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ヨルバの神々に献げる唄

米国への出張では空港から目的地までの移動に送迎シャトルサービスを使うことが多い。鉄道とバスの便利な日本と違って、米国は車社会。一人で利用するのは効率が悪いようにも思えるが、郊外の研究所や会議施設を訪れるには、これしか手段がない。

そういうサービスでは、ドライバーはいろいろな世間話をしてくれる。フレンドリーなドライバーにはチップを多めに渡したくなるので、お客のご機嫌を取るような話題から始まる。

今月、米国に出張する機会があった。普通はお客に配慮してラジオや音楽の音量は下げてある場合が多いのだが、帰国のためにロサンゼルス空港に向かう車、乗りこむと何やら心を揺さぶられるような音色が…

まるで「さあ!まずはオレの歌を聴け!」といわれているような勢いを感じる。

音量を下げる気配がないので、ハイウェイにのったところで、ドライバーにその音楽について聞いてみた。

ドライバーはナイジェリア出身。その曲は「ヨルバ民族」の唄とのこと。歌詞のストーリーをまとめると、あるところに鷲(イーグル)がいて、何らかの危機に見舞われ、それを助けに大勢が参集するような場面らしい。終盤は特に賑やかな曲なので、きっとその危機が仲間の協力により解決されたお祝いの唄なのだろう、と残りは想像しておく。アフリカっぽい楽器に数人のコーラスが入る心に響くビートだ。

それからヨルバ民族について教えてくれた。アフリカでは大きな民族で、私たちが自分たちを「日本人」というように、彼らは自身を「ヨルバ人」と呼ぶような感覚かも。(Wikipediaなどとは少し違うかもしれないが、そのドライバーの主観として?)

自然に宿る神々を信仰の対象としているらしく、八百万(やおよろず)の神を崇める私たち日本人に似ている印象だ。

もっと神話について教えてくれるようにお願いすると、続いてYouTubeでかけてくれた曲は、「オグン」という神についての曲。古代都市を治めていたその神は、時間と空間を超えて様々なことを知覚し、人々を導いたとか。

日本では古代の伝説や神話をモチーフにした曲を日常聞いている人は多くないだろう。私は縄文時代をたたえる唄など、想像したこともなかった。

なんとなく日本は先進国、アフリカは途上国というイメージがあるが、スピリチュアルな面は奥深いようだ。

鷲といえば米国の国鳥。米国は今、様々な危機に見舞われている。大統領選挙や国際的な影響力の低下、そのインパクトは世界中に波及している。

科学研究の分野でも、米国は世界のリーダーとして頼りになる。その米国でも、科学研究予算の削減が問題になっている。世界中でいろいろな迷いがあるように感じられる。

今月、私が参加したアストロバイオロジー分野の会議は、今後の新しい方向性を話し合う、NASAが主催した重要なものだった。そして人類共通の課題に取り組むために世界中から参集する科学者たち。

宇宙生命科学分野では、国際宇宙ステーションの退役や月有人探査のアルテミス計画など、国際協調を必要とするイベントがますます多くなっている。日本の研究者コミュニティーからも、引き続き重要な貢献ができればと改めて思った。

ちょうど適度な渋滞にもつかまり、空港まで1時間以上かかってしまったが、いろいろな話を聞けて勉強になった。私もヨルバ民族についてインターネットで検索しながら聞いていたので、画像とドライバーの語りで博物館の一つのセクションを案内してもらった感じだ。

初めて知った「オグン」のこと。時間と空間を超えてお導きをくださるならば、是非その叡知をお借りしたいものだ。

様々な学びがあった2週間ほどの旅を締めくくるのに、ちょうど良い心の整理の時間を頂いた気がしたので、今回も忘れないうちにnoteに書き留めておこうと… さまざまなお導きに感謝!

今月も最後まで読んでいただいて、ありがとうございます!


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