君はこの漫画を知っているか act.1 『異なる次元の管理人さん』part2
前談
前回の記事より約1ヶ月が経過。
諸般の都合により発売日の翌日更新となったことをお詫び申し上げます。
act0でも書いているが、当記事は簡単に言ってしまえば、私の好きな漫画についてつらつらと書いていくものとなる。
そして今回は前回から引き続き、『異なる次元の管理人さん』について書いていく。
前回ではネタバレを出来る限り避けるが故に、魅力の1割も伝えられたか怪しかったが、今回はネタバレが中心となる。
気になった方はもうその時点で記事を閉じて、本屋に走るか電子で買って読んで欲しい。それさえしていただければ、最悪この記事は読まなくても良い。
前回の記事にも書いているが、ニコニコ漫画に1巻の内容が上がっているため、まずはこちらを読んで欲しい。
https://sp.seiga.nicovideo.jp/comic/26505
基本的に読みながら都度書いているぞ!
1巻
1巻については、誰でもご覧戴ける上記のニコニコ漫画を基準に書いていく。
主人公であるスズキが、多次元管理システムである『Polaris』に転移し、ラッキースケベなシーンから始まる。
最早テンプレの類いではあるが、テンプレにはテンプレたる所以があることを改めて教えてくれる。
系統としては所謂なろう系が衆目に出て席巻した“異世界転生”ではなく、ライトノベル黎明期どころか漫画というものが黎明期であった頃には既に存在していた“異世界転移”というジャンルに当たるだろう。
王道ジャンルではあるのだが、「まんがタイムきらら」という雑誌のベクトル上、非常な珍しいジャンルになっている。最近はファンタジー系統も増えているが、転移となると数えるほどだろう。
(よいとめとかある種転生だけど、自分の体で現世にいるしな)
因みにだが、作者である榊先生の前作「先輩には頭が上がらない!」内にわずか数コマではあるものの、この系統ジャンルの作中作の話が出ていたりする。
2話目の話になるが、実は後に重要というか再登場するアイテムがある回となっている。
かなり重要な話になっているため、覚えておいて欲しい。
3話目のスズキが帰りたがるシーンのフェイエルやポラリスの台詞である「もしかしたらそういう能力の持ち主なのかもしれません」も最終話を目にした今なら、当たらずとも遠からずといった話になっている。
図書館のシーンは今後ある4巻ラストを思うと、言葉が見つからない程の感情が沸き上がる。
完全に余談だが、4話目のポラリスの下着は5巻のとらのあな特典イラストカードの裸Yシャツポラリスの下着と似たものである。
12話目の赤様の来訪と帰還と13話はこの作品の根幹にある話となっている。
特に『Polaris』の由来の謎や、ノナの世界がスズキの世界と縦軸で平行している話は後にも出てくる話である。この辺りからSF色が展開されていく。
基本的にこの巻は日常パートが続くのだが、これは「きらら」という媒体の都合というよりも、日常とそれ以外のパートの対比を作ることによるカタルシスを大きくする目的があるので、こういったパートが得意ではない方にもご覧戴きたい。この積み重ねこそが本巻の赤様帰還後の話や4巻ラストに繋がるのだ。
2巻
ここからは単行本をベースに書いていく。
この段階で気になった人は買おう!なんかまた世間が怪しい感じなので電子で買おう!comicFUZで既刊が半額の440円だぜ!
引き続き異世界ハーレムの形を取りながら進行するものの、猫の特売がPolarisに来ることにも意味があったりする。
詳しくは後に作中でも語られることになるので割愛するが、こういった部分にも抜け目がない。
『もえアル』という架空の作品を使うことによるパラドクスも、今後姿を変えて現れている。
ダンジョンの話も重要であり、管理人としてのポラリスという存在について疑問が浮かぶシーンや、話が連続する次話でPolarisが日本人により作られたという仮説の話が出る。
この話は伏線どころではなくまんま核心の話である。
詳しくは5巻参照。
そしてスズキから語られたポラリスドアは、この物語の根幹であり、成すべき絶対の目標であることを忘れてはならない。
サブ管制室での謎は5巻で解かれるのだが、スズキとナルギードスが“次元を越えた友達”であり、その謎がスズキにより解かれる、という話は頭の片隅に置いておいてほしい。
謎の物体や人物が現れて2巻は終わりとなる。
3巻
謎の物体の正体が判明し、それに付随してフェイエルの過去話から始まる。
外壁の話のラストでスズキが映し出されているが、ぶっちゃけた話連載当初は気にもして無かったが今になって思うと………
筆者の榊先生はこの作品について「ずっと書きたかった事を書いている」と何度か仰っており、先生の構想が垣間見れる瞬間といえる。
スズキ以外にもポラリスドアの可能性の話が浸透していき、それに関する望みを持つパルムも後の対比として象徴的なシーンだ。
そして初めて名前の上がる“kana sakashiro”は実はかなりの重要人物であり、実は既に作中に登場しているに等しい状態となっている。
これは後に判明するのだが、この段階で探してみてほしい。
竜宮到着後は乙姫にぼやかされながらも、この世界に関する話が少しずつ出ることになる。
特にCODは重要な単語であり、今後も頻出する言葉なので覚えておくといいだろう。
ターミナル以降のフェイエルの不審な挙動に関しては4巻にて明かされるため、気になる人は続きを購入しよう!
