PdM講座8-1 解くべき課題を決める『ズームイン』
はじめに
初めまして!
現在、株式会社contento というコンサルティング会社で代表を務めている小川正樹と申します。
noteでは、これまで私が複数の会社で働き、そこで得てきた経験について会社ごとに紹介しながら、プロダクトマネージャーとして学んできたことや日々の持論について書いていきます。
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今回は、PdM講座第8回『「考える」スキル③』の「解くべき課題を決める手法 ズームイン(具体化)①」についてです!
第8回は前編・後編の2編構成で書いていきます。
今回はその前編で、テーマは「解くべき課題を決める『ズームイン』」で書いていきます。
解くべき課題を決める
前回の振り返りとして、ゴールを決めるための思考法には、『ズームイン』と『ズームアウト』の2つの思考法があることをお伝えしました。
このうち、解くべき課題を決める際に使用する思考法が『ズームイン』です。
上記した通り、「なぜ課題を解けていないのか?」「どうしたら解けるのか?」、ひたすら『なぜ、どうして=Why』を考え続ける手法が『ズームイン』です。
一方、「なぜ」をあまり考えることなく、「こうなるのが理想だ」というゴールから考え、「そのためにはどうしたら良いんだろうか?」と逆引きして考えるのが『ズームアウト』の手法です。
課題解決において、まず取り組むべきは『ズームイン』の方です。
『ズームイン』をせずに『ズームアウト』を行ってしまうと、
現実性を加味していない、無謀な策しか思い浮かばなくなってしまいます。
そのため、まずは『ズームイン』で解くべき課題を考え、
その課題から解決策を考えていくのが、ビジネスにおける基本的な思考法になります。
問題を分析して課題を絞り込む
PdM講座の第7回で扱った通り、
課題解決のコツは「ゴール(目標)を明確に意識すること」であり、
そのためには、まず「ゴール」を定義する必要があります。
その上で、目指すゴールが定義できたら、
「どうして今、その「目指すゴール」を実現できていないのだろう?」
=Why?を考え抜く必要があります。
(この際に必要になるのが『ズームイン』の考え方です。)
ここで、「今何が課題なのか?」をクリアにする=解くべき課題を決めることは、「目指すゴール」と現状とのギャップを埋めることよりも重要なスッテプとなります。
かのアインシュタインが「課題を見つけることは、それを解くよりももっと本質的である」と述べているように、
世の中の課題解決にあたっては、課題の解決策よりも、本質的な課題は何か?を見つけることの方がよっぽど重要なのです。
というのも、課題が明確にさえなっていれば、その解決策を考えるのは意外と簡単であり、それよりも本質的な課題がどこにあるのかを見つける方が、よっぽど難易度も高く、そして根本的なことなのです。
ここからは、これまで解説してきた『ズームイン』の思考法を、簡単な演習を通じて、皆さんに体感してもらいたいと思います。
ズームイン(具体化)演習
あなたは、ある年金営業所の所長です。
現在あなたは、部下のAさんの成績が思わしくないので困っています。
具体的には、1営業月あたりの平均で、AさんはBさん・Cさんに比べて半分以下の売上となっている状況です。
さあ問題です。
Aさんの何が課題で、どうすれば売上があがるのでしょうか??
例えば、課題としては以下のようなことが挙げられるかと思います。
訪問が少ない
契約単価が安い
Bさん、Cさんがスーパー営業マンで異常値だから
Aさんの家庭に問題がある
Aさんはスロースターターだから
Aさんは新人だから
そして、解決策としては以下のようなものが挙げられるでしょう。
Cさんの真似をさせる
Bさん、Cさんの行動とAさんを比較する
契約とアポを分業する など
しかし、これらは本当に課題で、これらの解決策を実施すれば、本当にこの問題は解消されるのでしょうか?
そこで、この問題を解消するためには「本質的な課題」を見つける必要があります。
そのためにも、『分解して絞り込む(=ズームイン)』を繰り返し、本質的な課題にたどり着くことが、効果的な解決策を考えるための最初のステップとなるわけです。
では、実際に『ズームイン』を繰り返していきましょう。
・ズームインその1:なぜ、Aさんは売上が低いのか?
まず、できる限り選択肢を漏らさないように、わかりやすく構造化してみましょう。
今回解決するべきは「売上」=数字です。
数字であれば、足し算や掛け算などの四則演算を使って、因数分解することができます。
今回の場合であれば、
「総成約額 = 面談件数 × 成約率 × 1成約当たりの平均単価」
このように因数分解(構造化)することができます。
そして、この式に当てはめてAさん、Bさん、Cさんを比較すると、Aさんは・・
面談件数は1位、成約率は3位だが大差なし
ところが1成約当たりの単価がCさんの25%!だと分かった
課題は「単価の低さ」に絞り込むことができた!
