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月刊俳句通信紙「こんちえると」2024年(令和6)年

「こんちえると」は大牧広亡き後、その結社誌の「港」の会員だった同人などを対象に、関根道豊氏が「版元」となって立ち上げた「俳句通信紙」。
 「こんちえると俳壇 雑詠」「こんちえると俳壇 題詠」という会員投句、会員選、ゲスト選のページが常設されているという点が独自の編集方法である。
 他に関根道豊氏のライフワークらしい《大牧広全句集を読む》と、「核の時代をどう詠むのか/時評もどき」の連載記事、その他、折々の特集記事を掲載している。
 ベテラン俳人である波切虹洋氏の「虹洋の補習塾」で具体的な作句添削講義の連載もある。

第75号 2024年2月10日




いつも月半ばの刊行だが、初めて今月号の刊行が遅れた。
原因は「版元」の関根道豊氏が新型コロナウイルス感染症に罹患されたためだったようだ。そのことが記載された箇所を以下に抜粋する。


そんな困難にもかかわらず、誌面はいつも以上に充実したものである。
この不屈の継続のご意志に敬意を表します。
後遺症が強く残るともいわれているので、体調や仕事に支障がでないことをお祈り申し上げる。

    会員作品 天地人 紹介

こんちえると俳壇 雑詠 第56回

天 国家てふ巨大な戦車冬景色      石原百合子
 まんまるな地球にいつもすきま風   青野 草太
 凍て空や彼方に民の泪あり      権守いくを

こんちえると俳壇 第46回 題詠「湯豆腐」

 「ただいま」の声湯豆腐が浮き上がる 伊藤眞砂子
 あるがまま生きて湯豆腐切らず煮る  福田 久司
 半丁を湯豆腐にして孤独なり     笹木 友子


76号 2024年3月10日


77号 2024年4月

版元の関根道豊氏のコロナウイルス感染症の後遺症は、喉の渇きが続ていることだそうです。
それでも、誌面を伺うかぎり、精力的に活動されているようです。
仲間の情熱に支えられているのでしょう。

今月の共感句

 三月の船体白く染まりけり
 英霊を生まぬ憲法さくら満つ

2024年5月号 78号

79号 2024年6月刊


今月号は、第4回大牧広記念俳句大会の入選「天・地・人」の発表号。


継ぐ者に志あり広の忌          小林 茂

世の軋み照らす穀雨の筆灯り       成田榮一

「こんちえると」ぶれずに目指す春の海  大賀雅子

特別選者を依頼された中の一人であるわたしの選は下記のとおり。


蝶にピン少年命断つを知る        青野草太

愛し猫逝く君に枕めし          小林秀子

八掛け社会姥捨てを聞く吹流し      鎌田桂子


選評

世には被害者目線ばかりの句が溢れている中で、唯一、加害の自覚が俳句に詠まれていて秀逸。

逝く命に寄り添う悲しみの表現が優しい。

社会の歪みは歴史的結果に過ぎないが、その渦中で社会のエッジに押しやられるものの悲哀を詠んで佳作。下五の「吹流し」のよそ事めくハタメキにアイロニーを感じる。

2024年7月刊 80号

版元の関根道豊氏の主要連載は次の二本

前号から連載の始まった林薫氏による「八丈島と戦争」。
 八丈島にこのような戦跡があることは、あまり知られていないのではないか。読み応えがある。
 こんちえると会員で、ここから句集を出された林みよ子氏は八丈島にお住まいで、句集『名古の月』にもこの戦跡にまつわることが詠まれていた。
 このような日本近現代史の戦争や事件、世相の、新視点による論考は、他誌では見かけられないので、社会派の本誌の特色となると思うので、是非、このような多様な論考を企画掲載されることを期待する。特に戦争についは、被害者の視線だけでなく、加害国としての歴史的考察も。

81号 2024年8月


関根道豊氏の、師の俳句の歴史を時代性を背景にした連載は好調。
八丈島の戦跡の記事の連載も充実。

82号 2024年9月

関根氏の大牧広の軌跡を辿る連載は、過去の歴史的な検証。
林薫氏の連載、今回は満蒙開拓団とサイパンの内容で濃密。
社会性俳句や、俳誌は、現在だけの時事詠中心になりがちだが、こういう記事があると、誌面に深みが加わる。
近現代の日本の過誤を掘り起こして論評する記事は貴重。
被害史だけでなく、加害史も是非、掘り起こして欲しい。

今回は関根氏からの要請で、「先行句」問題について、私見を寄稿させていただいた。

関根氏の特別の思い入れや、親交があるのか、毎号、沖縄の「天荒」の作品を取り上げている。

俳誌によくある「俳句時評」を、「こんちえる」誌では次のような視点で連載しているのも、この誌の特色である。

83号 2024年10月


 連載「八丈島と戦争」の今回は、暗号無線という電波戦争の歴史についてで、大変興味深く拝読した。
 関根道豊氏の「老鶯と春の海」はいよいよ戦後編に入った。
 俳壇戦犯をめぐる論争、沈黙でその嵐を交わそうとする俳人たち、以後の進路をめぐっての俳句団体の分裂の季節の記述。

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