第一巻 馬と再会
縁結び
人生の出会いは偶然であるのか、必然であるのか。2020年5月5日に私はFacebookに実家の生まれたばかりの仔馬の写真を投稿する。すると、そこに会社の社長から「沖縄でホースセラピーの場所を作りたい」というコメントが来た。このことがきっかけとなり、会社のワークショップ会場を転々としながら、千葉でテレワークする予定だった私が沖縄に来ることになり、馬との再会の物語が始まる。
テレワークがなくなったのは、一つ大きな理由がある。2020年3月に新型コロナウイルス感染症がパンデミックとみなされ、4月に東京、千葉などのいくつかの地域に第一次緊急事態宣言が出される。そのようなことで、会社の会場を使って行うワークショップが余儀なく中止され、4月に就職したばかりの私がすぐに予定していた仕事を失う。このような世界的な出来事の中で、馬の事業の話が舞い降りてくる。
内モンゴルで生まれ育った私は、日常生活に馬がいる環境だった。しかし、14歳の時に都会の学校に進学し、寮生活になってからは馬との距離が離れた。高校を卒業して日本に留学するまで、機械化が進むことによって村全体の馬の数も激減していた。沖縄に来て馬と再会し、日常に馬がいる生活が戻るのは約20年ぶりのことになる。このような流れになったのは、もう一つ大切な出会いがある。2019年の春、当時大学院生だった私が指導教授である小林正弥先生に誘われて、Well-beingに関するカンファレンスを聞きに行くことになった。錚々たるメンバーが次々と壇上し、会場は新しい観点と智慧の雰囲気が漂っていた。ある時から会場のステージでマイクを握り、来場者に話しかける1人の女性の声がとても気になる。私はステージから離れていた席にいたので、顔がはっきり確認できていなかったが、とにかく声が気になりこの方と話してみたいと思った。当日私はアルバイトの関係で早く退場したため、話す機会はなかった。しかし、半年後に小林先生のシンポジウムでこの女性と再び会うことになる。シンポジウム後の懇親会で小林先生に紹介してもらい初めて連絡先を交換することができた。その後、メッセージでの交流をしながら自らアプローチしたことで、私は人生初の仕事を獲得する。この女性は私が現在所属する株式会社YEEYの共同創業者島田由香社長であり、沖縄で馬の事業に関わる機会を与えてくれたのはもう一人の共同創業者矢澤祐史社長である。
気になった声から仕事につながり、就職時にパンデミックが起こり、後に「サヨ」という名前が付けられる仔馬の写真にコメントが来て、現在百名馬場という場所でホースセッションのコーチ、セラピストというポジションにいる。人生の出会いは素敵で、偶然でありながら、必然であるようにも思える。
矢澤社長からコメント来て、その後およそ三週間後に当時彼女と同居したばかりの千葉の家を離れて、沖縄へ旅立つ。持ったものはリュック一つと大き目のカバンだけだった。これはまるで12年前にカバン1つで、仙台から東京に引っ越しをしてきた時の状況と同じだった。ただ、その時に東京で私を待っていたのが8年間に及ぶ長い学業生活であれば、今回の移動先で待っていたのは沖縄という新天地と馬たちであった。