PDM講座4-1 ビジネスモデル構築の進め方:3つのステージについて
はじめに
初めまして!現在、株式会社contento というコンサルティング会社で代表を務めている小川正樹と申します。
noteでは、これまで私が複数の会社で働き、そこで得てきた経験について会社ごとに紹介しながら、プロダクトマネージャーとして学んできたことや日々の持論について書いていきます。
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今回はPDM講座第4回「ビジネス開発基礎③」の「トラクションモデル(再現性)の構築」についてです!
第4回は3編構成で書いていきます。
今回はその第1編目で、テーマは「ビジネスモデル構築の進め方:3つのステージについて」となっています。
前章の振り返り
前章では、ビジネスをどう進めていくのかにあたって、
最小限の成功基準を決める
価格と顧客スループットを決める
ライフバリューを決める
最小限の成功基準に対して、ビジネスモデルを洗練・調整する
顧客ライフタイムバリューのテストを行う
という手法・考え方をご紹介しました。
しかし、スタートアップや新規事業において、
最小限の目標を達成するのは、実際のところ数年先の話です。
そのため、計画を立てた時点では、
全体の明確なビジョンやプロセスを持つことは難しく、
どうやって進めていけば良いのか、分かりにくいのが本当のところ、、、
そこで必要になってくるのが、これからお伝えする「より小さなステージに分解する」という手法なのです。
もっと小さなマイルストーン
=「3つのステージ」
①ステージ:PSF(Problem/Solution Fit:課題・解決)
1つ目のステージは、PSF(Problem/Solution Fit)です。
PSFの目的は、課題と解決をさがすことです。
より噛み砕くと、世の中の「不」具合や「不」都合といった、
「不」を解決するソリューションを見つけ出すことと言えるでしょう。
まず、ソリューションを提供するためには、解決するべき課題を見つける必要があります(課題がなければ、ソリューションもありません)。
そして、その課題というのは、
「本当に解決するに値する、重要な課題であるか?」が問われてきます。
ビジネスとは、提供したソリューションの代価をもらうことです。
そのため、たとえ課題があったとしても、その課題を解決するために
「わざわざお金を払う必要がない」と顧客が感じるのであれば、
そのソリューションはビジネスとして成り立ちません。
そこで、自分が発見した課題に対しては、
「本当にその課題は解決する必要があるのか?」
を問いただす必要があります。
また、このステージでは、まだプロダクトを開発する必要はありません。
プロダクト開発にはお金がかかるため、売れるかどうか分からないものに
闇雲にお金をかけるのは得策とは言えません。
そのため、お金のかからない手段や、コストをかけずに提供できるサービス
=代替品(別名:オファー)を利用し、
「本当にこのソリューションは喜んでもらえるのか?」
を検証することが、PSFでのテーマになります。
それでは、このオファーには、どのようなものが含まれていれば良いのでしょうか?
オファーの3要素
提供するソリューションが持つべきオファーの要素としては、
次の3つが挙げられます。
独自の価値提案
デモ
価格の提示
それぞれがどのようなものなのか、詳しく解説していきます。
1:独自の価値提案(UVP:Unique Value Proposal)
独自の価値提案とは、
見込み顧客の興味・関心を引くために、
最終的な効果や顧客に対する約束を果たしたもののことです。
これは、次の3つの要素から成り立っています。
①顧客が望む価値+②明確な期限+③達成できなかったときの代替案
この中でも特に重要なのは、①顧客が望む価値です。
②明確な期限と③達成できなかったときの代替案は、
必ずしもなければいけないものではなく、あればより素晴らしい価値になるものです。
一方、①顧客が望む価値については、必ず含まれている必要があります。
こちら↓の記事でもお話しましたが、顧客が望んでいないものは、いくら頑張っても売れません。
そのため、プロダクトを作る際には、必ず顧客が求めているものを中心に
考える必要があるのです。
この「独自」というのは、必ずしもなければいけないわけではありません。
世の市場には二番煎じの商品が溢れているように、似たような商品でも市場で戦うことはできます。
しかし、唯一無二な部分がないと、市場を奪い合わなければならなくなります。
そのため、市場でより優位な位置に立つためには、この独自の価値を持たせることが非常に重要なポイントとなるのです。
2:デモ
次に必要になってくるのが、デモ(=デモンストレーション)です。
デモとは、⾒込み客が理解しやすいよう、独自の価値提案を視覚化した詳細なストーリーのことを言います。
要するに、自社製品を買おうか迷っている潜在顧客に対して、
彼らが抱えている目の前の「不=課題」が解決された後の未来はどうなっているのかを示すことで、自社製品の価値を伝えるためのツールのことです。
伝える手段は、実際のプロトタイプや画面のスクショ、イメージ図など、
何でも構いません。
大切なのは、手段が何であるかよりも、その手段を通じて課題が解決された後の状況を分かりやすく視覚的に伝えることで、
課題を解決した後の未来に、顧客を連れていくことなのです。
3:価格の提示(≒購買⾏動の要請)
最後に、価格を提示する必要があります。
価格を提示することによってはじめて、製品を提供するだけでなく、
金銭的な価値を定義することができます。
また、オファーの3つの要素において、
もっとも重要なのは、この「価格の提示」です。
というのも、たとえどんなに良い製品が出来上がったとしても、
顧客がお金を払う価値を感じていないのであれば、それはビジネスとして成り立ちません。
そのため、提供する製品に価格を付けて販売し、
金銭価値の交換に伴った「行動要請」をすることによってはじめて、
見込み顧客の興味関心を言葉だけでなく、
