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サカイ産業様 企業訪問

こんにちは。新入社員の酒井・垣田・金刺です。

今回は「お客様を知り、弊社の技術が社会にどうかかわっているのかを学ぶ」という研修の一環で普段私たちがお世話になっているお客様に取材する機会がありましたので、その報告をさせていただきます。記念すべき一社目はサカイ産業株式会社様です。サカイ産業様は繊維と複合材のエキスパートで、弊社とも取引のある会社です。その技術と精神を学ぶためにインタビューしてきましたのでぜひ最後までご覧下さい。
 

 

「糸状なら何でも構いません。」


繊維の強度について説明して下さる竹田様


「糸状なら何でも構いません。」
そう話してくれたのはサカイ産業株式会社取締役竹田様です。サカイ産業様は繊維事業と複合材事業を軸とした、総合開発加工メーカーです。この2つの事業はイメージが湧きづらいですが、実は航空宇宙産業から身近なスポーツ・レジャー産業まで、身の回りのありとあらゆる所で用いられている、社会になくてはならない事業です。2018年に創業100周年を迎え、経済産業省が主催する「地域未来牽引企業」として選ばれている地域に根ざした歴史ある企業です。
 
 

竹田様は繊維と複合材の2つに分け、詳しく説明してくださいました。

繊維の特徴


 まずは繊維から。サカイ産業様で扱っている繊維は、大きく炭素とガラスとアラミドの3つに分けられます。

炭素繊維

炭素繊維は比強度(引張強度を比重で割ったもの)が鉄の約10倍、密度は4分の1ほどで非常に軽く同時に高い強度を持っています。弾性率も高いため変形しにくく、構造材料として優れています。また、炭素繊維は高温にも耐え、化学的に安定もしており、腐食しない特性も持っています。さらに導電性もあります。この特性を活かして、電子部品や電磁波シールドなどに利用されています。 

ガラス繊維

ガラス繊維は高い耐久性と低コストという特性を合わせ持っています。経年劣化が少なく、長期間にわたってその性能を保つことができます。また、不燃性であり、火災時でも安全性に優れています。さらに薬品に強く、様々な環境で使用することができます。さらにさらに電気絶縁性が高いので電子機器などにも応用することが可能です。

アラミド繊維

アラミド繊維は高機能化学繊維の一種で、特に耐熱性、高強度、難燃性、耐薬品性に優れています。400℃でも分解しないほどの耐熱性と極めて高い難燃性を持ち、消防服や電気配線の絶縁材等に利用されています。軽量でありながら鋼材の約7倍の引張強度を持ち、防弾・防刃性が高く、耐薬品性・耐摩耗性も高いため、防弾チョッキ、ブレーキパッドの摩耗材などに利用されています。しかし、アラミド繊維には欠点もあり、紫外線に弱い、アルカリに弱い、染色性が悪いという特性があります。

サカイ産業様HPより
http://www.sakai-grp.co.jp/high-performance

 以上が、竹田様が説明してくださった繊維の特徴です。 

複合材の特徴


次に複合材の説明です。
「鉄筋コンクリートをイメージしてください。ただのコンクリートだけではあそこまで頑丈にはなりません。鉄筋を中に入れることであれほどの強度を出すことが出来るんです。縄文時代から複合材の概念はあり、土器を形成する粘土の中に植物の繊維や獣の毛を混ぜ焼成することによって耐久性を上げていたことが分かっています。」

竹田様はここでも分かりやすい説明をしてくださりました。サカイ産業様では前述した繊維と新たに「樹脂」を組み合わせてFRP(繊維強化プラスチック)という複合材を作成しています。サカイ産業様では主にGFRPとCFRPの製作を行っています。

GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)


まず、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)はガラス繊維+樹脂で作られたFRPです。 特徴は強度が高いことです。一般的な構造部材として十分な強度を持っており、引張強度は鉄の3倍以上となっています。また軽量であることも特徴で、密度も鉄の四分の一となっています。活用例は建築産業、自働車産業、航空宇宙産業、風力発電など、多岐にわたります。