CODに到着したスズキとフェイエルを迎えるのは、ケイエスというポラリスに似た女性のクローン。
もうこの段階で察した人はいるかもしれない、因みに私は当時気付いてなかった。普段ひぐらしの考察とかしているのに生かされて無さがヤバい。
そして巻の頭数にて正体の判明した次元の歪みに関する問題の話に移行する。
この段階では純然たるSFなのだが、実はこの話の内にも別の伏線が貼られている。
このケイエスの感情は覚えておいて欲しい場面である。詳しくは5巻。
ポラリスの正体の謎と次の目的地である“セントラルポラリス”を目指す所で3巻は終わりとなる。
4巻
ケイエスの話の件りで実は然り気無く核心に触れられている。
3巻のスズキのケイエスに対する印象の話とショートカットのポラリスを合わせて考えると………?
フェイエルとケイエスの通信は3巻後半から続く不穏なシーンだが、セントラルポラリスを目指す途中にて判明する。
フェイエルの故郷とCODの話も判明し、フェイエルとのキスシーンを経てセントラルポラリスへ向かう。
(いやこのムーヴ逆にフェイエルが負け確なんだよな~!「先輩には頭が上がらない!」の野乃もそうだけど、負けヒロインの魅力の高さも榊先生作品の魅力かもしれない)
セントラルポラリス侵入後のケイエスやポラリスの感情に関して、かなり似た状態にあることが分かる。
坂城とケイエスとポラリスが似ていることは度々示唆されていたが、写真部屋でようやく合致する。
坂城と鈴木と思われる写真は今後のキーになっている。いやまぁここまで来ると分かるよね。
そして最深部に到着し坂城のホログラムと対面。
PolarisがCODを守るためにリンクを切り、Polarisを独自に管理するためにポラリスが生まれたことが明かされる。
そして坂城の消滅シーンの台詞はとても大切であり、純粋に多次元の話のみに終わらないことを示唆している。
改めて読むとスズキのように泣いてしまうシーンであるため、一通り読んだ暁には再度読み直して欲しいシーンだ。
CODと無事にリンクを繋げた事で遂にケイエスとポラリスが対面し、更に3巻で前述したケイエスの正体が判明する。
そして、ケイエスとポラリスの話し合いにより、ポラリスドアは発見され、フェイエルの故郷の皆も見つかり各々は最後の日を過ごす。
当日、各々の帰還が始まる。
風、フェイエルやパルムにロゼ、割りと空気だった特売が元の世界に戻される。
スズキとノナを残す所で問題が発生する。
Polarisという存在は役割を終え、消滅する故に全員を元の世界に返すためにポラリスドアがあると嘘をついたポラリス。
前述したように、赤様や特売という存在すらも伏線となっている。
元の世界に戻ればPolarisに居た時の記憶も消されることが判明し、スズキはもがくも転移は止まらずに元の世界に戻ってしまう。
その後、各々の元の世界のシーンが挟まり悲しみに暮れるポラリスの後ろ姿で4巻は終わる。
この4巻ラストは長年「きらら」というコンテンツを追ってきた私からしても、とても衝撃だったことは今でも鮮烈に覚えている。
SFストーリーのように進み、これで解決だ!というところで地面に叩きつけれたかのような感覚は一生忘れることは無いだろう。
このシーンは日常やポラリスのスズキに対する好意、様々な問題や冒険が積み重なった結果に成り立つものであり、その分のダメージは非常にデカイ。
連載当時、マジで仕事に支障が出ていたくらいのダメージがあった上、この状態で続くと言われて1ヶ月待たされるのはなんの拷問だろうと思っていた。
「きらら」という媒体の関係から地続きのストーリーが珍しいとされている中、ここまで鮮烈な傷痕を残したのは、革命に等しいだろう。
現行きららのファンタジー作品にも、受け継いで欲しいと思う程だ。
5巻
まずは書籍勢の方、帯は最後に見て欲しい。目に入ってるだろうが、最後にもう一度見て欲しい。
カラーのシーンは作品の補填書き下ろしとなっている。
ここからはSFといっても角度が変わる、ケイエスの発言から察せる部分がある。このページは、全て読み終わった後に読み直して欲しい。
そして本編。元の世界に戻されたスズキの日常から始まる。
あの終わり方からこのシーンを見せられた瞬間はもう、先があると分かっててもとても辛いものがある。
そんな話で終わる訳がなくノナの乱入するも、全てを忘れたスズキに絶望し帰ってしまう。
しかしスズキのもとよりの性格によりノナを追いかけ、接触することにより記憶を取り戻す。
ノナは自力脱出を図り記憶を保持した状態でスズキの元を訪れた。
ノナの正体も明かされ、再度Polarisを目指すことになる。
坂城を訪ねることも、写真の事から考えれば必然だったと言える。
