年末調整は廃止すべきなのか?


廃止するメリットって何なの?

自民党総裁に立候補している河野太郎さんが総理になった際の政策として打ち出している一つに「年末調整の廃止、全国民が確定申告をする」と言っており、炎上しているようですが、まぁ反対している人の意見には「裏金問題の棚上げ政策だ」とか「まず自民党の問題を片付けろ」とか、論点すり替えの反対意見が多くて、具体的に「年末調整の廃止のどこが問題か」の言及が少ない印象があって、うーん日本的だなぁと思ってます。

では「年末調整の廃止」を打ち出している河野さんにはどんな意図があるのか?まずそもそも国は国民に対して副業を推進しているという背景があります。副業している人にとっては「年末調整の廃止」は全く関係ないんですね。副業収入を申告しなければならないので、副業している人は既に年末調整はしていません。

ということで言えば、「副業を推進している我が国では年末調整の制度は不要」ということになります。メリットというか、不要なんですね。
もちろんこれは極論ですが、メリットとしてはいくつかあって、会社の負担が減るという点です。会社が全社員の年末調整のためにしている作業はタダではありません。大きい会社は委託先に外注して年末調整業務を行っています。

年末調整を廃止することで、これらの負担を削減することから、各企業はもっと会社にとって必要なリソースを確保することができるようになるでしょう。

また、全国民が確定申告をすることで、保険や税金に対する知識が自然と身に付きます。NISAや投資を積極的に推進しつつも、NISAのメリットにピンときてない人は多いですが、ピンときてない理由は「節税効果」なんですよね。NISAは上限内であれば完全に税金が免除されるんですが、その恩恵を理解できないのは、税金に対する知識が乏しいからだと、ぼくは思います。

国民のタックスリテラシーを上げることで投資への意識が上がるという相乗効果が生まれる可能性があることも、年末調整廃止のメリットだと言えるでしょう。

じゃあ廃止のデメリットは?

年末調整を廃止するデメリットで叫ばれていることとしては、税務署の窓口がパンクする。国民の負担が増える。といったことでしょうか。

賛成派の人たちはこういった反対意見に対して「頭が悪い」という刺激的な言葉を使ってますが、ぼくはこの反対派もごもっともな意見だと思います。

現在、確定申告はe-TAXや郵送等の手段があるので窓口に行くことはほとんどありませんので、窓口がパンクすることはないでしょう。しかし、それはあくまで「現在、確定申告を当たり前に行ってる人の行動」であり、いきなり年末調整がなくなったら「どうやればいいのかわからない」という人口が圧倒的に増えます。

そうすると窓口や電話への問い合わせは増えます。そしてこういった層は「ちょっと文句を言いたい」でしょうから、窓口や電話を使ってくるでしょうね。電話対応も大変だと思います。「ちょっと文句を言いたい」の声を聞かなければならないので。

精度のいいAI相づちボットを導入して、まずはAIに文句を受け付けさせるような仕組みづくりをしないと税務署の職員は疲弊してしまうでしょうね。

国民の負担というのも、賛成派の論としては「e-TAXで簡単に申告できるようになっている」という点ですが、それはその通りで、ぼくも確定申告が面倒だと思ったことはありません。初めて確定申告を行ったのはサラリーマン時代からですが、「え、ぶっちゃけ会社のよくわからんルールと期限で年末調整するほうが面倒なんだけど」と思えるほどです。

年末調整って、会社によってルールが異なり、会社が設ける「提出用ポータルサイト」とかもあったりするんですが、そこに保険控除額とかを1件づつ入力していくんですよ。
一方、e-TAXはマイナンバーで連携をしておけば保険控除額や医療費は全て自動化されているので入力する必要はありません。

今や年末調整は「国民の負担を減らすための施策」ではなくなっているのが現状なのですが、問題はそこではなく、やはり「変化を嫌う国民性」という点が強いですよね。

年末調整は廃止すべきなの?

で、本題の年末調整を廃止する政策案に対してのぼくの見解ですが、「廃止しても構わん」程度の見解です。
もともとぼくは10年以上年末調整はしておらず、自分で確定申告をしていましたので確定申告に対するアレルギーはありません。
ただし一方で「なくなったら困る!」という人も一定いるでしょうから、無理に取り上げる必要はないとも思っています。

廃止というより、「企業だから年末調整をするのが当たり前」というのを撤廃して、年末調整は福利厚生の一環にすればいいと思います。
そうすれば「いやいや、福利厚生コストに年末調整を加えるくらいなら無くしてくれて構わない」という論も出てくるのではないでしょうか。

ただ、確定申告はしてみてほしい

年末調整を廃止すべきとは思いませんが、副業も雑所得もないので確定申告をする必要がない人でも、一度は確定申告を経験して欲しいというのがぼくの見解です。

冒頭で話したとおり、確定申告を自分で行うことで社会保険料や税金の知識が勝手につきます。FP資格を取ろうと思ってるのであれば、もはや確定申告は必須でやったほうがいいです。

そして、先述のとおり「年末調整が劇的にラクというわけではない」ということも理解できるようになります。政府のDX推進に対してすごく否定的に考える人って多いですが、e-TAXは毎年進化してて、毎年確定申告をするたびに、「おー、これも自動化されたんだー」って感心することが多いです。

5年くらい前までは保険控除額は手打ちでしたが、最近ではマイナカードをスマホに乗せるだけで保険控除額が自動入力されたりします。結構がんばってるんですよね。本当にありがたいです。

税知識は生きる上で絶対に無駄にならない知識なので、これが自然に身に付くのは便利だという観点で、確定申告をお勧めしています。
また、自分で確定申告しておけばいざ副業するとなったときに「覚えておかなくてはいけないこと」が一つ減りますしね。

むすびます

ということで、「年末調整廃止」という政策に対してぼくなりの見解を述べてみましたが、これが実現するかどうかが問題ではなく、「年末調整は必要か?」を考える良い機会になったと思います。

それに対して、「確定申告をしたことがない人」が年末調整廃止に反対するのは若干違っていて、まずは確定申告を体験してみましょうと思います。

なんでわざわざ年末調整という便利システムがあるのに、面倒なことをしなきゃならんの?という論も正なので強要することはありませんが、「経験しておくといいよ」程度ですね。

でも最後にもう一度言いますが、年末調整よりも確定申告のほうがラクな会社は結構あると思いますよ。
未だに年末調整の書類を紙で提出する会社、多いと思います。
確定申告は完全電子化されているので、もうすでに逆転現象が起きています。この逆転現象を体験してみたいと思いませんか?

無理にとは言いませんが、体験する価値はあると思いますよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?