PdM講座7-2 目指すゴールを「SMART」で定義する
はじめに
初めまして!
現在、株式会社contentoというコンサルティング会社で代表を務めている小川正樹と申します。
noteでは、これまで私が複数の会社で働き、そこで得てきた経験について会社ごとに紹介しながら、プロダクトマネージャーとして学んできたことや日々の持論について書いていきます。
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今回は、PdM講座第7回『「考える」スキル②』の「まず決めるのは『ゴール』」についてです!
第7回は前編・後編の2編構成で書いていきます。
今回はその後編で、テーマは「目指すゴールを「SMART」で定義する」となっています。
「SMART」フレームワーク
「SMART」とは、明確なゴールを設定するために検討する必要のある、
以下の要素の頭文字をとったフレームワークのことです。
「S」Specific:具体的である
「M」Measurable:達成できたかどうかを事実で判断できる
「A」Action Oriented:アクションに落とせる
「R」Relevant:意義が明確
「T」Time-Limited:期限が明確
1つひとつ詳しく見ていきましょう。
[S] Specific (具体的)
Sは「Specific=具体的に」の略です。
プロダクト開発のようなチームとして動く場合や、投資家のようなステークホルダーがいる場合には、ゴールを定義する際、誰が聞いても目標のイメージが一致するようにしなければなりません。
例えば、「宇宙開発で世界的リーダーに!」では、目標が曖昧ですよね。
一方で、同じ目標でも「60年代末までに人類を月に立たせ、安全に帰還させよう!」だと、「人類が月に立って、無事地球に帰ってくるのが目標」だと、全員で共通のゴールイメージを持つことができます。
その他にも、人材研修などで「論理的思考力を格段にアップ!」と、多くの会社はやりがちですが、これでは「結局どれくらいの思考力を身に着ければいいの?」と疑問が残ってしまいます。
そこで、「論理的思考力とは?」や「格段にってどれくらい?」など、曖昧な言葉をきちんと定義して、誰が聞いても明確なゴールを設定しましょう!
[M] Measurable (達成できたかどうかを事実で判断できる)
Mは「Measurable=測定可能」の頭文字です。
つまりは、達成できたかどうかを「事実」で判断できるかどうかです。
例えば、ゴールが「月に行って人が安全に帰ってきた」であれば、成功や目標の達成を事実で判断することができます。
一方で、「イノベーションカンパニーになろう」がゴールだと、「イノベーションカンパニーってどういう状態?」と分かりませんよね。
このような曖昧な定義をなくし、事実で判断できるゴールを設定することで、ゴールをただの理想の状態で終わらせるのではなく、現実の目標として設定することができます。
[A] Action Oriented (アクションに落とせる)
Aは「Action Oriented =アクションに落とせる」の略です。
具体的には、「目指すゴール」を聞いたら、やらなきゃいけないことが何となく想像できる状態になっていれば、「Action Oriented」を満たしていると言えます。
例えば、「月に行って帰ってこなきゃいけない」なら、人を乗せて大気圏に突入しても平気なロケット、通信し続けられるコンピューターなど、具体的な課題が挙げられますが、、、
一方で、「イノベーションカンパニーになる!」が目標では、「イノベーションカンパニー」になるために具体的に何をすれば良いのか、さっぱり分かりませんよね。
ゴールは掲げるためにあるのではなく、「達成する」ためにあるものです。
だからこそ、ゴールを目指して歩を進めていけるように、具体的な行動に結びつけられる目標を設定しましょう!
[R] Relevant (意義が明確)
Rは「Relevant=意義が明確」の頭文字です。
つまり、目指すゴールを「なぜ目指さなきゃいけないのか?」が明確である状態が「Relevant」と言えます。
この際、自分だけじゃなく、皆にとって意義のある目標でなければなりません。
皆さんの働く会社の経営者が、自分たちだけに都合の良い目標を掲げていたとしたら、その会社で働きたいとは思いませんよね。
組織として動く必要のある以上、設定する目標は関係するすべての人たちにとって意義あるものでなければならないのです。
例えば、1960年代に米国政府が掲げた「アメリカが最初に月に行く」という目標は、当時宇宙開発でソ連に負けていたアメリカ国民の「もうソ連に負けたくない!」という思いを代弁したものだったからこそ、強い支持を得られたのです。
[T] Time-Limited (期限が明確)
最後のTは、「Time-Limited=期限が明確」の頭文字を取ったものです。
ゴールは達成するものである以上、いつまでに実現すればいいかは明確にしておく必要があります。
この際「無理のない範囲」かつ「ダラダラと後送りにならない範囲」で期限を設定する必要があります。
例えば、先ほどの1960年代の米国の例では、「60年代末までに月面歩行&帰還するぞ!」と言っていたので、結果として1969年に達成できました。
しかし、もしこれが「70年代」と言っていたら、もっと遅れていたとも言われています。
このように、期限を後ろ倒しにしてしまうと、むしろ目標に到達できなくなってしまう可能性もあるのです。
そのため、無理のない範囲で適度な期限を設定しましょう!
