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日本のコメの需要は以前のように低下する(コメ価格上昇シリーズその3)
先日の記事では、コメの供給が今後も減り続ける可能性が高いことをご紹介しました。
日本のコメの供給は減少を続ける(コメ価格上昇シリーズその2)
https://note.com/muratamasashi/n/n4dbec3c646de
今回はコメの需要に関する私の考えをご紹介したいと思います。
「家計調査」によるとコメの購入数量は増えている
ご自宅でコメを炊いて食べる慣習は、長い間失われてきました。
総務省が公表する「家計調査」によると、二人以上の1世帯当たりの米の購入数量は、2001年に97.3kgありましたが、少しずつ減少する傾向が続き、2023年には56.7kgまで減ってしまいました。22年の間に約41kg、率にすると約41%の減少となります。いわゆる「コメ離れ」です。
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長きにわたりコメの購入数量が減ってきたこともあり、コメの需要は低下し続けているとの印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、じつは昨年からコメの購入量は少しずつですが増えています。
同じ「家計調査」を年間ではなく月間で見ると、米の購入量(過去12カ月間の累計)は2023年11月の56.2kgで底(ボトム)をつけ、しばらく横ばいでの動きを続けた後に2024年5月から増加傾向にあります。そして最新データである2024年11月には60.3kgと2022年4月以来の60kg台に達しています。
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スーパーでの販売数量は落ち着いている
ただ、「家計調査」はあくまでサンプル調査であり、日本全国の消費動向と乖離する可能性も指摘されています。
そこで全国約1,000店舗のスーパー・生協等のPOSデータから農林水産省が集計したコメの販売数量を確認します。このデータは週次で集計されたもので、最新データは今年(2025年)1月6日の週です。
これによると、昨年(2024年)4月以降のコメの販売量は、8月に南海トラフ地震の臨時情報が発表され 、その後の地震、台風等による買い込み需要が発生したこと等により伸びが著しい週が8月5日から3週続きました。ただ、9月2日以降の週は前年を下回る水準で推移しており、直近の今年(2025年)1月13日の週は前年同期比2%の減少です。
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https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/attach/pdf/r6_kome_ryutu-74.pdf
農水省集計のPOSデータをみると、コメ販売量は前年を上回る動きが始まったのは昨年4月後半で、「家計調査」の動きと整合的です。一方、昨年9月以降はPOSデータと家計調査とで動きが異なります。
ただ、一般的に考えれば、コメ価格が上昇したのであれば、コメの購入量は増えるのではなく減るはずです。推測でしかありませんが、現実の動きを示しているのは(どうやら)POSデータのようで、家計調査によるコメ購入数量はいずれPOSと同じように前年をやや下回る動きになると思われます。
コメ価格の上昇は需要を抑える
今後ですが、コメの需要はコメ価格の上昇によって落ちていくと考えています。
総務省が公表する「消費者物価指数」によると、コメ(米類)の消費者物価(≒店頭での販売価格)は、昨年(2024年)から上昇ペースが加速しており、12月には前の年に比べ(前年比)約65%の上昇となりました。一方、パンは昨年8月から前年比マイナスとなっており、最新の昨年12月は前年比-1.8%となっています。
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コメ価格が上昇する一方、パンの価格が下落したことから、コメの相対価格は急激に高まっています。比較としてパンと小麦それぞれに対するコメ価格(相対価格)を見ると、対パンで137、対小麦で約125となっています。2023年の相対価格は70~80くらいでしたので、パンや小麦に対するコメ価格は50~70%くらい上がったことになります。
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コメの割高感が一気に高まったこともあり、「コメ離れ」の動きが今後は徐々に戻り、コメの需要は落ちていくのではないかと私は考えています。
米価格は結局どうなる?
さて、ここまで、コメ価格の今後のパターン、コメの供給、そして今回コメの需要の3つについて解説をさせていただきました。
次回の記事では、3つの考え方を統合して、今後もコメ価格が上昇を続けると私が考える理由をご説明したいと思います。
コメ価格はどこまで上がる?「需給」と「物価動向」の読み解き(コメ価格上昇シリーズその4)
https://note.com/muratamasashi/n/n0572758a19c0
村田雅志(むらた・まさし)
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