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桃の壁、または、壁の桃
殺風景な自宅の外壁
ちょっと前に、都会の小さな戸建てに引っ越しました。細い路地に入った奥にあって、通りに面して外壁があります。植栽などもなく、殺風景な感じなので、なにか緑を付け加えたいとずっと考えてました。
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よくある常緑樹のコニファーなんかを植えて、クリスマスはライトアップでもしようか、なんて最初は話してました。
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でも、ただの緑でいいのか、、
なんかしっくり来ないまま、アクションに移せずに月日が過ぎていきました。そう、僕は誰もがやってる「普通」が苦手。世の中に存在してないことを、InnovatorやEarly Adoptorとして取り組みたい性分なんです。
ドーナツ・ピーチ
以前、国外に暮らしていた頃、夏になるとよく食べていた大好物の果物がありました。それはドーナツ・ピーチ。
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小ぶりで、ドーナツのようなフラット形状で、甘くて、とっても食べやすい。欧米だと、夏のシーズンはやたらとお買い得価格で、たくさん売られてます。スナックのように、皮も剥かずにそのままカジるのが至福。
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このドーナツ・ピーチ、調べてみたら「蟠桃(ばんとう)」って呼ぶんですね。ただ、国産のモモって、基本は高級フルーツで、蟠桃も例外なくお高い。しかも、蟠桃はあまり生産されてないようで、その辺のスーパーに並んでることも皆無。
これだ!
無いのなら、作ってしまおう、ホトトギス、
じゃなくて、ドーナツ・ピーチ!
とはいえ、自分で、自宅で桃を育てるなんてのは、できそうで、意外と難しそうです。しかも、狭小戸建ての外壁。広い庭があるわけもなく、果樹園みたいなのは、できるわけないし、、
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Murs à Pêches
はたして、都会で桃の栽培なんて可能なのか、、
悶々としていた時、たまたまこんな情報を見つけました。
近世のヨーロッパでは、石壁を使ったフルーツ栽培が、都市部で盛んだったという話。日中、壁が太陽熱を吸収・蓄積して、その熱が徐々に放出されることで温室のような役割を果たす仕組みなんです。壁の放出熱を効率よく活かすため、果樹は壁に這うように形を整えながら栽培するので、限られたスペースに収まるのも魅力です。
パリ郊外のモントルーでは、壁を使って高品質な桃が生産されていて、世界的に有名だったとか。これが「Murs à Pêches」(=ずばり、桃の壁)。
でも、20世紀以降、温室や冷蔵輸送の技術が進化したことで、わざわざパリ郊外で手間をかけて生産する合理性もなくなり、廃墟となってしまっていたようです。最近になって、地元コミュニティが中心となって、復活の機運が盛り上がってきた、というのも魅力ある話ですよね。