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5分で特別法_労働法

概要

 いわゆる労働法と呼ばれる法律群について、その内容を5分で読める程度のダイジェストでまとめました。
 今回はかなり大胆なダイジェストなので、引き続き正確性を欠く記述もありますし、大幅なカットをしております。
 あくまで「概ねこういうことが法律で決められているんだ」ということを素早く概観するための目安のまとめとしてご参照ください。
 また、法律名は略称です。

労働契約法

法の趣旨

労働契約の基本事項を定め、労働者の保護と労働関係の安定を図る。(1)

労働契約の原則

労働契約の内容は、労働者と使用者が対等の立場に基づく同意で定める。(3Ⅰ)
→と言いつつ、実情は使用者の提示する就業規則によることがほとんど。

労働契約の成立

労働契約は、労働とその対価としての賃金支払いについての合意で成立する。(6)
→内定取消が違法かどうかは、合意により労働契約が成立しているか否か、成立しているとして解雇権濫用にあたるか否か、という点が問題となる。

就業規則が周知されている場合、労働条件は就業規則による。ただし個別合意があればその合意内容に従う。(7)

就業規則による労働契約の内容の変更

原則として、就業規則を労働者の不利になるよう一方的に変更することはできない。ただし、労働者の不利益の程度、変更の必要性など、事情に照らして合理的な変更内容の場合は、使用者による就業規則の変更が認められる。(9,10)

出向

出向命令が事情に照らして権利濫用にあたる場合、その出向命令は無効。(14)

懲戒

労働者への懲戒が事情に照らして合理的理由を欠き社会通念上相当でない場合、その懲戒は無効。(15)

解雇

解雇が事情に照らして合理的理由を欠き社会通念上相当でない場合は、その解雇は無効。(15)

有期労働契約

有期労働契約が反復更新されて5年を超える場合、労働者は労働契約を期間の定めのないものへ転換することができる。(18)

反復更新されている有期労働契約や、更新が期待される有期労働契約の場合、使用者による雇止めは制限される。(19)
→1年有期の労働契約を反復更新している場合、契約更新を止めるだけで事実上の解雇ができてしまうため、それを制限している。

労働基準法

法の趣旨

労働基準の最低条件や、労働者の人権を守るための規定を定める。(1)

均等待遇

使用者は、国籍や信条,性別などによって、労働者に差別的取扱をしてはならない。(3,4)

強制労働の禁止

暴行,脅迫などによって労働を強制することは許されない。(5)

賃金

名称を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの。(11)
→賞与は、支給の有無や金額が使用者の裁量による場合、賃金にあたらない。就業規則に基づいて支払われる場合、賃金にあたる。

労働契約

労働基準法の基準に達しない労働条件の労働契約は無効。無効の部分は労働基準法の条件に引き上げられる。(13)

期間の定めのない労働契約は可能だが、有期の場合は原則3年を超えてはならない。(14)

労働条件は明示しなければならず、明示された労働条件が事実と異なる場合、労働者は即契約解除することができる。(15)

労働者の労働契約の不履行について、契約で違約金や損害賠償を予定してはならない。(16)

傷害や疾病による休業中、産休中は解雇してはならない。解雇するなら打切補償が必要。(19)

解雇は30日前には予告しなければならない。予告しないなら30日分以上の平均賃金を支払う必要がある。(20)

退職証明書の請求を受けたら、使用者は遅滞なく交付しなければならない。(22)

賃金

賃金は毎月一回以上の頻度で、原則日本円で支払わなければならない。(24)

使用者のせいで休業する場合は賃金の60%の休業手当が必要。(26)

労働条件

労働時間は原則として週40時間まで、1日8時間まで。(32)

労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を途中で与えなければならない。(34)

少なくとも4週で4日は休日を与えなければならない。(35)

労働組合との協定があれば、時間外労働や休日労働をさせることができる。ただし原則として1月で45時間、1年で360時間まで。(36)

時間外労働は25%の割増賃金を支払わなければならない。ただし1月で時間外労働が60時間を超える場合は超えた範囲について50%以上の割増賃金が必要。休日出勤は35%の割増賃金が必要。午後10時から午前5時までの労働は通常に比べ25%の割増賃金が必要。(37,政令)

事業場外で勤務し労働時間が算定困難な場合、所定時間労働したものとみなす。専門業務,企画業務は、実労働時間ではなく算定時間を労働時間とすることができる。(38の2~4)
→いわゆるみなし労働時間制。

半年働けば10日の有給休暇が支給される。その1年後には有給休暇が更に1日支給され、年を経るごとに段階的に増えていく。勤務開始から6年半後からは毎年10日の有給休暇が支給される。(39)

最低年齢

15歳に達し最初の3月31日を迎えるまで、原則として児童を使用してはいけない。(56)
→例外は子役など。

最低賃金法

地域や産業ごとの最低賃金の決め方を定める。

労働安全衛生法

労働災害防止のための危害防止基準や責任体制の明確化を定める。

労働者災害補償保険法

労災の保険給付について定める。

男女雇用機会均等法

男女が等しい雇用機会を得るための方針、禁止事項、事業主に課される義務などを定める。

育児・介護休業法

労働者が育児休業・介護休業を取得可能なことを定める。

短時有期法

法の趣旨

短時間・有期雇用労働者の待遇明示や均等待遇といった事業主の義務を定める。(1)

待遇

通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で、不合理な待遇の違いを設けてはならない。(8)

通常の労働者と業務内容が同視できる場合、基本給などの待遇で差別してはならない。(9)

労働組合法

労働組合の取扱い,労働協約,使用者の義務などを定める。

労働関係調整法

労働委員会による斡旋,調停,仲裁等について定める。

労働施策総合推進法

雇用の推進に向けた国の義務を定めるとともに、ハラスメント防止のための事業主の義務を定める。

職業安定法

職業安定所の運営について定める。

労働者派遣法

法の趣旨

労働者派遣事業の規律を定める。(1)

派遣の範囲

港湾運送、建設、警備業においては派遣事業禁止。(4)

派遣元の義務

派遣労働者と派遣先の通常の労働者との間で、待遇において不合理な差異を設けてはならない。(30の3)

派遣元と派遣労働者の雇用終了後、派遣先が派遣労働者を雇用することを禁じてはならない。(33)

派遣先の義務

給食施設、休憩室、更衣室などは、通常の労働者と同じように派遣労働者にも利用の機会を与えなければならない。(40)

派遣可能期間(原則3年)を超えて同一の派遣労働者を受け入れてはならない。ただし無期雇用派遣労働者や、派遣労働者が60歳以上の者である場合を除く。(40の2,40の3)

高齢者雇用安定法

法の趣旨

高齢者の雇用を確保するため定年,継続雇用,再就職促進などを規律している。(1)

定年

定年を定める場合、原則として60歳を下回ってはならない。(8)

65歳未満の定年を定めている場合、事業主は、定年年齢の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の定めの廃止のいずれかの措置を取らなければならない。(9)
→多くの企業は継続雇用制度を導入し、60歳から65歳までは待遇を下げた継続雇用をすることで法対応している。

障害者雇用促進法

障害者雇用を促進するための行政・事業者の義務を定める。

雇用保険法

雇用保険の給付金額や支払い条件について定める。

労働審判法

労働審判委員会による個別紛争の解決について定める。

個別労働関係紛争解決法

個別紛争解決のためのあっせんなどの制度について定める。

結語

 今回もなんとかギリギリ3000字に収まったので、早い人ならギリギリ5分で読めると信じています。
 次回は倒産法です。

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