ディズニーランドのランディングページを見てみると、次のようなことが書かれています。
忘れられない経験と楽しい思い出(独自の価値提案)
テーマパークに来た幸せな人たちのイメージ(デモ)
旅行の予約(価格の提示、購買行動の要請)
ご覧の通り、ディズニーランドのランディングページは、上記3つの要素をすべて含んでいます。
そして、これらのオファーを、広告や旅行代理店などのチャネルを利用して提供することで、ディズニーランドへ足を運んでもらうことができ、
「気づいていない訪問者」を「顧客」に変えることができているのです。
このように「獲得」というのは、言わば「顧客ファクトリーのスイッチが入る瞬間」と言えます。
つまり、オファー(LP、営業電話、セミナーなど)により、訪問者を顧客ファクトリーの入り口に連れてくることを「獲得」と言うのです。
そして、入り口まで連れてきたら、次にやるべきことは「見込み客への転換」ですが、そのためにも、まずは訪問者に顧客ファクトリーに入ってもらわなければなりません。
また、十分な数の訪問者を獲得できない限り、顧客ファクトリー自体に意味がなくなってしまいます。
どんなに良いものを作っても、存在を知ってもらえなければ意味がありませんからね。
だからこそ、「獲得」は顧客ファクトリーにおける最も重要なステップなのです。
2. アクティベーション
続いて「アクティベーション」ですが、
アクティベーションとは、「オファー」で提供した「見込み客との約束」を、実際の体験に結び付けることです。
そして、このフェーズでの目的は、「見込み客が価値を感じる最初の体験(=アハ体験)までの時間をできる限り短縮すること」にあります。
アハ体験とは心理学用語で、「今まで分からなかったことが分かるようになったときの体験のこと」を指します。
要するに「感動」のようなものです。
この「感動」に至るまでの時間は、可能な限り短くしなければなりません。
ここに至るまでに時間がかかってしまうと、認知してもらった見込み客が、本当の良さに気付く前にドロップしてしまう可能性があります。
そのため、見込み客に本当の良さを知ってもらうためにも、
最初に「良いものがあるな」と思ってもらった時に、「こんなに良いものなんだ」と実際に体験してもらうまでの時間は、できる限り短くなるようにしましょう。
3. 定着
アクティベーションの次に来るステップが「定着」ですが、
定着とは、顧客ファクトリー内の滞在時間を長くすることです。
ここで重要なのは、定着とはただ単に「定着」させれば良いわけではなく、「定着」+「価値提供」が顧客から見たときの課金の前提条件になっているという事です。
(当たり前のことではありますが、価値のない製品やサービスに、継続してお金を払おうとは思いませんよね。)
この「価値提供」では、顧客にお金を払ってもらうよりも先に、顧客に対して価値を提供することが重要なカギを握っています。
先に顧客に価値を提供して、その結果として定着してもらうことで、
後からその価値の一部を「金銭的価値」として回収することができます。
逆に価値を提供できないビジネスでは、顧客が不幸になってしまう恐れがあります。
その結果、金銭的な価値を返却しなければならないこともあり、期待外れによるクレームや返金リスクがあります。
そのため、定着だけでは不十分であり、価値提供が必須なのです。
先ほどのディズニーランドの事例でいうと、
ディズニーランドでは、入場料を前払いで受け取ることになっていますが、これは金銭的価値を先に回収しているにすぎません。
もし、価値提供をできていなかったら、返金を要求されるだけですし、
リピートしてもらうことなどできませんからね。
だからこそ、ディズニーランドのような前払いのビジネスモデルでは、
先にお金をもらっている分、製品やサービスが払ったお金に対して相応しいように、価値提供に尽力しなければなりません。
そして、ディズニーランド内に長く滞在(=定着)してもらうことで、
お客さんに楽しんでもらうことができ、提供価値が高まります。
