PAP Indexの有用性について：J Card Fail. 2018 Jul;24(7):453-459.

Prognostic Impact of Pulmonary Artery Pulsatility Index (PAPi) in Patients With Advanced Heart Failure: Insights From the ESCAPE Trial

Stephanie Meller Kochav, et al.

J Card Fail. 2018 Jul;24(7):453-459.

要旨

この研究では、進行した心不全患者における肺動脈脈動指数（PAPi）の予後予測における有用性を評価した。肺動脈脈圧と右房圧の比として定義されるPAPiは、右室（RV）不全と有害な臨床イベントの有意な予測因子であることが明らかになった。この研究では、ESCAPE試験のデータを用いて、PAPiを従来のRV機能指標であるRV stroke work index（RVSWI）や右房/肺毛細血管楔入圧比（RAP/PCWP）と比較した。その結果、PAPiは左室機能の指標と同様に、RV不全の臨床的、心エコー的、血行動態的マーカーと有意に関連していた。重要なことは、PAPiはRVSWIやRAP/PCWPとは異なり、6ヵ月後の死亡または入院を独立して予測したことである。この研究は、既存のリスクモデルにPAPiを組み込むことで、先進治療への患者選択を強化し、臨床転帰を改善できることを示唆している。

関連性
本論文は、RV機能障害のマーカーとしてのPAPiの意義と、進行した心不全患者における有害転帰を予測する能力を強調することにより、既存の研究成果に新たな一面を加えるものである。従来のRV機能指標とは異なり、PAPiは右心機能と左心機能の両方を反映することで、より包括的な予後予測ツールを提供する。この研究は、急性心筋梗塞や左室補助循環装置植え込み後の心室機能不全の予測因子としてPAPiを同定した先行研究を基礎としている。PAPiが進行心不全、特に駆出率が低下した心不全のリスク層別化と患者管理を改善する可能性を強調するものである。

What is PAPi?

PAPi = 肺動脈の脈圧 / 平均右房圧
≒ (SV / PA compliance) / mean RAP
≒ CO / (HR x PA compliance x mean RAP)
→PAPiはCO/RAPに相関する
　X軸に右房圧、Y軸に血流量なので、右心の心拍出量曲線と相関する
→PAPiは右心機能を見る指標として妥当と言える。

Abstract

背景
肺動脈脈圧と右房圧の比として定義される肺動脈拍動度指数（PAPi）は、急性心筋梗塞患者や左室補助循環装置装着患者における右室（RV）不全の強力な予測因子として浮上したが、進行した心不全集団における予後予測としての有用性はほとんど不明である。

方法と結果
うっ血性心不全と肺動脈カテーテル治療の有効性評価試験において、PAPiを従来のRV機能の指標であるRV stroke work indexや右房/肺毛細血管楔入圧比（RAP/PCWP）と比較分析した。190例のPAPiスコアの中央値は2.35であった。PAPiは臨床的徴候（頸静脈拡張、腹水、浮腫）、心エコー図（右房サイズ、大静脈サイズ、三尖弁逆流速度）、RV不全の血行動態的徴候（RAP、PCWP）と有意に関連していた。さらに、PAPiは左室機能の指標である駆出率、心臓指数、PCWPと関連していた（すべてP < 0.05）。Cox回帰分析では、PAPiは6ヵ月後の死亡または入院という主要エンドポイントの独立した予測因子であった（ハザード比0.91［95％信頼区間0.84-0.99］、P = 0.022）が、RA圧、RV stroke work index、RA/PCWPはそうではなかった。

結論
PAPiはRV機能障害のマーカーとして機能し、進行した心不全患者における有害な臨床イベントを強く予測する。PAPiを既存のリスクモデルに組み込むことにより、この集団における高度な治療法の患者選択と臨床転帰を大幅に改善することが可能である。

主要関連論文

1. "Right Ventricular Function and Failure: Report of a National Heart, Lung, and Blood Institute Working Group on Cellular and Molecular Mechanisms of Right Heart Failure" - Redfield MM, et al.

2. "Prognostic Value of Right Ventricular Function in Patients with Severe Left Ventricular Dysfunction Undergoing Cardiac Surgery" - Haddad F, et al.

3. "The Pulmonary Artery Pulsatility Index Identifies Severe Right Ventricular Dysfunction in Patients with Acute Inferior Myocardial Infarction" - Kalogeropoulos AP, et al.

4. "Right Ventricular Dysfunction in Heart Failure with Preserved Ejection Fraction" - Mohammed SF, et al.

5. "The Clinical Implications of Pulmonary Artery Pulsatility Index in Patients with Heart Failure Undergoing Left Ventricular Assist Device Placement" - Kiernan MS, et al.