ブスに彼氏が居ちゃダメですかepisode2
井の中の蛙、大海に出ちゃった
私は、淡い夢を見ていた。
高校に入れば、今よりもっと自由に2人で出掛けたり。時間にも融通が効くようになって、少しくらい帰りが遅くなっても怒られなくなったり。
アニメなんかで見た、お昼に中庭で二人で一緒にお弁当食べたりしてると、同級生に「ラブラブだねー!」なんてからかわれて、照れながら二人で笑いあったり。
夢だけど、叶わないことはないと思える夢だった。
私たちが通っていた中学校は一学年80名の2クラス。
そのうち約半分の40名が女子。
入学した高校、一学年280名の7クラス。
その半分以上の160名ほどが女子だった。
中学校の4倍の多さの女子が同級生になるわけよ。
お山の中学校でカップルになって、町の高校に飛び込んでいくとどうなるか。
『井の中の蛙』って痛いほどに感じた。
あーんなに狭い井戸の中で出会ったんだから、そりゃ可愛いと思われても仕方ない。
高校に入学して思ったこと、可愛い子が多すぎる!!
ちっちゃくて明るいかわい子ちゃん。
サラサラストレートの美人系かわい子ちゃん。
お目目くりくりの清楚系かわい子ちゃん。
ギャル系かわい子ちゃん。
多種多様のかわい子ちゃんが、自分のクラスだけでも何人もいた。
私と彼氏は3組と4組で別のクラスになった。
1階と2階で教室の場所も上と下になった。
私は、顔も地味だし、メイクだってやり方なんか知らないから安いファンデーション塗って満足してた。
髪はくせっ毛で、中学の時から縮毛矯正で落ち着かせてた。料金だって高くて、頻繁には掛けられないから伸びてくると癖が復活してアホ毛が大量発生。
特に前髪に強い癖が出るから、顔のパーツと考えると前髪がウネウネしてると、それだけで可愛さ半減するし、ダサさ倍増するし、損してるなって思った。
そのうえ、毛深い!小学生の頃から気にしてた。
中学一年の頃、体育の授業で校庭に整列して座っていた時、隣の列に並ぶ男子二人が私の足を見て笑いながら話していた。
「こいつのあだ名、『毛』」じゃねえ?」
「あー、マジだー、毛だー!」
本当に毛が憎かった。腕、指、足、うなじ、男子並に生えてた。うなじなんて、男子の方がキレイだった。
中学で初めてT字剃刀と出会って感動した。
「こんな一瞬でこんな綺麗になるの!?もっと早く出会いたかった」
T字剃刀を手に入れるまで、家にあった昔ながらのピンク色の持ち手の、眉毛や顔の産毛なんかを剃るI型の剃刀で家族に内緒で剃っていた。母親にバレると「濃くなるから剃るな」と言われてしまうため、こっそりと拝借してはこっそりと戻していた。
「…ったぁ」
当たり前のように毛だけではなく肌も切った。眉毛や顔用なのでヘッドは固定されたまま、カーブに沿って動くわけではないので、無理に剃ろうとするとあっという間に傷が増えていった。血だらけになっても、毛があるよりは何千倍も良かった。それからは、ずっと相棒になっている。
可愛い子って、なんで揃いも揃って髪はキレイでまとまってるし、ムダ毛だってほとんど生えてないんじゃないってくらいツルツルだし、不公平だなって思ってた。
超絶可愛いとは思ってなかったけど、ブスとも思ってなかった。中学までは。
入学初日にして、高校女子のレベルを目の当たりにした。
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