止まらないコメ価格の上昇、今後の「価格パターン」を考える(コメ価格上昇シリーズその1)
コメの小売販売価格が急騰中
テレビや新聞では、コメの価格高騰が止まらないとの報道が続いています。私がよく利用するラーメン屋さんでは、コメの仕入れ値がものすごく上がってしまったため、ランチタイムのライス無料を止めてしまいました。。。。
東京で販売されるコシヒカリ(1袋・5キロ)は、昨年12月時点で4,018円だったそうです(出所:総務省「小売物価統計」)。1年前にあたる2023年12月時点では2,386円でしたので、1,600円以上も値上がりした(前年比68.4%上昇・約1.7倍になった)ことになります。
コメの卸売値がものすごいことに
コメの卸売値にあたるデータは、農林水産省が公表する「米の相対取引価格・数量、契約・販売状況、民間在庫」という調査から確認することができます。この調査は毎月公表されており、米(コメ)の相対(あいたい)取引価格からコメの卸売値に該当します。
コメの相対取引価格とは、コメの卸売・流通段階で行われる直接取引(相対取引)の際に成立した価格を集計したもので、玄米ベースで60キロ(いわゆる1俵)当たりの価格を示しています。相対取引は、市場や入札(セリなど)を経由せず、売り手と買い手が直接交渉して決定する取引形態を指します。
コメの場合、主に生産者団体(JA等)や卸売業者などが契約や見積もりを通じて、個別に価格・数量を決める手法が多く利用されています。
コメ相対取引価格は、新米の価格動向を早期に把握することを目的としていることから、9月を年度の開始月としています。2024年度は2024年度9月から始まりますので、今は2024年度となります。
これまでコメ相対取引価格は、年度開始時(9月)の価格とだいたい同じ水準で年度末(翌年の8月)まで続く傾向にありました。
たとえばコメの価格が上がっていると話題になった昨年度(2023年度)ですら、コメ相対取引価格は、年度開始(2023年9月)の15,291円から年度末(2024年8月)に16,133円と千円弱上昇しただけでした。2022年度や2021年度も、2023年度と同じように年度開始時と年度末との間に価格に大きな差はありませんでした。
ところが2024年度が始まった2024年9月のコメ相対取引価格は、22,700円と前月(2024年8月)から6,500円も上昇し、現在の統計が始まって以来の過去最高値を記録します。
そして、その後も、コメ相対取引価格は23,820円→23,961円と上昇を続け、12月には24,665円と3カ月連続の上昇となりました。9月の価格がそのまま続く、というこれまでの動きはもはや通用せず、コメ相対取引価格は上昇を続ける展開となっています。
今後の予想パターン
では、今後のコメ相対取引価格はどのような動きになるのでしょうか。
まず考えられる(そして、そうなると多くの方が願っている)パターンは、ここからコメ相対取引価格が下がり、過去の平均水準に近づく、というものです。これを「予想パターン①」とします。
こんなイメージです。
いや、そんな都合よくいくわけないだろ、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。だとしたら、次に考えられるパターンは、今(2024年12月)の水準が(ある程度)維持されて、そのまま今年(2025年)8月まで推移する、というパターンです。これを「予想パターン②」とします。
こんなイメージです。
いやいや、世の中そんな甘いものではなく、コメ相対取引価格は今後も上昇を続けるよ、と思う方もいらっしゃるでしょう。これを「予想パターン③」とします。
こんなイメージです。
おそらく今後もコメ価格は上昇を続ける
下がる・そのまま・上がる、という3つのパターンをご紹介しました。どれかになるのは当たり前ですね。。。
アンケート調査をしたわけではありませんが、おそらく予想パターン①をイメージしている方は少なく、多くの方は予想パータン②をイメージされているように想像しています。
しかし私は、おそらく今後もコメ相対取引価格は上がり続ける(つまり予想パターン③になる)だろうと考えています。
そして(コメ相対取引価格も含めた)コメ価格の上昇は、今年だけの一過性の現象ではなく、しばらく続くものとも考えています。一部では、コメ業者の売り惜しみがコメ価格の上昇の一因であるとの見方もあるようですが、2023年後半から始まったコメ価格の上昇は、業者の売り惜しみだけでなく、構造的なものであると考えています。
次回の記事では、今後もコメの供給の減少は続くだろうと私が考える理由をご紹介します。
村田雅志(むらた・まさし)