世界のマネーが縮み始めている
世界で膨張したマネーが縮み始めているように見えます。
CoinGeckoによると、世界の仮想時価総額は、今年12月17日に3.91兆ドルと過去最高を更新しましたが、そこからは減少基調で推移し、一昨日（2024年12月23日）には3.42兆ドルと約1カ月ぶりの低水準に落ち込んでいます。
一方で、米長期金利は上昇基調で推移しています。昨日（2024年12月24日）の米10年債利回りは一時4.629％と5月29日以来の高水準を記録しました。12月6日に記録した直近安値（4.126％）から50bp超の上昇となります。
米長期金利の上昇を背景に米ドルも上昇基調で推移しています。ドル指数は先週末（2024年12月20日）に108.54まで上昇し、2022年11月10日以来の高水準を記録しました。今週に入ってドル指数の上昇は一服していますが、昨日時点でも108を超えた水準にあります。
12月のFOMC声明と同時に公表された経済見通しでは、2025年の利下げ回数見通しが従来の4回から2回に下方修正されました。FRBの金融緩和姿勢は以前に比べ後退しています。
FRBのバランスシートは縮小を続けています。2022年4月に8.97兆ドルだったFRBのバランスシートは、いわゆるQT（量的引締め）の開始とともに縮小が続き、今年12月17日時点では6.89兆ドルに縮小しています。これは2000年5月4日以来の低水準です。しばらくはこのまま縮小が続くことから、FRBのバランスシートは、新型コロナ対策でFRBが量的緩和を再開させた2020年3月以前の水準（約4.3兆ドル）に近づくとみられます。
年末・年始に近づいていますが、トランプ政権始動を控え、米国で大きな政策転換を迎えるとの見方が増えています。ただ、金融政策に関しては、12月のFOMCをきっかけに金融緩和のペースが鈍化するとの見方が共有されつつあります。
ところが冒頭で指摘したように米国（ひいては世界）のマネーは縮小の方向に動いています。金融政策の方針に大きな変更がないのであれば、世界のマネーが縮小する動きはしばらく続くと見るのが自然です。
さて、足元ではビットコインの上昇に歯止めがかかっています。昨日のビットコインは5時台につけた安値（1,455万円）から切り返し、本日3時には1,566万円と21日以来の高水準に反発しました。しかし、12月17日につけた1,666万円の過去最高値からはまだ距離があります。
私はビットコインが収縮可能なゴム袋で、そのゴム袋には水が入っているといつも想像しています。ビットコイン価格はゴム袋の大きさで示されており、ゴム袋の中の水は出し入れが簡単とします。ゴム袋の中の水はマネーです。
このゴム袋に水（マネー）が入れば入るほど、ゴム袋（価格）は大きく（高く）なります。反対に水が抜ければ、ゴム袋は小さくなります。
米国でのビットコイン現物ETFの登場や、トランプ米次期政権による暗号資産関連規制の緩和をきっかけにビットコインは上昇しました。これを先の例に置き換えると、ETFなどによってより多くの水がゴム袋に入るだろうと期待され、先んじて多くの人がゴム袋に水を入れた、と想像することができます。
しかし、ビットコインは（多くの他資産と違い）ビットコインそのもの（ゴム袋）に何の経済価値もありません（ただのゴム袋でしかない）。人々が水（マネー）を必要とすれば、ゴム袋（ビットコイン）から水（マネー）を抜く可能性が高まります。仮に水が必要でなくても、水がなくなってしまうという不安が高まるだけで、人々はゴム袋から水を抜き出そうとするかもしれません。
ビットコインの先高観は続いているのかもしれませんが、世界のマネーは縮小している、という大局観も頭の片隅に入れておいたほうがいいのかなぁと思ったりしています。
村田雅志（むらた・まさし）
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