桜玉吉先生の「しあわせのかたち」レビュー「共感の変質」。
本作品は「ファミコン通信」に掲載されたカラー漫画である。
漫画の内容はテレビゲームのパロディ漫画でファミコン,ディスクシステム,
スーパーファミコン黎明期辺りまでをカバーしている。
勿論テレビゲームの「オチ」をバラしたりはしない。
僕が本作品に魂を鷲掴みにされたのは
「ドラクエ2」のパロディ漫画である。
脳筋なローレシアの王子「おまえ」,
人間の耳と犬の耳を持ったムーンブルクの王女「べるの」,
主にツッコミ担当のサマルトリアの王子「コイツ」。
「ドラクエ2」を遊んだ方なら御存知だろうがこの3人は親戚同士なのだ。
この3人が揃って旅をしているときが僕が1番「しあわせ」であった。
テレビゲームのパロディ漫画で
「旅情」と「詩情」を感じたのは後にも先にもこれきりだ。
いつまでも,いつまでも,この3人の旅が続き,
いつまでも,いつまでも,この「しあわせ」が続くよう願っていた。
…本作品の後半はテレビゲームのパロディ漫画から次第に離れて行き
テレビゲームの絡まない漫画を描くようになった。
桜先生は御自分の年齢…と言うよりも「加齢」に非常に敏感で
「年を取ること」を極度に恐れられ,
加齢に従って,漫画に「恐怖」が盛り込まれていった。
題材は創作漫画,私生活漫画が主流となり
僕の「願い」が聞き届けられることはなかった。
本作品の最終話で星野鉄郎の如くタダで機械の体にしてくれる星を目指して
無限に広がる大宇宙に旅立った本作品の作者である桜玉吉氏。
機械の体になればこれ以上,歳を取る心配はない。
…桜氏の「願い」もまた、聞き届けられることはなかった。
桜氏は「うつ病」となり闘病の模様を漫画化される事となる。
僕もうつ病病みなので
先生が処方された薬の効き目がいちいち分かるのが嫌だった。
昔はゲーマーとして共感し,
今は壊れた精神の持ち主として共感してる次第。