山口貴由先生の漫画「劇光仮面」第5巻及び第6巻レビュー「いつだって…『ニセモノのヒーロー』を処刑するのは…『本物のヒーロー』であり…『本物』とは即ち…『原作』のコトなんだッ!」
山口貴由先生の「劇光仮面」第5巻上梓から待つことおよそ半年。
遂に待望の第6巻が上梓され…喜び勇んでレビューを書くに当たって…
最初に「前巻の粗筋」を紹介したい。
…と言うのも…前巻後半から本巻にかけてずっと…
「真理りまの話」が続き…「次巻に続く」からである。
(前巻の粗筋)
本巻(第5巻)の最後で性加害疑惑のある舞台演出家の男の元に
劇光仮面のひとりベーアサーダの仮面を被った女が訪ね
「胸糞だなオマエ」と吐き捨てるやスタンガンで件の演出家を気絶させ
ズボンを脱がせ下半身を露出させ巨大なハサミを構えて
「ワタシはアーサベーダ,乙女に変わってお仕置きよ」
とアーサベーダの決め台詞を吐いて「次巻に続く」。
ベーアサーダの「中身」が元特美研メンバーで
「人龍」との戦いで右眼の視力を失った(と自己申告した)…
ワタシは真理りま
ヒーローになりたかったケド…
ヒーローになれなかったヒト…
真理りま,その人であり,その彼女の「闇堕ち」した姿なのか
それとも「別の誰か」がやっているのか…。
後半三分の一でじっくりと真理りまの生い立ちを描いてる。
昔から人の注目を浴びるのが好きで
ヒーローになって注目を浴びたくなって
ヒーロー活動の一環で初めて痴漢を撃退して
被害者の女性に感謝されたときの
相手の自分を見詰める瞳に感激と興奮を覚えた経験が
真理りまの心中に
「だから女の敵を裁くのは正義」
との価値観が構築されて行く。
その「いい話」が最後に飛び切りの悪意を持って描かれているのだ。
「真理りまなら女性から感謝される為に注目を浴びる為に
性加害容疑者のチンコを切断しかねない」って。
そもそも劇光仮面達の「やって来た事」を鑑みるに
「オマエは胸糞だからチンコを切断する」
って思考はじっつっにっ劇光仮面らしく
「劇光仮面のヤバさ」が結集した「引き」と言えるのだ。
少なくとも…あのベーアサーダは…ニセ劇光仮面じゃないって事。
アイツは本物の劇光仮面だからヤバイのだ。
コレさあ…劇光仮面同士で殺し合う内部ゲバルトを描く気満々じゃん…。
ソレが「特撮ヒーロー物らしさ」なんだから。
次巻(第6巻)が実に楽しみである。
(前巻の粗筋・終わり)
真理りまが性加害容疑者を「ベーアサーダ」という…
80年代ヒーローのコスプレしてチンコを切断したのか…
この第6巻表紙のアイオリアは誰なのか…
劇光仮面同士の内部ゲバルトが始まるのか…
僕はジェンダーに媚びへつらったレビューを書くべきか…
ウルセエんだよ。
僕はいま…真理りまのコトしか考えたくない…
真理りまは前巻で「人龍」との戦いの中で負傷し右目の視力を失い…
「もうヒーローは出来ない」「劇光仮面・ベーアサーダにはなれない」
と宣言し…玩具メーカー・テカラトミー(勿論タカラトミー)の…
現在ニチアサで絶賛放送中の「後輩戦隊リョーカイジャー」の
玩具開発のチーフとして「ヒーロー」に関わって行く道を選ぶ。
真理りまこそが「ベーアサーダ」のコスプレをして
性加害容疑者をスタンガンで昏倒させ…
ペンチで海綿体を骨折させ…「男でなくした」犯人だと
草凪ヒヅキ巡査部長と部下の玉木ロミオ巡査が内偵を進める。
草凪たちは仮装した市民による独自の自警行為を
法治国家に対する重大な敵対行為と見做し
武闘派の仮装者を監視するコトを目的として設立された
警視庁・生活安全課コスプレ対策室に属しているのだ。
だが…どうも変だ…。
話が…真理りまが犯人であると…仕向けたがっている様に
草凪には思えてならない…。
真理りまが犯人だとすると全ての辻褄が合う…
「辻褄が合い過ぎる」
のが草凪には気に食わねえのだ…。
「誰か」が…真理りまをハメようとしているのではないか…?
