兼業が進まないのはなぜだ?
兼務ってなんだ?
副業や兼業を推奨していく上でこの「兼務」という存在がすごく邪魔だなーと感じています。企業にとって都合が良すぎる制度ですよね。
よく名刺交換で見かける、
DX推進部 グループ長
兼 商品企画部 課長
兼 営業統括部 課長
みたいな肩書き、「大変そうだなー」と思う反面、「いい感じに利用されてるなー」と思ってしまいます。
この兼務って会社側の都合しか考えてない悪しき文化で、兼業と兼務を語る上でこの兼務を悪者として整理するとわかりやすくなりますw
※注意事項
これから「兼務」を悪として語っていくので、気分を害する方は読まないでください。また、今回話す「兼務」ですが、業務として割合を持って「業務負担も兼ねている」という兼務を指します。業務としては1部署しか属してないが、名刺に複数書いておくことが対外折衝上いいよね。みたいな理由で複数肩書きを記載している方は「兼務」として定義していませんのであしからず。
まず、兼務って「この人は優秀だから2つの部署に跨いで横断的に会社を良くしてもらおう」みたいな想いがあり、工数を割合で分けて仕事してもらうことなんですが、2部署兼務だと5:5だったり8:2だったりします。
3部署兼務だと5:3:2みたいな割合で配分されることが多いんですが、兼務を経験したことがある方はわかると思いますが、人間ってそんなに数字で割り切れるわけないですよね。
で、そうなると自然と6:6:6みたいな、常に界王拳を発動しながら仕事していくことになります。
これは会社にとっては都合がよくて、「給料変えずにたくさん仕事してもらってる」という状態で旨味が相当強いです。
一方、社員はどうかと言うと、実はこの兼務という肩書き、まんざらでもないんです。社内からは「すごい」「大変だけどがんばって」と激励をもらいつつ、掛け持ちすることで確実に評価されているので、承認欲求がカンストするんですね。
兼務している人は口では「いやー、マジで大変なんだよね。会社は何考えてるんだろうね」みたいな愚痴を吐きながら割と満足していたりします。ぼくもそういう経験があります。
自然と兼業文化は生まれない
つまり、雇用する側にとっても都合よく社員をこき使うことができ、雇用される社員も文句を言いながら実はまんざらでもないという、やめられないとまらない「かっぱえびせん現象」に陥ってるのが現状です。
一方で「兼業」とはどういうものかというと、別途追加報酬を支払って同じ会社で別の仕事もしてもらうことになるので、会社としては支出になります。
兼業ではなく兼務でごまかす。これが会社にとっては素晴らしいんです。
ぼくはこの実態を何とかするべきだと思っています。他部署の仕事をしたら社員還元でなくとも部署間でマネーが行き交うべきだと思っています。
ただ、それって仕組み的に面倒くさいし、助け合いの精神とかを金銭で測るのはナンセンスだったりします。なので「兼務」ってのは都合が良くて理にかなっていて、とても便利な機能なんですが、本当に兼務って幸せなんですかね?
副業禁止の会社は先に兼業して欲しい
2022年に厚生労働省が正式に「副業・兼業を促進」とうたってから2年が経過しましたが、実態としては副業も兼業も普及していません。会社としては「規約は変更したよ」程度で普及促進したように見せかけている部分が大きいですが、実態は「副業する暇がない」「いきなり副業って言ったってどうやって仕事探せばいいかわからない」というマインドもあり、企業側の推進に反して個人の普及が芳しくなく、結果として会社に骨を埋めるつもりでいる世代の人達から、「ほら見ろ、副業を許可してもみんな副業なんかしない。会社への愛にあふれているではないか」という声が聞こえてきそうな状況です。
でも世間はどんどん賃金上昇よりも物価上昇が大きく、大手企業で働いてるのに「コンビニ弁当高いよね」みたいな暮らしをしているのはかなり悲しい状況だと思います。
たしかに「いきなり副業やっていいよ!」と言われても、難しいですよね。副業って「自分で仕事を取ってくる」というものなので、ずっと会社員として働いていた人にとってはとてもハードルのある行動です。
そして何より「やらない理由がでっちあげやすい」というのも大きなポイントです。ダイエットや勉強もそうなんですが、「しんどいけどやったほうが絶対いいよ!」っていうものって、「やらない理由」を見つけた瞬間、終わるんですよ。
副業をやらない理由・・・「本業が忙しいから」
もはやエクスカリバー級の切れ味の理由ですよね。だってどんなに暇な人でも「仕事が忙しいから」って言えばそれで勝負ありです。
なので、副業・兼業を推進している会社は副業ではなく「兼業」を推進して欲しいなと思ってます。
副業はハードルが高い。だったら社内で他の部署の仕事をしてもらう。会社としての生産性の循環を上げつつ、社員の新たなスキルも創出できる。別途報酬を支払い、転職マインドを下げることもできる。
兼務で「見せかけ」の評価をするのではなく、兼業という「対価」の評価をしてあげるのが最優先なのではないでしょうか。
兼業をしない理由がなさすぎる
大手企業については個社の枠を超えてグループ会社間での兼業も許可したらもっと良い循環が生まれます。
子会社出向や遠隔地への転勤なんて喜ぶ社員はいませんからね。そうではなく「子会社への兼業」「遠隔地事務所の兼業」という形で、所属や勤務地は変更せずに新たな仕事を体験してもらうということで、他の会社の仕事も体験できるので、兼業を否定する理由がなさすぎるんですよね。
「組織変更でジョブローテーション」も大事な考え方ですが、ジョブローテーションをしなくても色んな仕事を経験させることはできるし、やる気のない人にはそのチャンスを奪っていけばいいと思います。
組織変更も有効性はあるけど、その有効性を最大限に発揮できている会社は少ないと思います。だって、単身赴任したい人としたくない人って明確に理解して異動命令を出せていますか?そして、その単身赴任したい人は、赴任先で結果を出せそうな人なんですか?そう考えると適材適所って難しいはずなんです。
なので組織変更のほとんどは「半年に一度のタワーディフェンスゲーム」くらいのもので、「今回はこの砦にこの弓兵を置いてみるかー」くらいの感覚で配置されていきますが、その弓兵にとってはたまったもんじゃないですよね。
でも仕方ないことです。タワーディフェンスゲームをやってる本人は、その弓兵の気持ちを考えることは0%ですから。
むすびます
ということで兼務と兼業について持論を述べていきましたが、ぼくは副業禁止の会社で隠れて副業をしていたので、副業については全力でオススメしています。収入増えるし自力で仕事を取ってくる自信がつきます。
大手企業で働いてる人は、その経験だけで充分に副業できる価値があります。「自分なんて何もできないから」と思うよりも、「できそうな仕事を探してみる」という行動をとってみると、一気に世界が広がります。
でも最初から報酬目当てで探しちゃうと危険な目に遭うかも知れないので、ちゃんとした会社や知人の紹介等で始めるのがいいと思いますよ。
そして企業側は、本当に社員のことを想っているのであれば、さっさと兼業制度を作ってください。優秀な人材の名刺に兼務の肩書きを付けて「君はよくやってくれているね」と声を掛けるだけで済まそうとするのは、かなりひどい会社だと、ぼくは思います。
あ、最後に一つ。
今回の投稿では「兼務」を完全悪として表現しましたが、「兼業」を推奨する上での表現ですので、それぞれに正義はあると思います。
ちゃんとした対価が支払われている「兼務」もあると思いますので、個人が選択している肩書きを否定しているものではありません。