この辺はノナが実質的なヒロイン状態となる。
FF5例えるならば、第一世界のヒロインはレナで、第三世界序盤のヒロインがクルルみたいな話である。
豆知識だか、ノナとスズキの待ち合わせから買い物のシーン背景にて榊先生の初作である「CIRCLEさーくる」のキャラクターの他、坂城と思われる人物が描かれている。
(PM6時30分のシーン1コマ目→高円寺 4コマ目坂城? 服屋のシーン2コマ目→信濃 ノナと手を繋ぐシーン4コマ目→日野)
CIRCLEファンは必見だ。
そして本来の坂城との合流シーンは4巻の坂城のホログラム消滅シーンとリンクしている。
まだまだ4巻の該当シーンには別の意味もあるので引き続き覚えておいて欲しい。
坂城は未来の自身のプロテクトを解除する際に、あの“ナルギードス”を入力し、それに成功するも研究の進行度の話になる。
しかしそれはノナの協力により問題が解消される。
次の話で、この世界が少なくとも“二週目以降”であることが判明する。
作中でも言われているように、多次元SFだけでなく、同時に世界を救うためのループものでもあったのだ。
今までの細かい所に敷かれた伏線の束が回収されていく話となっている。
その後にスズキの葛藤もあるが解決し、坂城と別れ別の次元に向かうこととなる。
その前の坂城の話も重要と言える。
ケイエスがスズキを忘れていた理由が明かされ、一週目のスズキと坂城の関係がうかがえる。
次の話では1巻の序盤も序盤で渡した、単純に社会人としての性くらいの演出だった名刺が活躍する。
1巻で記載した重要アイテムは名刺だったのだ。
そしてパルムの世界に行くことになるも、現状では接触出来ないと判断し、引き返して先に風を迎え入れることになる。
この感覚はFF6のリルムとストラゴス近いものがあり、RPGらしさがある。
風と対面し記憶を取り戻し合流後にロゼ、パルムと合流することに成功する。
フェイエルの合流のシーンで解説されているように、恐らく一週目のスズキもCODまではたどり着けていたことが分かる。
全員と合流し、Polarisに向かう一同。
クライマックスの名が相応しいシーンだ。
雑誌連載当初は不明瞭だったポラリスの消滅は、書き下ろしのカラーページに描かれており、補完されている。
その後に描かれるケイエス、ではなく坂城と表記するのが適切だろう。
彼女の想いは、遂にスズキに届く事無く終わりを迎える。
2714年想い続けた末の負けヒロイン、最早レベルが違いすぎる。
一同は外壁へ突入し、ポラリスの思念と対面する。
このシーンのポラリスは4巻ラストを思わせる。
決意の固まらないスズキを他所に、フェイエルが最大級の告白を叫ぶ。
連載当初は本当に面食らったのを覚えている。
ここまで書いといてアレだし、ここまで読んでる人には買ってない人はいないと思う。だが、あえてその告白の台詞は記載しない。読め。
負けヒロイン乱舞の様相を呈している。坂城が強すぎて霞むかと思いきや、この言葉により並ぶレベルに達している。
その告白により勇気を貰ったスズキは、バハムートから飛び降りて単身飛び降りてポラリスの元へと向かう。
スズキはポラリスへの愛を叫びながら降下し、無事にポラリスとの再開を果たす。
そしてPolarisは坂城の修復が間に合い、次元の歪みが解消されて本来の姿に戻る。
ポラリスは本来の権限を失い、空から落下しながらスズキの告白に返答する。
それを救うのがケイエスというのも、なんとも皮肉な話である。
最終話を直前に、ナルギードスという男と一週目のスズキの種明かしが成される。
そしてスズキがポラリスドアになるという発言。これは実は1巻3話が然り気無いフラグとなっている。読み返してみると良いだろう。
最終話
これに関しては、あえてここでは表記しない。
これを読んでくださった皆様自身で、感じたことを大切にしていただきたい。
人は他人の意見をベースに感じたことを変容させてしまうためである。
後日談
後日談というにはあまりにも短く不明瞭なのだが、「まんがタイムきららキャラット20年11月号」のきららキャラット独立15周年記念小冊子にて、スズキとポラリスがスズキの世界にいるかの様子が描かれている。
後記
改めて読み返しながらつらつらと書いてきたが大変長い上に、本当に思ったことのみをダイレクトに書いていたためにまとまりのない文になったことをお詫び申し上げます。
しかし、この記事により一人でもこの作品に触れていただけたのであれば幸いだ。
『異なる次元の管理人さん』は、私の中できらら史上最高の作品となった。
私以外にも、そうなる人が増えることを祈っています。
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