PdM講座7-1 ゴールを定義し表現する
はじめに
初めまして!
現在、株式会社contentoというコンサルティング会社で代表を務めている小川正樹と申します。
noteでは、これまで私が複数の会社で働き、そこで得てきた経験について会社ごとに紹介しながら、プロダクトマネージャーとして学んできたことや日々の持論について書いていきます。
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今回はPDM講座第7回『「考える」スキル②』の「まず決めるのは『ゴール』」についてです!
第7回は前編・後編の2編構成で書いていきます。
今回はその前編で、テーマは「ゴールを定義し、表現する」となっています。
まず決めるのは『ゴール』
前回の記事で扱ったクリティカルシンキングにおいて、まず決めるべきは『ゴール』です。
要するに、課題を解き始める前に、「何のために?」その課題を解くのかを明確にしなければいけません。
「何のために?」を明確にせず、「どうしたら上手くいくのか?」から考え始めても、目指すべき『ゴール』が分からないので、「結局何をしたらいいの?」という状態になってしまいます。
そのため、「何のために?」という目指す目標を決めたうえで、思考を進めていく必要があるのです。
「なぜ、具体的に、いつまでに、何を」目指すのかを決める
そんな『ゴール』を決めるにあたっては、「自分が何を目指したいのか(=ぶれない北極星)」をしっかり持つことが最も大事です。
社会情勢やテクノロジーだけでなく、身近な上司や取引先、会社の経営陣なども、ものすごい勢いで変化している世の中では、流れに乗っているつもりでも、いつの間にか彷徨ってしまっていることがあります。
そのような流れに踊らされて、何をすれば良いのか分からなくなってしまわないためにも、具体的かつ期限が明確に決まっている目標を持ち、ぶれずに目指すべきなのです。
かの孫正義氏も『目指すべき山を決めずに歩くは、彷徨うに等しい』と述べているように、まずは「何を目指すのか」をはっきりさせておきましょう!
絶対に「HOW」から入ってはいけない
先ほども触れた通り、「どうしたら上手くいくのか?=How」から始めてしまうと、最終的に目指していたはずのものから大幅にずれてしまう可能性があります。
例えば、社長や株主などから「グローバル人材を増やしたい!」と言われたとして、「グローバル人材」という言葉に流されて「英語研修!」とか「海外勤務!」とか、すぐに打ち手を考えてしまうと、、、
根本的な問題として、「何でグローバル人材を増やさなければいけないんだっけ?」や、「グローバル人材ってそもそも何?」といった疑問が残ってしまいます。
その結果、社長や株主が本来求めていたはずの人材と、英語研修や海外勤務によって養生した人材とでは、相当の乖離が生まれてしまうことになりかねません。
こうした事態に陥らないためにも、まずやるべきことは「言葉の定義を明確にして、最終的に解くべき命題(What)を導き出すこと」です。
例えば、グローバル人材の例で言うと、以下のような細かい言葉の定義を決めておく必要があります。
グローバル人材ってどんな人?
:英語が喋れる人?それとも、ジャングルの中で1週間放っておいても生き延びられるような人?
(※ 実は世の中的には、後者の人を指す場合が多い。あらゆる環境や文化の中でも、どんな人ともいっしょに協働できる人。)育成ってどういうこと?
:研修すること?育成された状態ってどんな状態?役職に就かせること?いつまでに、何人必要?
:時間軸とレベル。10年で30〜40人?3年以内に100人?何のために育成するのか?
