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家は成長、劣化、変化、成熟する

吉田(以下、よ) このまえの「家は第三の皮膚」って話は結構納得したけど、「家の6つのS」ってのも気になるよ。

村田(以下、む) 「建物は6つのSで構成される」。これはアメリカのスチュワート・ブランドが著書「How Buildings Learn」で書いてるんだ。
スチュワート・ブランドは「ホールアースカタログ」っていう全米でベストセラーとなった雑誌の編集者で、この雑誌は日本の「宝島」や「POPEYE」なんかにも影響を与えたっていわれてるよ。スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式のスピーチの最後にいった“Stay Hungry. Stay Foolish”は、「ホールアースカタログ」から持ってきた言葉らしい。

よ) なんかスゴそうな人。で、「6つのS」ってなに?

む) 家が時間とともに変化する6つのレイヤー(層)のこと。

よ) もうちょっと具体的に。

む) 一番周期が短いSはStuff(調度品・日用品)。たとえば、家具とか家電とか日用品のように1年の間にも何度も変わるもの。次がSpace Plan(空間計画)。いわゆる間取りだな。これは家庭によってまちまちだけど、10年とか20年の単位で変わることもあるし、変わらないままってこともある。3つめはServices(設備)。配線、配管、空調、通信など。ここでは7~15年で変わると書かれてる。

よ) 今の日本の家の設備が全部そうとは思わないけど、家を建てた時、家中に這わせたLANケーブルは今は使ってないなぁ。

む) で、4つめがSkin(外装)。これはメンテナンスだったり、好みの変化だったりで、だいたい20年程とされてるよ。ちなみに、うちは20年経っても何にもしてないから、ちょっと気になってる(汗)。

よ) でもひどい劣化はともかく、経年変化による“味”ってのもあるしね。必ずしも劣化が悪いわけではないと思う。

む) そのためにも最低限の手入れは必要だよ。5つめはStructure(構造)。これはよほど大きな改修や災害でもない限り数十年は変わらなくて、耐用期間は30~300年。最後はSite(用地)。土地については世代や所有者が変わっても変わらない。

よ) なるほど。この前の「5つの皮膚」は、人間との関係のことだったけど、今回の「6つのS」は建物と時間の関係か。家を建てる時は全部のSが同時進行だから完成後のことまで気が回らない、というか、おれの場合は気にはなりつつも後回しにしちゃったような気がするよ。

む) 家の完成はゴールじゃなくてスタートと考えて、家も自分たちと一緒に変化していく。しかも時間の流れが異なるレイヤーがあるって考えるのが、家とうまくつきあってくために大切ってことなんだろうな。
ただ、自分や家族がどう変化していくかの予測が一番難しいからなぁ。
たとえば間取りなんかは、20年後にちょうどいい間取りなんかわからないと割り切って、「変化に対応しやすい家にする」という方法もあるよ。そのためには家は一つの大きな箱と考えて、それを可変性がある間仕切で仕切られている。もしくは最初は極力仕切らないとか。

よ) 「便利」もどんどん変わっていくからね。でも、この前話した「家は第三の皮膚」ってのは、ずっと変わらないことだと思う。

む) お!同感。やっぱり気持ちいいってのが優先だよな。やっぱりもっとこの話をしないとな。


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