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アークティック・モンキーズが好きな女の子。

アークティック・モンキーズが好きな女の子に、僕はまだ出会ったことがない。

丸いレンズのサングラスなんかをかけて、丈の長いコートに身を包みながら「Do I Wanna Know?」の重低音に酔いしれたり。

夜の街の階段に座って、「Star Treatment」の何かが溶けていくようなサウンドに合わせて煙草を吸っていたり。

「Mardy Bum」の軽快なギターを味わいながら、電車の窓に映るビルの群れや通り過ぎていく昼の光に見入っていたり。

そんな素敵な女の子に、僕はまだ出会ったことがない。

彼らの音楽が時に、男くさく感じられるからだろうか?

それとも彼らの言葉が時に、女々しく感じられるからだろうか?

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アークティック・モンキーズの魅力に初めて触れたのは、渋谷にあるカフェだった。

入口のあたりでなぜかヤギを飼っているところで、僕は友人とコーヒーを飲んでいた。
彼らの音楽を聴きながら、僕は人生で一本目の煙草に火を点けようとしていた。

あの日以来、僕は「アークティック・モンキーズが好きな女の子」を探し続けている。

「I Bet You Look Good on the Dancefloor」を爆音で流しながら、オープンカーで一緒に駆け抜けてくれるその人を。

ついでにオアシスとレイディオヘッドも好きだったら、言うことはない。彼女は確実にビートルズの信者だからだ。
アメリカよりもイギリスのロックという、少しひねくれた性格の雨女であるに違いないからだ。

そんなわけで、僕は今年のクリスマスも「A Certain Romance」を頭に響かせながら賑やかな街を歩く。前奏が1分以上もあれば、サンタクロースだって願いを聞き入れてくれるかもしれない。

アークティック・モンキーズが好きな女の子に、僕はまだ出会ったことがない。


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