SMART事例
では、ここまで解説してきた「SMART」のフレームワークを、身近な例に当てはめて考えてみましょう。
(※以下はあくまで一例になりますので、皆様も自身の置かれている状況をもとに考えてみてください。)
[S] Specific(具体的)
50歳までに年収2000万円を稼ぎ、毎日19時に家に帰ろう!
[M] Measurable(達成できたかどうかを事実で判断できる)
時給10,500円以上で働く必要がある
(平日8時間/日の労働時間で、年収2000万円稼ぐ場合)
[A] Action Oriented(アクションに落とせる)
独立開業を視野に入れた副業により、将来の顧客を得て独立開業する(←19時帰宅を考慮すると、こっちが筋がいい気がする)
現在勤務中の会社での職位を上げ、より多くの責任を負うことで給与を上げる(←帰宅困難な気がしてならない)
[R] Relevant(意義が明確)
お金と時間の制約から解放され、家族や大好きな仲間、顧客(仕事)を大切にして暮らすため
[T] Time-Limited(期限が明確)
50歳になるまでに!
このように、「SMART」を意識してゴールを決めることで、皆様も「やることが明確で、実行に移せそうな目標」を立てることが出来たのではないかと思います。
ぜひ、個人や組織の目標を決める際には、この「SMART」のフレームワークを意識して取り組んでみてください!
なぜ「SMART」が重要か?
それでは、なぜこの「SMART」が重要なのかというと、目指すものを定義しないまま始めると、後から食い違いが出てしまうためです。
例えば、先ほどの「イノベーション」とか「格段に」とか「最大の」などの言葉はとても曖昧なので、人によって解釈がまちまちです。
そのため、同じ言葉でも違うことを想像している場合があります。
こうした食い違いを避けるためのフレームワークが「SMART」であり、
その上で、「SMART」それぞれの要素に矛盾やズレがなく、全部が繋がっていることが大切です。
もし、自分の立てた目標が「SMART」の各要素に当てはまらない場合には、
何かがズレていたり、矛盾していたりする可能性があります。
そのような時には、今一度「クリアにゴールを定義ができているか?」「自分の中できちんと整理されているか?」を問い直し、すべてのポイントを満たすゴールになるまで突き詰めましょう!
ゴールを決める力
ここまで、ゴールを決めるための手法やフレームワークについてお話してきましたが、ゴールを決める上で最も基礎となる力は「考える力」です。
というのも、ビジネスの世界において考える課題に『正解』というものはありません。
そのため、ひたすら考え続けるしかないのです。
そして、絶対の正解がない以上、どこかで意思をもって「ここがゴール!」だと決めなければいけません。
この「ゴール」を共通認識として持つためには、曖昧な要素を言語化する必要があり、この際に役立つのが先ほどお伝えした「SMART」なのです!
かと言って、言語化できればどんな「ゴール」でも良いのかというと、現実問題そうではありませんよね。
ビジネスとして取り組む以上、「できるかどうか?」という、コストや期限の現実課題も考える必要があります。
しかし、あまりに手堅いところにゴールを設定してしまうと、会社や自分の成長の余地がなくなってしまいます。
そのため、ある程度背伸びをした目標である方がよく、この範囲をどこまでにするか=目指すゴールをどこにするかは、自分(達)で決めるしかないのです!
そうである以上、目指すゴールは「出発点」として、ブレの無い明確なものでなければダメですし、目指すゴールがファジーな状態で課題解決を進めると、何の課題を解決しようとしているのか分からなくなってしまいます。
正解がないがゆえに納得するまで考え抜くしかない!考え抜いて決めるしかない!!
精神論的で申し訳ございませんが、皆が納得のいく目標を立てるためにも、限界まで考え抜きましょう!
最後に
今回は「SMART」というフレームワークをテーマにお話しました。
「SMART」は目標を明確にし、達成に向けた道筋を具体化するための強力なツールです。
「S」=具体的であること
「M」=測定可能であること
「A」=アクションに落とせること
「R」=意義が明確であること
「T」=期限が明確であること
これら5つの要素を考慮することで、目標は理想のままで終わらず、
現実で達成可能なものになります。
ぜひ、次に目標を立てる際には、「SMART」のフレームワークを意識しながら、明確かつ具体的なゴールを設定し、実行に移していきましょう!
そして、この「ゴール」を決めるための思考法としては『ズームイン』と『ズームアウト』という2つの手法があるのですが、こちらについては次章以降の記事で詳しく解説していきます。
ぜひそちらもご覧ください!