【クッキー☆SS】ワイルドカードにさよならか?
この記事はブロマガからの移植記事です
普通の女学生のSZとJOKERで甘酸っぱい青春もの
SZがJOKERに一目惚れして(交友関係はない)うだうだする話
ワイルドカードにさよならか?
彼女は私にとって、トランプのJOKERでありワイルドカードだった。
風がそよぐ。真冬の寒波が私を凍死させまいと企むある2月の寒い日。
彼女は告白した。私ではない、別の男。ただただ平凡なだけが取り柄の男だ。
……ああ、むしゃくしゃする。私は戦わずして負けたのだ。
私というキラークイーンは1人のJOKERに負け、そのJOKERは最弱の2に負ける。ただそれだけの話。
私は彼女(便宜上JOKERとする)が好きだ。一目惚れだった。
惚れた病に薬無しなんていうがまさにそれで、よく知りもしないJOKERのことを知ろうと軽くストーカーまがいのこともやっちゃったりなんかして、いや、今になって思うとだいぶ引くな…。
「でさあ、結局鈴はあの子に告白するの?」
「……いや、もうやめようかな、だって言っても無駄だよ。
彼女の心はどうしたって、それこそ殺したって手に入らない
この手を血に染めても手に入るものはただの蠢く呼吸器と考えることをやめた脳漿。
そんなものは欲しくない。形のないものだけが欲しかった。
「鈴は相変わらず物騒なことを言うね、でもさ、区切りって必要だと思うんだよ」
るりまは私に諭した。
思えばすれ違ったその輪郭に一目惚れをしたその時以降彼女には会っていない。
神格化された彼女のおもかげをスケッチしつづける日々だった。
もう現実の彼女とはだいぶ剥離しているだろうその影。
……この恋にケリをつけますか?
A.つける
B.つけない
人生とは選択の連続だ。
「まあとりあえず会ってみなよ、それだけでも変わると思うから」
るりまに諭され彼女経由でアポイントメントを取った。今日の放課後、屋上で。
彼女は先に屋上で手すりを立っていた。
「君が鈴? 私は…って言わなくてもわかるか」
「うん」
彼女は申し訳なさそうに笑った、多分言いたいことは世話焼きのるりまによってなんとなく伝わっているのだろう。
少し恨む。
私はAの選択肢を選んだ。
「君のことが、好きだ」
「うん、知ってる」
「本当に、本当に好きだ、狂いそうなくらい、もう狂っているのかもしれない」
「うん、褥に狂う気持ちはわかるよ、私は嫉妬の女だから」
「でも君はもう嫉妬することはない、その嫉妬は今や私のものだ。渡されて分かった、つらいよ、とてもつらい」
ああ、感情が止めどなく溢れてくる。
自分はこんなに彼女のことを思っていたのか。
「そうだね、嫉妬女返上だ」
「もうやめにしたい、この気持ちにケリをつけたい、楽になりたい、これは身勝手な私の吐露だ。ごめんなさい、でも言います」
「うん」
だから、だから……
「幸せになんか、ならないでください」
ふふっと彼女は笑った。
「やだね」
絶対に、幸せになってやると意地悪く彼女は笑った。
ああ、それでこそ、それでこそ彼女だ。JOKERだ。
私の中のワイルドカード、特別な特別な私のJOKER。
ふと彼女に一目惚れした時の事を思い出した。
同じ意地の悪い笑みだった。ああやっぱり好きだ。
心が解きほぐされていく、憎しみが、嫉妬が、憎悪が、少しづつ消えていく。
「それでこそ君だよ」
頬に涙が伝う、いつのまにか私はしゃくりあげて泣いていた。
彼女は何も言わなかった。
私は泣けるだけ泣いた。
ケリをつけると言い、それを実行に移した私だが実はと言うとまだまだケリはつけられそうにない。
一回会っただけじゃ気持ちに整理なんかつけられないのだ。
だから。
「あっ、鈴。おはよう」
「待ちます、君がアイツと別れるその日まで、だからそれまで好きでいさせてください」
「歪んでるわね、でもそういうの私好きよ」
「おはよう、愛しのJOKER」
私だけのワイルドカード、2に負けようが私に取っては最後の切り札。
終わり
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