CFRP(カーボン繊維強化プラスチック)


そして次にCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)は炭素繊維+樹脂で作られたFRPです。特徴はGFRPよりも強くてしなやかなことです。引張強度は鉄の5倍以上で引張弾性率はGFRPの約8倍となっています。またGFRPと同様に軽量で密度も鉄より小さいです。活用例は航空宇宙産業、自働車産業、医療産業、風力発電、スポーツ・レジャーなどこちらも幅広い用途があります。
 

「やはりコストは大事です。」


GFRPとCFRPの大きな違いはそのコストにあります。一般的なGFRPが1㎡あたり34000円~44000円なのに対し、CFRPは1㎡あたり56000円~76000円となっています(筆者調べ)。ちなみに高い安全性が求められる航空機にはCFRPが機体の50%以上に使用されており、従来と同じ強度・安全性を保ちつつ航空機の軽量化を可能としています。

筆者の体験談

筆者は高校時代に弓道部に所属しておりました。弓矢にも種類があり、大きく、ジュラルミン製とカーボン製に区分されます。部員の中にはカーボン製の矢を使う人もおり、試しに引かせてもらうと、矢の勢いがとてつもなく強く、空を切り裂く音が印象的だったことを覚えています。サカイ産業様にもこのカーボン製の矢が展示されていました。当時のことを思い出し、「自分が知らないだけで複合材の技術は身近なところにも使われているんだなあ」としみじみ感じました。


他にも竹田様はCFRPの用途について、面白い話を聞かせてくれました。CFRPの特徴の1つにX線透過率が高いことが挙げられます。その特徴を活かして、レントゲン撮影の現場によく用いられています。より少ないX線量で鮮明なレントゲン写真を撮影することができるので、被爆量が従来の材質よりも少なくなり、人体への影響を減らすことができるそうです。
 
サカイ産業様はさらに繊維の織り方と複合材を形成する樹脂の種類も沢山用意しています。それらを自在に組み合わせることで多種多様なお客様のニーズに対応することができます。また、繊維から複合材まで一貫した工程ラインを持っているのでお客様に素早く納品することができます。
 

「冬ざれに冴ゆ山茶花の華」


私たち村田ボーリング技研は経営理念を大切にしている企業ということもあり、サカイ産業様の経営理念を調べたところ、

「冬ざれに冴ゆ山茶花の華」

という理念でした。私たちの経営理念とはまたテイストが異なる雰囲気です。そこで気になって質問してみると、

厳しい冬に凛と咲く美しい山茶花のように、たとえどんなに厳しい外部環境でも、お客様第一主義を貫き華を咲かせ続けることが我々の使命である。

という思いが込められているそうです。因みに山茶花の花言葉は「困難に打ち克つ、ひたむきさ」です。100年以上会社を存続させてきたのはこの美しい理念が社員の方々に脈々と受け継がれてきた結果なのかもしれません。  

サカイ産業様は繊維業から始まりました。繊維業は古来より人の生活に欠かすことのできない大切な産業です。もともと静岡は遠州織物があり、中でも島田は織物の集積地として栄えていました。3年に1度開催される日本三奇祭帯祭りは島田で開催されており、そのような土地柄の中でサカイ産業様は繊維業をスタートさせたそうです。

島田大祭帯まつりの様子。太刀に帯を巻いて町を練り歩いています。
島田市HPより引用
https://www.city.shimada.shizuoka.jp/kanko-docs/shimadataisai_105.html


「人の手でやることをむしろ大切にしています」


現在、織物業は自動化高速化が主流の時代です。見込み生産で1万m、10万m単位で生産した方が利益の幅が大きいそうです。その中でサカイ産業様は50m、100mでの少量受注生産を受け付けています。

他社があまりやりたがらない少量多品種なものをスピーディーに納品できるのがサカイ産業様の強みです。
少量多品種を受注生産するとなると当然多くの苦労があると竹田様はいいます。

