コラム「オタクの遺言」

SNSで「オタクの遺言」が俄かに話題となっていて…
曰く…
1.オタクが死んだらオタクの膨大なコレクションは
ゴミとして遺族に処分されてしまう。
2.ソレは同好の士にとって余りにも大きな損失である。
3.故にオタクは遺言状を書いておき…
(1)レアグッズは「レアである」と明記すべし
(2)膨大なコレクションの値打ちが分かる同好の士の連絡先を明記すべし
(3)この世に数点しかないレア物がゴミとして捨てられたら
ソレはオタク界隈にとって大変な損失である。

…という主張である。
ソコで僕が…オタクの端くれとして遺言状を書くなら…
ソレはどういった内容になるかを考えてみた。

先ず大前提として知っておいていただきたいのが
「オタクの財産」と言うのは一般社会に於いて
「まず換金出来ない」と言う意味において
「ゴミの山」だと認識する
遺族の解釈は誠に妥当だというコトである。

オタクは…ゴミの山の中で暮らしているッ!

ただ…その「ゴミの山」の中に…稀にキラキラ光るものがあり…
1.換金が可能である。
2.同好の士にとってお宝である。
という「意味」があるものがある…。

本コラムではソコを論じたいのだ。
まず「換金が可能である」という意味だが…例えば…

「孤独のグルメ」の原作本と宮崎駿監督の「カリオストロの城」の4Kの円盤

「孤独のグルメ」の原作漫画や
宮崎駿監督の「カリオストロの城」の4Kの円盤とかは
恐らくオタクじゃなくとも知ってるし
「売ったら金になるだろう」「買い手はきっと付くだろう」
ってコトくらい分かる。

つまり…「Amazonや楽天で普通に売っているもの」って
「販売価格」が分かるから,
ある程度「オタクの財産」の見積もりが出来るんです。

「オタクの遺言」の第1章は…
「(Amazonや楽天で売っていた)書籍や円盤の中古価格の相場の目録」
であると分かると思います。

この考えの延長として
「昔Amazonや楽天で売っていたけど今は売ってない商品」
も試しにヤフオクやメルカリに出品してみる価値はある…。

ひょっとしたらカルト漫画やカルト映画の円盤に
思わぬプレミアが付いてるかも知れない…。

ハイ。

コレが「オタクの遺言」の第2章に書くべき点ですね。
つまり…「廃盤や絶版や製造中止になったコレクションで…」
「プレミアが付いてるコレクションの目録」となります。
遺族に値打ちなんか分かるワケないので
見積価格を添えるコトはオタクの必須義務と言えます。

さて。
ココまでの話は…きっと「分かり易い」と思います…。
何故なら処分すべき遺産の「相場」が分かっているからで…。
こっから先は…
「Amazonや楽天ではそもそも売ってないもの」…
「いや寧ろ(むしろ)何処にも売ってない・買えないもの」
をどう相続させるかに分け入って行くので「難しく」なります…。

例えば僕は2000冊ほど同人誌を所蔵してるのですが…
コレは実質的に「相続不能」だと思ってます…。
同人誌と言うものは…
同好の士が同好の士に頒布する(配る)コトが理念としてあり
そもそも金銭の授受が発生せず…
稀に同人作家さんがプロになられ…
「プロ作家のアマチュア時代の作品」
という付加価値が付く事がありますが…
そんな1000分の1,10000分の1のレアケースは参考にならず…
仮にヤフオクで1冊1冊出品したとしても…
その苦労に見合うだけの利益は恐らく得られないでしょうね…。

遺族としては…処分するより他になく…
事前にオタクは遺言に「処分してくれ」と書くべきだと思います…。
逆に「同人誌の相続」に関して
何か良い御意見があれば御教授いただきたい所です…。
「同好の士に贈与する」しかない…か…。

次に「オタクの遺産」の相続例として挙げたいのが…
「フランス書院」という
現在でも官能小説をリリースしてる出版社があるのですが…
その官能小説作家は日本人で占められております…。
ですが…同出版社は
1977年頃から1981年頃迄はハードカバーで…
1980年頃から1983年頃迄はソフトカバーで…
海外の作家による官能小説を出していた時期があり…
こうした時期は空前絶後で…
その後二度と再現しておりません…。

あのさ。

ハードカバーが890円
ソフトカバーが680円と210円安くなりましたが…
ソフトカバーは装丁の品質がガタ落ちして直ぐバラバラになりました。
ハードカバーは今でも装丁がシッカリしてるのに。
本を安くする代わりに失ったものが大き過ぎる…ッ!