そうして長く定着してもらえばもらうほど、さらなる食べ物や飲み物、贈り物、アトラクションなどで価値提供ができ、より長く定着してもらうことができるようになっているのです。
4. 収益化
4つ目のステップが「収益化」です。
収益とは、「ユーザから回収した金銭的価値」であり、この価値はビジネスモデルによって異なります。
例えば、以前ご紹介した3つのビジネスモデルにおいての収益は、以下の通りになっています。
ダイレクトモデル
:「お金(等価交換)」(小売、SaaSなど)マルチサイドモデル
:「デリバティブ通貨(派生価値)」としてユーザから価値を回収し、その価値を顧客を通じてお金に変換する
(YoutubeやTwitterなど:SNSをユーザーに無料提供し、ユーザーからの「いいね(デリバティブ)」を回収することで、顧客(広告主)にデリバティブを販売し金銭的価値を回収するイメージ)マーケットプレイス
:「取引手数料(摩擦係数)」(例:アマゾン、楽天など)
このように、各ビジネスモデルによって収益化の方法は異なるので、
自分たちの展開している事業に合わせた収益を考えることが大切です。
5. 紹介
最後のステップが「紹介」です。
紹介とは、「あるユーザーを幸せにすることで、そのユーザーが他のユーザーに価値体験を共有してくれること」です。
SNSの拡散などが、まさにこれに当たりますね。
つまり、既存顧客が製品やサービスを、自分たちの努力だけではリーチできていなかった人達に共有してくれることにより、新しい顧客、新しい訪問者を呼び込むことが「紹介」です。
「紹介」のステップでは、追加のコストをかけることなく集客できるため、基本的にビジネスモデルはここまで到達することが理想です。
ただし、注意しなければならないポイントがあります。
それは、不幸せな体験は逆の効果を生む可能性があるということです。
そのため、「定着」のステップと同じように、新しく興味を持ってくれた見込み客に対しても、自分たちの製品やサービスを気に入ってもらえるように、しっかりと価値提供をしましょう。
顧客ファクトリーの5ステップの具体例
ここまで紹介してきた5つのステップについて、
最後に2つの例題を用いて、皆様に確認していただければと思います。
お花屋さん
獲得
:お店の前を歩く人をお店の中に入れるために、ウィンドウに人が興味を持ちそうな花を置くアクティベーション
:お店に入ってくれた人に、一番綺麗な花をすぐに見せる
(悪臭や枯れた花が店内にあってはならない)定着
:何度も訪問してくれる人をカウントし、リピーターとして歓迎する収益化
:花を買ってもらう紹介
:紹介クーポンなどを配布し、紹介拡大を促進
WEBサービス
獲得
:LPの滞在時間を延ばすように工夫したり、たくさんのチャネルからの訪問者に会員登録を促すアクティベーション
:魅力的なサービスであることを正確に伝えるコンテンツが分かりにくかったり、嘘があってはいけない定着
:初回と再訪の度に、価値を提供するように設計する収益化
:PV(広告収益)サブスクリプション、購入人数・金額などを増やす紹介
:SNSのシェアボタンを配置したり、紹介クーポンコードを配布して紹介拡大を促進
このように、自分たちのビジネスに合わせて、5つのステップそれぞれで何を実施したら良いのかを考え、幸せな顧客を作るための「顧客ファクトリーの設計図」を形にしましょう!
最後に
今回の記事では、「顧客ファクトリーの設計図」における5つのステップについて詳しく見ていきました。
獲得
アクティベーション
定着
収益化
紹介
これらのステップを正しく理解し、実践することで、より効果的に「幸せなお客様」を創り出すことが可能になります。
また、各ステップでの適切な戦略の実行が、ビジネスの成功につながることをぜひ意識していただければと思います。
次回の記事では、これら5つのステップを通じて「幸せな顧客のループ」を形成し、さらなるビジネス成長を実現するための方法についてご紹介する予定です。
そちらもぜひご覧ください!
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