杉谷庄吾先生の「映画大好きポンポさん」第1巻レビュー「社会不適合者がいい創作をする。」
漫画本編に関してはpixivで公開されており「映画大好きポンポさん」で
検索すれば無料で閲覧できるので本書を買おうか買うまいかと
悩んでおられる方は閲覧されてから決めても遅くはありません。
僕としては本書の後書き漫画(描き下ろしなのでpixivでは閲覧できません)が興味深かったので「そこのところ」を書きます。
本作品を執筆された杉谷庄吾氏はプロダクション・グッドブックという
アニメ制作会社でデザインや企画用の漫画を描かれておられる方で
本作品は2015年5月,深夜の5分間アニメの企画を作って欲しいという
依頼を受けて立ち上げられたそうです。
しかしながら,その企画は頓挫し本作品のアニメ化が叶わないというのなら
漫画化してやるわとの思いから漫画が描き上げられ
2017年4月にpixivで無料公開されました。
完成した漫画を「怪獣絵師」の異名を持つ開田裕治氏が閲覧され,
ツイッターで紹介されたことにより閲覧数が爆発的に伸び書籍化され
現在アニメ化企画が進行中とのこと。
もともと5分間アニメとして立ち上げられた企画が
結果として地球を一回転して「ふりだし」に戻ったという訳です。
本書が上梓されてから4年。
新型コロナの影響で劇場公開が延期されるものの
2021年6月4日に劇場公開され,既に円盤化されてます。
本書の帯の推薦文も開田氏が書かれ
今やこうして僕のもとに届いたという次第です。
少しばかり本作品の内容にも触れておきましょうか。
本作品の主人公の青年は学生時代に良い思い出がひとつもなく
「友人」と呼べる人間もおらず「スクールカースト」の最下層に
居たことを自覚し
映画を観ている間だけ「人間」に戻ることができたと自認していました。
青年を一目見るなり自分のアシスタントに大抜擢した
映画プロデューサーの「ポンポさん」は抜擢理由を次のように説明します。
「(君のように目に光がなく)社会に居場所のない人間は現実から逃げ
自分の中に自分だけの世界を作る」
「まさに創造的精神活動!」
「心の中に蠢く社会と切り離された精神世界の広さと深さこそが
その人のクリエイターとしての潜在能力の大きさだと私は確信しているの」
「だから私は君のその社会不適合な目に期待しているのよ」
かつてある漫画家が
「俺たち漫画を描いていなけりゃ単なる社会生活不適応者だもんな」
と自嘲気味に発言されていたことが思い起こされます。
一般社会から排除されることを覚悟しなければ
「何か」を創作することはできない…「そこのところ」を包み隠さず
キチンと描いているから本作品は評価されたのだと僕は思うのです。