ECMO使用時の循環平衡の推定:Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2015 Apr 15;308(8):H921-30.
Prediction of the impact of venoarterial extracorporeal membrane oxygenation on hemodynamics
Kazuo Sakamoto, et al.
Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2015 Apr 15;308(8):H921-30.
要旨
この研究では、循環平衡の拡張ガイトンモデルにECMOを組み込んで、血行動態の変化を予測する枠組みを開発した。正常犬と左室機能障害を有する犬の心拍出量(CO)曲線を決定することにより、研究者らはさまざまなECMOサポートレベル下での循環平衡を予測した。予測された総流量、右房圧(PRA)、左房圧(PLA)は実測値とほぼ一致し、このフレームワークの正確性が示された。数値シミュレーションでは、ECMO下で右室機能が低下した場合、肺水腫の可能性が示された。このフレームワークは、重篤な血行動態を呈する患者のリスクを最小限に抑えながら、ECMOの利点を高めることを目的としている。
既存研究との関連性
本論文は、心臓血管研究およびECMO管理の分野において、いくつかの理由から重要である:
予測の枠組み:この研究は、ECMO下での血行動態の転帰を予測するための定量的枠組みを導入しており、現在の定性的理解における重大なギャップに対処している。
臨床応用:ECMOを中止することなく循環平衡を予測できることは、臨床現場において大きな利点であり、ECMO離脱時の血行動態破綻を予防できる可能性がある。
ECMOの影響:この研究では、ECMOが右心および左心に対して与える影響の違いが強調されており、臨床管理において両者を考慮することの重要性が強調されている。
数値シミュレーション:この研究は、ECMO下、特に右室機能が低下した患者における肺水腫の可能性に関する洞察を提供し、ECMO合併症に関するこれまでの知見を裏付けるものである。
左右のCO curveについて
本研究から見出されるECMOの両心系への作用
ECMOはPlaを変化させる。しかし、Plaの変化は心機能に依存する。ECMOはLV機能が保たれている場合にはPlaを減少させるが、LV機能が低下している場合(LV機能障害)にはPlaを増加させる。さらに、ECMOの影響はRV機能と相互作用する。正常RV機能(EFr:0.5)では、ECMOはEFlが0.4以下になったときのみPlaを増加させる。しかし、RV機能障害(EFr:0.3)では、ECMOはEFlが0.9と高くてもPlaを増加させる。
よって、Plaが減少すると予測される患者にはECMOを開始すべきであるが、ECMOを開始するとPlaが増加すると予測される別の患者にはLVADを考慮すべきである。
Abstract
ECMOは心原性ショック患者の救命のために開発されたが、ECMOが血行動態に及ぼす影響はしばしば予測不可能であり、血行動態の破綻につながる可能性がある。本研究では、拡張ガイトンの循環平衡モデルにECMOを組み込み、ECMOに反応する血行動態の変化を予測する枠組みを開発した。
まず、8頭の正常犬と7頭の左室機能障害犬において、ECMOを行わずに左右の心臓の心拍出量(CO)曲線を求めた(統合CO曲線を作成するため)。
得られたCO曲線と静脈還流面の標準パラメータを用いて、さまざまなレベルのECMOサポート下での循環平衡を予測した。予測された総流量(本来の左心流量にECMO流量を加えたもの)、右房圧(PRA)、左房圧(PLA)は、測定されたものとよく一致した[総流量:決定係数(r(2))=0.99、推定標準誤差(SEE)=5.8 ml-min(-1)-kg(-1)、PRA:r(2)=0.95、SEE=0.23 mmHg、PLA:r(2)=0.99、SEE=0.59 mmHg]。
最後に、ECMOの変化によって誘発される血行動態の微細な変化から、ECMO支持下でのCO曲線を推定した。推定されたCO曲線から循環平衡を予測した。予測された総流量(r(2)=0.93、SEE=0.5ml-min(-1)-kg(-1))、PRA(r(2)=0.99、SEE=0.54mmHg)、PLA(r(2)=0.95、SEE=0.89mmHg)は、実測値とほぼ一致した。
数値シミュレーションの結果、右室機能が低下した場合、ECMOサポートは肺水腫を引き起こす可能性があることが示された。われわれは、提案されたフレームワークが、血行動態が重篤な患者におけるECMO支持の有益性を高め、リスクを低減する可能性があると結論づけた。
主要関連論文
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