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BLとコスプレ

私が絶賛、妬まれ中だった高校2年生。
ある漫画に出会った。
友達が単行本を持っていて、それを借りてからハマったのか…火が着いたきっかけは忘れてしまったけど。
暗く淀んだ毎日に少しだけ光が差し込んだような、そんな出会いだった。

『テニスの王子様』
この漫画のおかげで、学校で蔑まれバカにされていた私が人と交流したり、自分から何かを発信したり、そんなことが出来るようになれた。

それと同じくらいの時期にあるビジュアル系のバンドがメジャーデビューした。

『Psycho le Cému』

私は、テニプリとサイコのおかげで生きてこれた。
そう言っても過言では無い気がする。


私はテニプリで「菊丸英二」菊ちゃんが好きだった。大石との黄金ペアを見るのが大好きだった。
菊ちゃんの、猫みたいな自由さと大石の保護者のような優しい眼差しで、菊ちゃんが自由に動けるようにサポートする姿に、感動したりした。
その感動はいつからか、2人の恋愛模様を見守っている気持ちに変わりつつあった。
本屋に行けば、たくさんの同人誌が売られており、少しお高めではあったが本屋に行く度1冊ずつ買い足すのが楽しみだった。
私は専ら『大×菊』が好物で、次に『不二×菊』『リョ×菊』などなど…とりあえず受けの菊ちゃんを見るのが好きだった。

そして、同じ趣味趣向の人たちが集まるイベントがある、と友だちから誘われて電車で45分かけて出向いた。
地方で開催される同人誌即売会!
これほどのスペースに、こんなにギュウギュウに机を並べて、喉から手が出るほど素敵な絵を書くサークルさんを目の当たりにしてホントに最高すぎる空間だった。
何回か通ううちに、自分たちでも出したい!という気持ちがふつふつと湧き上がってきた。
私は絵は描けないが、話を作るのが好きだったので絵の得意な友達とページ数は少ないけれど同人誌を生み出すことにした。

毎週休みの日には、どちらかの家に籠り案を出し制作した。
ペーパーを作り、サークル名も考え、ペンネームも決め、いくつか細かいグッズも作り、コロコロに入れてサークルデビューした。

私たちのスペースの前を通るお客さんが、足を止め同人誌に興味を持ってくれた時の感動は忘れられない。
スケブを持って、お気に入りのサークルさんの所へ行き絵を描いてもらったり、逆にスケブが私たちのスペースに置いてあることもあったり、友達は緊張しながら丁寧に絵を描いていた。
『ありがとうございます!20○○年、○月』
なんて、絵の下に書き込んで「ぽいね!!」とか話しながら過ごす時間は本当に楽しかった。


会場の一角には、コスプレエリアが設けられていて更衣室で変身したレイヤーさんたちが、ポーズをとって写真に撮られたりしていた。
私たちは、そっちにも興味があった。
そう、Psycho le Cémuはスーパーコスプレバンド。
凝った衣装に身を包み、「それって衣装?」と思うほど奇抜なものまで5人の個性が詰まったコスプレを、曲ごとに変えてくる。

次はこれで行こう!!
と、サイコが好きな友だちをもう1人誘って3人で自分の推しのメンバーのコスプレをして行くことにした。
同人誌の絵を担当している友だちは、まさかの服まで作れる多彩な才能の持ち主だったおかげで、布を調達してくると次に会う時までに、衣装が少しずつ完成していくというありがたさ。
しかも、出来上がった衣装のクオリティがめちゃくちゃ高い。
3人で揃えると、なかなかの迫力ときらびやかさがあった。
それを纏い、コスプレエリアに立つと何人かに声をかけられ、写真を撮ってもらったり、差し入れをくれたりする子が現れたり、普段の底辺な学校生活とは全く違う世界がそこはあった。


高校生でBLに目覚め、同人誌を作り、コスプレをする。今思い返しても、本当にやって良かったと思える思い出だ。
唯一、高校生で楽しかったと思える瞬間だった。

大人になった今でも、あの時溢れていた好きの気持ちは残っている。
BL小説を書いて、コンテストに応募出来るようにただ今奮闘中だ。


闇闇の中に光るキラキラな思い出だ。


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