「少量多品種って聞こえはいいですけど、1個1個やらなきゃいけないのは大変。劣化がどうとか金属の膨張率がどうとか、さらにその中で付加価値をつけたいとか、スピード感を持って設計に入りたいとか。品質が十分なのは当たり前なので、その上で同業他社との差別化を考えると私たちは納品までの速さを大切にしていこう、、、考えることは沢山ありますね。」

難しい仕事の話とは裏腹に竹田様の表情は晴れていました。


「基本的に仕事は楽しんでますよ。なんていうのかな、色んな事に挑戦させていただける環境で、たくさんトライしてきました。」

今ではサカイ産業様の一翼を担っている複合材事業(GFRP・CFRP)ですが、竹田様が入社した当初は現在の規模の約10分の1だったそう。


「自分は技術職で入ってモノづくりしてっていうところから始まりました。そこからどの事業を進めていくか考えるようになって、航空宇宙にも挑戦したりして。社長が応援してくださったので本当に楽しく働けることができました。そういうような土壌が我が社にはあるので、今度はそれを他の皆様にも同じようにやらせてあげたいなって思いますね。社長はよく、会社を利用して自分自身を成長させていってくださいって言います。」

やりたいことを応援する、社員の成長を願う、そんな土壌がサカイ産業様の複合材事業を支えてきたのかもしれません。


手腕よりも信頼性

ここまでは会社の内側の話や流れを聞いてきました。
次に会社の外、つまりお客様との関係の中で大切にしていることを質問してみると、

「信頼関係です。」

と間髪入れずに仰っていました。次いで

「我が社は手腕よりも信頼性に重きを置いています。」

とも答えてくれました。一貫性を持ってお客様に接することや、してくれた事に対しての恩を返す返報性など、1つ1つの小さな積み重ねがお客様との信頼関係に繋がっていくと竹田様は仰っていました。


当然、お客様のニーズに答えるためには部下を𠮟らなければならない場面も出てくると言います。

「本当は𠮟りたくないですよ。でも今ここで自分が指摘できれば、もっと会社をよくすることができたり、改善につながったりして、結果的にお客様のためになると考えるようにしています。」

あくまでもお客様のためと考えれば、感情にとらわれずにすべきことを冷静に判断できる。竹田様の仕事に対する熱い思いを垣間見ることができた瞬間でした。
 
 
最後に会社の未来について伺うと、

「これからはうちの会社に勤めてよかったなあと思ってもらえるような会社にしていきたいですね。単純に給料をもらうためだけに働くのではなく、社員の方が働いていて面白いなあと思ってもらえるような会社を作っていきたいです。」

と語ってくださりました。
未来について語るその表情はイキイキとしており、仕事を心から楽しんでいることが伝わってきました。
 

結びに


初めての会社訪問で緊張していましたが竹田様、専務取締役栗山様をはじめ、社内で出会った従業員の皆様があたたかく出迎えてくださりワクワクした気持ちでインタビューに臨むことができました。心から感謝を申し上げます。
 

誠にありがとうございました。


また、今回インタビューをさせて頂き、世の中には自分が知らないだけで素晴らしい技術や、それに携わる人がいることに気が付きました。意識していませんでしたが、繊維や複合材は私たちの暮らしの至るところにあり、インタビューをさせていただく前と後では見える世界が全く変わりました。帰る途中窓の外を眺めていると、看板や自動車、住宅、電車が目に入ってきて、もしかして、あれも複合材が使われてるのかなぁ?というような会話が生まれ、今までは気にも留めなかった材質というものに興味がわき、見える世界が広がったように思います。
 

サカイ産業様が生み出す製品にはロゴや社名が入りません。

「それでもかまわない。僕たちが見ればすぐにわかるから。」

まさに縁の下の力持ち。見えない所で私たちの暮らしを支えて下さっていました。

 

たどたどしい文章となってしまいましたが、最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。