真理りまがコスプレチンコ骨折犯であるという噂は…
たちまちテカラトミー社に広がり…
「リョーカイジャー」の広告塔として設定された
真理りまの地位も危うくなる…。
中傷の画像データが真理りまの婚約者の下にも届き…
婚約者ヒカルはりまに次の様に尋ねる…
ヒカル「キミにとってコスプレとはなに…?」
りま「豪ツヨシ(永井豪)先生の漫画…」
「ユーティリティハヌー(キューティーハニー)というキャラは…」
「体内に感情結晶化装置(空中元素固定装置)というのが埋まってて…」
「その装置は彼女の『想い』をコスチュームに変換出来るんです…」
「ワタシは…コスプレで…」
「ハヌー(ハニー)の様に『想い』を…」
「コスチュームとポージングで表現出来たらと思ってます…」
ヒカルの前でハヌー(ハニー)のコスプレをするりま。
ヒカル「りま…」
「今日僕の下に…キミが車中で脚本家と同乗し…」
「キミがドレスに着替えている画像が届いた…」
「フェイク画像と思いたかったが…」
「今の(ハヌーのコスプレをしてる)キミを見て…」
「本物だと確信した…」
「りま…過ちは誰にでもある…」
「この脚本家に強要されたんだろう…?」
「キミはこんな…娼婦みたいなオンナじゃないだろう…?」
「リョーカイジャー」の脚本家は…
正体不明のストーカーからの被害に苦しむりまに…
ドレスを贈り…りまはドレスを…脚本家の目を瞑らせて着替えた…。
「コスプレイヤーとして視線を集めるコトに必死だったワタシは…」
「『誰か』の目を釘付けにしたいと…」
「いつも心の奥で願っていて…」
「その機会が訪れたと感じるとき…」
「アクセルを踏んでしまう…」
「そうだ…危険領域に踏み込まずにはいられない…」
「ソレがワタシなんだッ」
ヒカルはりまに…
軽率な行動を取った謝罪と…
赦しを乞うコトを求めていると
りまは漸く気付く…
りまはヒカルが見せた「娼婦りま」の姿を見て…
「めっちゃいい顔してる」
と思い…「コレがワタシです」と答えて縁談は破談する…。
ヒカルにりまのコスプレの…変身の…本質は理解されず…
「オレは…タヌキに化かされていたと言うワケだ…」
と吐き捨てて彼は退場する…。
ぜーんぜん小利口に立ち回れず…
「コスプレバカタヌキオンナ」と自称するりまの元に
「リョーカイジャー」の
制作元・東栄(東映)の監督・プロデューサー・脚本家・アクション監督…。
即ちかつてのアウトサイダー集団の有志一同から…
正体不明のストーカーからの被害・中傷に苦しむ彼女に「お守り」が届く。
お守り…「デリンジャープロップガン」…。
は二対の小型拳銃(デリンジャー)のモデルガンで…りまの心中に炎が灯る…。
実写の「ベーアサーダ」は…乙女の味方であるが…
より広義に心正しき人の為に闘っていた「ヌルい」ヒーローであるが…
豪ツヨシ(永井豪)の原作は違うッ!
「原作のベーアサーダ」は…自分を輪姦した男達に復讐し…
処刑するバレリーナであり…
ユーティリティハヌー(キューティーハニー)と同じく
セクシーコスのヒーローなのだ。
ワタシを中傷し…
ワタシから「夢」と「縁(えにし)」を奪い取った…
ニセモノのベーアサーダを処刑するのは…
「原作のベーアサーダ」…
「本物のベーアサーダ」でなければならないッ!
今やッ!
両脚に装着された二丁拳銃(プロップデリンジャー)が
彼女に無限の勇気を与えッ!
「コスプレバカタヌキオンナ」の変身のときは来ませりッ!
りま「心よ…服(コスチューム)に変われッ」
いまッ
ベーアサーダオリジンが大降臨するッ!
ワタシの…変身(コスプレ)はッ!
ワタシの…内心の自由はッ
誰にも遮らせないッ
自らアクセルを踏んで…
自ら好んで危険領域に踏み込んで行く…
ソレがワタシ…
愛の戦士!
ベーアサーダさ!
コレは…
例え特美研の同志達でも手は出させない…。
この落とし前は…ワタシがつける…
ワタシ自身の手でッ!
ニセモノを処刑してやるッ!
表紙のアイオリアくん(仮名)は
獅子(レオ)がモチーフだが…
獅子は非常に憶病で…
獲物を孤立させ…
絶対に勝てる状況にならないと襲って来ない…。
オマケに大変な変態で…
真ベーアサーダに…
月までブッ飛ばされた挙句…
原子分解されて…宇宙の塵に還されても…
すっこっしっもっ良心の呵責を覚えない素晴らしい造形で…
「悪役」とはこうでなくてはイカンよ…。
僕は本巻を読んで…
「覚悟のススメ」の堀江罪子のコトを考えていた…
堀江罪子は…堀江美都子さんがモデルなので…
「歌」で人を励ます少女なのですが…「戦い」には参加しません…。
コレは僕の妄想なのですが…山口貴由先生は…
「女のヒーロー」を描くに当たって…
永井豪先生の「キューティーハニー」をモデルにして…
堀江罪子の墓から…鬼太郎の様に片目で這い出して来たのが…
真理りまだと思ってます…。
りまが右眼の視力を失ったのはそのせい。
堀江罪子の…「戦いには直接参加出来ない」という特徴を克服して…
罪子から生まれて来たのがりまだと思うのです…
りまが真ベーアサーダに変身して右眼の視力が回復するのは…
平野耕太先生のヘルシングの
セラス・ビクトリアの引用なのではないかしら。
堀江罪子とキューティーハニーとセラスの3者が合体したのが…
真ベーアサーダだと…僕は思ってます…。
アイオリアくん(仮名)との対決は次巻に持ち越し。