このようにして構造化することで、本当に解決するべき課題が見えてくるのです。
・ズームインその2:なぜ、Aさんの単価は低いのか?
解くべき課題が見えてきたら、続いてその原因を深掘りしていきます。
今回であれば、なぜAさんの単価が低いのかを、『Aさん以外』と『Aさん自身』に分解して考えてみましょう。
例えば、Aさん側の課題としては、次のようなものが考えられます。
定額ニーズのお客さんのところにしか行っていない
→『Aさんのお客さんの選び方が悪い』説あえて定額の商品を提案している
→『Aさんが単価を重視していない』説高額の商品を提案しているけど定額に押し込まれてしまう
→『Aさんのスキル不足』説
また、Aさん以外に着目してみると、次のような課題の可能性も考えられます。
Aさんの担当市場には定額ニーズの顧客しかいない説
※もし、これが問題である場合は「構造的問題」なので、解決することは難しいです。
こうして分解することができたので、この中から解くべき課題を絞っていきます。
今回のような場合は、上記仮説を裏付けるデータはないので、直接Aさんにヒアリングをしてみるのが有効です。
ヒアリングをした結果、Aさんは「低単価顧客が多い(お客さんの選び方が悪い)」ことが判明しました!
・ズームインその3:なぜ、Aさんは高額ニーズの顧客のところに行けていないのか?
では、なぜAさんは高額ニーズの顧客のところに行けていないのでしょうか?
その原因を分解してみると、次のような仮説が考えられます。
高額ニーズの顧客をどう選べばいいか分からない
→『Aさんのスキル不足』説高額ニーズ顧客の選び方は分かっているが、腰が引けている
→『Aさんが単価を重視していない』説顧客を見極めるスキルもあり、単価が高いモノを売るスタンスもあるが、実行に移せていない
→『Aさんの進め方がマズい』説
ここまで分解できたら、再度絞っていきます。
ここでも裏付けのデータは存在しないので、Aさんへのヒアリングを実施してみましょう。
すると、Aさんからは「実は時間が無くて、リストが作れていなかった」という、『進め方がマズい』ことが問題であると聞き出すことが出来ました。
・ズームインその4:なぜ、Aさんは高額ニーズの顧客リストを作る時間がないのか?
ここでも、リストが作れていない原因を分解し、深掘りしていきます。
今回の課題は、次のように分解することができます。
低額顧客が多いため、訪問件数を稼ごうとしすぎて営業時間が長くなり、時間が取れず、結果的にリストを作れない
→『営業時間が長すぎる』説営業後の事務処理の効率が悪いため、時間が取れず、結果的にリストを作れない
→『事務効率が悪すぎる』説営業以外の追加業務(研修など)が多く、時間が取れず、結果的にリストを作れない
→『業務が多すぎる』説
そして、これまでの分析結果から、Aさんは面談件数1位と非常に多いので、課題は「1.営業時間が長すぎる」が有力だと推測することができました。
結論
ここまで分解した結果、「なんでAさんは、営業時間が長くなってしまったのか?」という問いに対して、「マジメだけど要領が悪かった」という課題が見つかりました。
もし途中で「なぜ?」をやめていたら、『高い商品を売ろうとしろ!』『スキルを磨け!』としか、指示できなかったかもしれません。
これでは結局、訪問リストが作成できないので、お金持ちのところへはいけず、Aさんの問題を解決することはできなかったでしょう。
「なぜ?」を繰り返し問い続け、「分解」と「絞る」を繰り返し、最後まで深掘りしたことで、本質的な課題(解決すると一番効果が出る課題)が見つかり、有効な解決策が実行できるようになりました。
ここまでして初めて、「明日は営業いかなくていいよ。俺と一緒に、訪問リストを作ろう!」と言えるようになるのです!
最後に
今回は「考えるスキル」として、「解くべき課題を決める手法 『ズームイン』」について解説しました。
ズームインは、課題がなぜ解けないのかを深く考え、「なぜ?」を繰り返して本質的な課題を明確にする思考法です。
これにより、現実的で効果的な解決策を見つけることができます。
ビジネスにおいて、課題の本質を捉えることは解決策を導くための重要なステップです。
ズームインの手法を活用し、効果的な課題解決を実践していきましょう!
次回は、そんな「ズームイン」に取り組むうえでの2つのコツをご紹介したいと思います。
ぜひそちらもご覧ください!