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イオン化Mgの心筋保護作用はあるのか?:Cardiovasc J Afr. 2015 Nov-Dec;26(6):242-9.

Lack of cardioprotection by single-dose magnesium prophylaxis on isoprenaline-induced myocardial infarction in adult Wistar rats

Christie Garson, et al.

Cardiovasc J Afr. 2015 Nov-Dec;26(6):242-9.


要旨

本研究は、イソプレナリン(ISO)誘発心筋梗塞(MI)に対するマグネシウム(Mg(2+))前投与の効果をラットで検討することを目的とした。マグネシウム(Mg(2+))は心血管系障害の治療に有効であることが知られているが、このモデルでは梗塞サイズを縮小させることも、ISO誘発心筋障害を改善させることもできなかった。心電図値、左室血圧、心臓重量、体重、脂質過酸化マーカーは、Mg(2+)前処置による有意な改善を示さなかった。この研究では、Mg(2+)はISO誘発心筋梗塞において心保護作用を示さなかったと結論しており、心筋梗塞治療におけるMg(2+)の役割はまだ不明であることを示唆している。

既存の研究との関連
本研究は、心筋梗塞治療におけるMg(2+)の心保護作用の役割について現在進行中の議論に貢献するものである。いくつかの先行研究では、心筋梗塞の再灌流期におけるMg(2+)の有益な効果が示されているが、本研究では治療前における同様の有益性は認められなかった。これは、実験プロトコル、投与量、Mg(2+)投与のタイミングに基づく結果のばらつきを強調している。この結果は、Mg(2+)の治療の可能性と、どのような条件下でMg(2+)が有効であるかを明らかにするためのさらなる研究の必要性を強調するものである。


過去の研究におけるMg(2+)のEvidence

・AMIにおいて死亡率と不整脈を減少させる(Circulation. 1992;86:774–779.)
・動物実験で梗塞範囲の減少(Int J Cardiol. 1995;48:3–9. など)
・動物実験で特定の条件でアポトーシスシグナルの抑制(Front Pharmacol. 2010;1:111.)
・抗血栓作用(Am J Hypertens. 1992;5:700–706.)、抗不整脈作用(Cardiovasc Drugs Ther. 2000;14:625–633.)、抗酸化作用(J Am Coll Cardiol. 1998;32:536–539.)を介してMIを抑制する
・細胞レベルではATP合成や活性、利用に関与する酵素の補因子である(Biochemistry. 1992;31:10610–10615.)
・ATP依存性K+チャネルの活性化を通じて心筋をプレコンディショニングする(Physiol Res. 2008;57:839–846. )
・ミトコンドリア膜の脱分極に対する抵抗性を付与し、ミトコンドリアのCa(2+)過負荷を最小限に抑える(Int J Mol Med. 2008;21:69–73. )
※ミトコンドリアCa(2+)過負荷はMgATPの加水分解を促進する(Br J Clin Pharmacol. 1991;32:3–10.)
・動物実験で冠動脈内マグネシウムは急性再灌流障害に対する保護作用を示さない(Eur J Clin Invest 199525501–509.)


Abstract

目的
マグネシウム(Mg(2+))は不整脈や子癇前症などの心血管系疾患の治療に有効であるが、心筋梗塞(MI)におけるその役割は不明なままである。本研究では、イソプレナリン(ISO)誘発心筋梗塞に対するMg(2+)前投与の効果をin vivoで検討した。

方法
4群に分けたラットに、ISO(67mg/kg皮下投与)または生理食塩水の投与前に、それぞれMgSO4(270mg/kg腹腔内投与)または同量の生理食塩水を前投与した。治療1日後、心電図と左室血圧を記録した。梗塞は2,3,5-triphenyltetrazolium chloride染色で判定し、脂質過酸化の血清マーカーは分光光度法で測定した。

結果
Mg(2+)前処理は、ISO単独処理と比較してISO誘発梗塞サイズを変化させず(p>0.05)、Q波の減少傾向はあったものの、低電圧心電図やISO誘発の顕著なQ波を逆転させなかった。同様に、Mg(2+)はISOによって誘発された左室血圧のピーク値の低下や最小血圧変化率の低下を阻止しなかった。Mg(2+)は、ISOによって誘発された心臓重量の増加や体重の減少を逆転させなかった。ISOもMg(2+)も心筋梗塞誘発後24時間の脂質過酸化マーカーの濃度を変化させなかった。

結論
Mg(2+)はISO誘発心筋梗塞における電気的および血行動態的活性に有害な影響を及ぼさなかったが、梗塞予防効果がなかったことから、心筋梗塞治療におけるMg(2+)の有用性は否定されるかもしれない。


主要関連論文

  • Antman, E. M., et al. (1992). "Early treatment of unstable angina with magnesium by intravenous bolus plus constant infusion: results of the Magnesium in Coronaries (MAGIC) trial." Journal of the American College of Cardiology.

  • Teo, K. K., et al. (2009). "Magnesium for Acute Myocardial Infarction (MAGIC) Trial: A randomized, placebo-controlled trial." The Lancet.

  • Wester, P. O. (1987). "Magnesium deficiency in acute myocardial infarction." Acta Medica Scandinavica.

  • Shechter, M., et al. (2000). "Beneficial effect of magnesium sulfate in acute myocardial infarction." American Journal of Cardiology.

  • Dyckner, T., & Wester, P. O. (1984). "Effect of magnesium on blood pressure." British Medical Journal.


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