:定義したグローバル人材を得たうえで、そもそも実現したいことがズレていたら・・・おかしなことになる。
こうして、「目指すべきゴール(=What)」を具体化することで、ようやく「何をするべきなのか?=How」が見えてきます。
この記事をご覧になっている皆さんも、今はエンジニアやデザイナーなどとして、ゴールが明確な業務に取り組む機会が多いかもしれません。
しかし、「〇〇役員」のようなポジションに就き、役職が上昇していくにつれて、自分の担当するミッションは抽象化していくものです。
すると、自分の中でも「何をしたらいいのか?」を言語化することができず、「考えろ!」「何とかしろ!」「うまくやれ!」といった、曖昧な指示を出す機会が増えていくことになりかねません。
しかし、これでは指示された方も、「どうして取り組む必要があるのか?」その指示を出すまでに至った思考の筋道が分からず、何をしたらいいのかも分からないため、混乱してしまいます。
こうした曖昧な指示によって部下やチームが迷わないよう、明確な方向性を示すためにも、ざっくりした指示を自分自身で定義しなければならないのです。
目指すゴールを明確に、イメージしやすく表現する
目指すゴールは①時間軸、②レベル軸で具体的に提示する必要があります。
というのも、フワッとした状態では、結局ゴールがどこか分からないため、目指せないからです。
「目指すゴール」の言語化の理想像としては、誰が聞いても映像が思い浮かぶ状態がベストです。
つまり、誰が聞いても「あ、そういうことか。そのためにやってるんだ。」というのが分かる状態であれば、ゴールが明確になっていると言えます。
目指すゴールを達成したシーンやイメージが、誰にでもさほどぶれずに見える、もしくは数字でわかる。
そして当然、いつまでにやるのかという期限も共有されている。
ゴールはここまで突き詰めて言語化しましょう!
目指すゴールの定義事例
より分かりやすく目指すゴールの理想像を確認するために、いくつかの事例をもとに「良い例」と「悪い例」を整理してみましょう。
①ケネディ大統領のスピーチ
「60年代末までに人類を月に立たせ、安全に帰還させよう!」
これは、1961年にケネディ大統領が行ったスピーチの一節です。
このスピーチは、「①期限=60年代末」「②レベル=人類の月面歩行+地球に帰還」と2つの軸が明確になっていて、「目指すゴール」が分かりやすいですよね。
この背景には、「科学技術でソ連に勝ち、世界的なリーダーになる」という最終目的があるのですが、その目的をそのまま述べるのではなく、誰でも理解できる形に言い換えている点で、「目指すゴールの理想像」として良い例だと言えます。
しかし、もしこのスピーチが「我々の使命は、チーム中心の最大規模のイノベーションと戦略目標に沿った航空宇宙計画を通じて、宇宙産業の国際的リーダーになることだ!」と言われていたら、、、
「①期限=いつまでにやるの?」「②レベル=宇宙産業の国際的リーダーって?」となり、ピンときませんよね。
これでは、アメリカ国民も「結局何をするの?」と分からず、ケネディ大統領の爆発的な人気はなかったかもしれません。
②社員育成
もう少し、私たちの日常に近い例として、、
例えば、社員育成に当たって「論理的思考力、コミュニケーション能力、戦略判断力・俯瞰力、組織を動かすリーダーシップを格段にレベルアップすることを目指す」をゴールとしても、何が何だか分かりにくいですよね。
しかし、最終目標を「5か月以内に、30代の社員全員が社長の壁打ち相手になることを目指す」とすることで、「①時間=5カ月以内」「②レベル=社長の壁打ち相手」と、目指すゴールが明確になります。
また、ここまで具体的にすることによって、「社長の壁打ち相手になるには、どのくらい思考の深さが必要?」などと施策も考えやすくなりますし、
達成状況の確認も、「若者たちが社長室に呼ばれて意見を求められるようになるかどうか」で判断が可能になります。
このように、「①時間」「②レベル」という2つの軸を定義することで、誰が聞いてもゴールをイメージできるような状態を目指しましょう。
最後に
今回は、PdM講座7-1として、クリティカルシンキングを成功に導くための『ゴール』の定義と表現の仕方についてお話ししました。
優れたリーダーにはビジョンを描く力があり、目指すゴールの言語化に優れています。
例えば、皆さんが世界的なリーダーとして真っ先に思い浮かべるような、スティーブ・ジョブズやイーロン・マスク等には、まるで未来を見てきたかのように、 目指す状態を定義する力がありますよね。
そんな自分の思い描く「ゴール」を、他の人の目にも映像化して伝えられるような人たちだからこそ、周りの人を巻き込んでいくことができるのです。
そんな『ゴール』を定義する上で役立つ「SMART」というフレームワークについて、次回の記事では皆さんに解説できればと思います。
ぜひそちらもご覧ください!