なお「フランス書院の官能小説の文庫本」は…
驚くほど海外の作家の占める割合が減った記憶があります。

この…1977年頃から1983年頃迄の
「海外の官能小説の狂騒の時期」は…
僕が小学生から高校生にかけての時期とほぼ一致し…
「年齢」と「田舎暮らし」がネックとなり,
大学生となってから
大急ぎで東京の書店で買い漁ったものの
その全てを揃えるコトは叶わなかったのですが…
「同好の士」と言うのは本当にいるもので…
僕と同じ様にフランス書院の海外の作家による官能小説を
コレクションされている方がおられて…
その方から大量の書籍を譲り受けたのです。

「ヤフオク」を介しておりましたので幾許かの金銭の授受は
勿論ありましたが…プレミアが付く事もなく…
中古本として適正な価格で譲っていただいたのです…。

僕の…「欠けていたオタク知識」が補われた…
ずっとずっと探していた「ミッシングリンク(失われた環)」が…
とうとう見つかったんです…。

あのさ。

「僕が相続させていただいたもの」の「値打ち」が分かるのは…
この「同好の士」の方と…この「僕」だけだと思います…。

僕はその…「同好の士」の方から…
「オタクの遺産」を相続したと…譲渡されたと…寄贈されたと考えてます…。

コレこそが「オタクの遺産」…
つまり「物好きの遺産」の最も正しい相続のあり方…
「同好の士への寄贈」なんです。
寄贈の際の金銭の授受は
「寸志」(僅かばかりの贈り物=感謝のしるし)であり…
「世俗的に値打ちの無いもの」の授受は「贈る」しかないんです…。

僕は…「同好の士」の方から…秘蔵のコレクションを…
「僕が生きている間だけ預からせていただいている」
と思ってます…。

「秘蔵のコレクションを生きてる間だけ預からせていただいているだけ」
ですから…僕の死と共に…「秘蔵のコレクション」は…
「次の同好の士」の方に譲渡する絶対の必要と義務があるんです…。

従って…「オタクの遺言」の第3章には…
「『同好の士』へ寄贈すべきコレクションの目録」
が絶対に書かれる必要があり…
第1章及び第2章如きは要するに「付帯事項」であり…
この…第3章こそが「本論」であり…
この遺言を絶対に達成すべく…
僕が生きてる間に…
「秘蔵のコレクション」の相続人を決めておく必要があるんです…。

とは言え…そんな「相続の機会」…
僕の半世紀以上続く人生の中でたった一度しか訪れなかったのに…
僕は…「相続人」をどうやって探せばいいのでしょうか…?
そんな「相続人」…一体銀河系の何処を探せばいるんですか…?

ね…「オタクの遺産相続」は…実に実に実に…「難しい」でしょう…?

僕が「オタクの遺言」を書くなら…
書籍・映像ソフトを
下記の通り目録を作成し分類するだろう…

1.捨て値で投げ売りすべきもの
2.中古品としてそれなりに売れるもの
3.絶版・廃盤でプレミアの付いてるもの
4.有志に寄贈すべきもの

遺族には1~3を幾許かの金に換えて貰い…
有志には…未来を託すのだ。

項番3と4の違いは…
項番3には値段がつけられるが…
項番4は…有志以外には… ただのゴミの山に過ぎないと言う点である。
先ほど挙げた例で言えば
僕はある有志からフランス書院の
海外の作家の作品を100冊以上譲り受けてるが…
コレは…次の有志へと…次の次の有志へと
譲渡すべき 「物好きの遺産」なのだ…。

問題は…この「物好きの遺産」の相続人を探すのが…
「自分と同じ嗜好を持つ物好き」を探すのが…
途方もない困難を伴うと言う点にあるのだ…。
「自分と同じ種類の人間」…。
そんなもの…果たしてこの世に存在するのだろうか…。

「オタクの遺言」の第4章(最終章)は当然…
僕の「物好きの遺産」を相続すべき人間の情報…
即ち「相続人情報」が詳細に記述される必要がありますが…
ソレが最も記述に困難を伴うコトが予想されるのです…。

「継ぐのは誰か」

コレが「オタクの遺産」に於いても
最重要かつ最難関決定事項と言えるのです…。

やはり…オタクと言えども
「仲間」を作るコトは大切で…
「ヒトは独りでは生きられない」
と言う意味も勿論あるが…
「自分の『物好きの遺産』を譲る相手」
と言う意味に於いても
「積み荷を全部燃やしてくれる相手」
と言う意味に於いても
「仲間」は重要なのだ…。

「オタクの遺言」に関するコラムを書いてて思ったのは…
オタクは…自分の得意分野になると死ぬ程饒舌となり…
死ぬ程詳細に語るというコトである…
問題は…誰もが皆が皆…
「ソコまで言えなんて言ってない」
と思ってる点である…。
本当に…酷い酷い酷いオタクで申し訳ない…。

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