ビジネスに則った行動指標で計測することができます。
「お金を払ってもらえる」ことは、「ビジネスとして成り立つ」ことの立証になるため、無料で提供して「良い」と言ってもらうだけでなく、
有料で販売したうえで「良い」と言ってもらえることを大事にしましょう。
②ステージ:PMF(Product/Market Fit:製品・市場)
2つ目のステージは、PMF(Product/Market Fit)です。
PMFとは、自分が見つけた解決策を受け入れてもらえる、最適な市場を見つけるステージのことです。
別の言い方をすれば、提供するソリューションが継続的に売れるかを確かめるステージとも言えます。
ビジネスモデルとは、再現可能なプロセスのことです。
そのため、一回だけ売れてお終いという継続性のないプロダクトは、
そこにマーケットがあるとは言えず、ビジネスモデルも成り立ちません。
そこで、あなたが見つけた「課題=不」とその解決策のセットを、
「お金を払ってでも買いたい」
「継続的に使いたい」
と言ってくれる顧客がいるかを確かめることが、PMFの目的です。
注意点として、このフェーズで必要なのは、大勢のユーザーではなく、
少数の優良顧客です。
ここで言う「顧客」と「ユーザー」の違いは次の通りです。
顧客:価値を感じてお金を払ってくれる人
ユーザー:使ってくれるだけの人
この違いからも分かる通り、いくら大勢のユーザーを集めたとしても、
その製品に最適なマーケットがあるかどうかは判断できません。
たとえ、無料の状態では使ってくれていたとしても、
一旦有料化したら、彼らが継続してその製品を使ってくれるかどうかは
分からないからです。
そのため、無料版だから使ってくれるユーザーではなく、
お金を払ってでも使ってみたいと感じてくれている顧客にフォーカスし、
少数でも良いので、その人たちの中で自分が提供したいと思っている製品が
受け入れられるかどうかを実証しましょう。
また、PMFではビジネスモデルが機能するかを「実証」するのが目的であり、「検証」することではありません。
つまり、ビジネスが上手くいくかをテストするのではなく、
証明することが目的である点に注意してください。
そして、PMFのステージでやるべきことは、
「MVP(Minimum Viable Product)=必要最低限の機能を持つプロダクトの磨き上げ」です。
つまりは、完璧でなくとも最小限機能するプロダクトを作り、
顧客の利用を通じたFBをもとに、プロダクトの改善サイクルを繰り返す。
そして、顧客の抱える課題を解決するために、絶対に必要なものは何か、
=「顧客の求めているものの最小限は何か?」を自身で問い続ける。
これは、MVPを見つけられるか、それとも途中で心が折れてしまうのか、
我慢比べにはなりますが、決してプロダクトの価値だけは下げないようにしましょう。
ここまでの過程を通じて、ソリューションを提供することで顧客が求める価値を生み出し、その価値の一部を回収できることを示せたら、次のステージへと進んでいきましょう。
③Growth(拡大)
PSF→PMFと取り組んできたら、最後のステージはGrowth=拡大です。
具体的には、可能な限り迅速に大きな成長を遂げるステージです。
ここで優先するべきは、ソリューションを完璧にすることよりも、
ビジネスモデルの可能性を最大化することであり、『成長』が最優先の目的です。
また、Growthのステージは、PMFをしてから取り組むことが必須条件です。
PMFができていない状態だと、継続性があるかどうかが分かりません。
その結果、思ったよりも早く成長の限界が来てしまい、払ったコストを回収できないリスクがあります。
そのため、PMFを通じてビジネスモデルの継続性を確認したうえで、
成長・拡大のためのコストをかけていきましょう。
自分は今、どのステージにいるのか
ここまで紹介してきた3つのステージについて、
今の自分はどのステージにいるのかを理解しなければなりません。
では、どのように検証するかというと、
各ステージの指標を作る必要があります。
ここで役に立つのが、以前ご紹介した『トラクションモデル』です。
『トラクションモデル』は、ビジネスの進捗を計測するためのモデルであり、これを構築することで進捗を把握することができます。
具体的には、
『リーンキャンバス』でビジネスモデルのストーリーを描き、
『トラクションモデル』でビジネスモデルの望ましいアウトプットを示す。
これにより、各ステージの計測可能な目標を設定することができ、
その目標に対する進捗を評価するプロセスを繰り返すことで、
次のステージへの移行タイミングを見極めることができます。
また、これを単に設定するだけではいけません。
ビジネスが望ましいアウトプット通りに育っているかを常にウォッチすることで、進捗を把握することが重要です。
再現性について
最後に、ビジネスの進捗を評価する際には『再現性』が非常に重要です。
望ましいアウトプットが一度だけ達成されたのではなく、何度も再現可能であるかを確認することで、安定した成長を実現することができます。
再現性の確認を通じて、自分のビジネスが確実に成長していることを実感し、次のステージへと進む準備を整えていきましょう。
最後に
今回は、ビジネスモデル構築の進め方について、
特にPSF、PMF、Growthの3つのステージに焦点を当てました。
PSFでは、課題の発見と解決策の検証
PMFでは、製品と市場のフィット感を確認
Growthでは、ビジネスの拡大
これらのステージを経て、ビジネスモデルを明確にし、
成功への道を切り開く方法をイメージできましたでしょうか。
そして、各ステージの進捗を計測するために『トラクションモデル』を活用することで、ビジネスの成長を効果的に管理できます。
また、最後にお話しさせていただいた『再現性』が、
ビジネスにおいては非常に重要なカギを握っています。
そんな『再現性』については、次回の記事で詳しくお話しますので、
ぜひそちらもご覧ください!
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