IABP-SHOCK2 Trial:心原性ショックを伴う心筋梗塞へのIABPの有効性とは?N Engl J Med. 2012 Oct 4;367 (14):1287-96.
Intraaortic balloon support for myocardial infarction with cardiogenic shock
Holger Thiele, et al.
N Engl J Med. 2012 Oct 4;367 (14):1287-96.
要旨
この研究では、急性心筋梗塞後の心原性ショック患者において、大動脈内バルーンカウンターパルセーション(IABP)の有効性を検討した。主に登録データに基づく2012年当時の国際的ガイドラインでは標準的治療(クラスI)とされているにもかかわらず、600例の患者を対象としたこの無作為前向き試験では、IABPは介入を行わない対照群と比較して30日死亡率を有意に減少させることはなかった。さらに、血行動態の安定化、ICU滞在期間、血清乳酸値、腎機能などの副次的転帰や、大出血、末梢虚血性合併症、敗血症、脳卒中発生率などの安全性指標にも顕著な差はみられなかった。
既存研究との関連
この研究は、心筋梗塞後の心原性ショック管理におけるIABPの有効性を疑問視するエビデンスの増加に追加するものである。これまでの研究や小規模の臨床試験でも同様に、IABPの使用による死亡率の有意な改善はほとんどないことが示されており、これは血行動態のわずかな改善や心拍出量への影響の欠如に関する知見と一致している。この結果はまた、登録データのみに頼るのではなく、厳密なランダム化試験によってインターベンションの有効性を評価することの重要性を強調しており、このような病態に対してIABPを強く推奨している2012年当時のガイドラインの再評価を促し、現在、国内/国外問わず、IABPの推奨は落ちている。
Abstract
背景
現在の国際ガイドラインでは、急性心筋梗塞に合併した心原性ショックに対する大動脈内バルーンカウンターパルセーションはクラスIの治療法とされている。しかし,エビデンスは主に登録データに基づいており,ランダム化臨床試験は少ない。
方法
この無作為化前向き非盲検多施設共同試験において、急性心筋梗塞に合併した心原性ショック患者600例を大動脈内バルーンカウンターパルセーション群(IABP群、301例)と大動脈内バルーンカウンターパルセーションを行わない群(対照群、299例)に無作為に割り付けた。全例が早期の血行再建術(経皮的冠動脈インターベンションまたはバイパス手術)を受け、最善の内科的治療を受けることが期待された。有効性の主要エンドポイントは30日全死因死亡率であった。安全性の評価項目は大出血、末梢虚血性合併症、敗血症、脳卒中であった。
結果
IABP群300例、対照群298例が主要エンドポイントの解析に組み入れられた。30日後,IABP群119例(39.7%),対照群123例(41.3%)が死亡した(IABPによる相対リスク,0.96;95%信頼区間,0.79~1.17;P=0.69)。副次的エンドポイントや、血行動態が安定するまでの時間、集中治療室での滞在期間、血清乳酸値、カテコラミン療法の投与量と期間、腎機能などのプロセスオブケア指標に有意差はみられなかった。大出血(それぞれ3.3%と4.4%;P=0.51)、末梢虚血性合併症(4.3%と3.4%;P=0.53)、敗血症(15.7%と20.5%;P=0.15)、脳卒中(0.7%と1.7%;P=0.28)の発生率に関しては、IABP群と対照群に有意差はなかった。
結論
急性心筋梗塞に合併した心原性ショック患者において、早期血行再建術が計画された場合、大動脈内バルーンカウンターパルセーションの使用は30日死亡率を有意に減少させなかった。
主要関連論文
Thiele H, Zeymer U, Neumann FJ, et al. - "Intraaortic Balloon Support for Myocardial Infarction with Cardiogenic Shock," which initially highlighted potential benefits but lacked definitive mortality reduction evidence.
Hochman JS, Sleeper LA, Webb JG, et al. - "Early Revascularization in Acute Myocardial Infarction Complicated by Cardiogenic Shock," foundational in establishing the importance of timely revascularization.
Ferguson JJ, Cohen M, Freedman RJ Jr, et al. - Explores the role of IABP in the context of revascularization procedures, contributing to an understanding of when and how mechanical support can be utilized effectively.
Unverzagt S, Machemer MT, Solms A, et al. - "Intra-aortic Balloon Pump Counterpulsation (IABP) for Myocardial Infarction Complicated by Cardiogenic Shock," a meta-analysis that discusses the evolving evidence and implications for clinical practice.