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NHK「魔改造の夜 ワニちゃん水鉄砲 バースデーケーキろうそく消し」レビュー「技術開発の現場にはドラマも名言も涙もなく地道な検証が延々と続くと教えてくれます。」

「魔改造の夜」と言うのは身の回りにある家電や玩具を魔改造して
設定されたお題をクリアし,
出場する3チームがその魔改造の技術の優劣を競うもので,
今回はワニちゃんの形状をした水鉄砲を魔改造して
7.5m先にある巨大なバースデーケーキの円周上に等間隔に据えられた
10本の火の付いたローソクを30秒間で何本消せるか,
その火を消したローソクの本数を競おうと言うのである。
使用していいワニちゃん水鉄砲は3丁。
各ワニちゃんに与えられる水は100㏄。
試技は2回。
ケーキは板製なので幾ら水をかけても勿体なくない。

「魔改造の夜」も10回目を数え
バースデーケーキを用意して10回目の放送を祝おうと言うのである。

♪ハッピーバースデー魔改造♪
♪ハッピーバースデー魔改造♪
♪ハッピーバースデーディア魔改造♪
♪ハッピーバースデー魔改造♪

参加チームは前回に引き続き
T橋技科大,Mブチモーター株式会社,Sズキ株式会社。
参加大学や企業は同じでも面子が総入れ替えとなっている。

オモチャの水鉄砲で7.5m先の的を狙うと
水が霧になって文字通り雲散霧消し
噴霧器で20cm先のローソクを狙っても火は消えない。

つまり水を水のまま7.5m先まで運ぶ工夫が必要となる。

また水は基本的に直進しながら散開するので

1.水をスプリンクラーの様にケーキ全体に撒きローソク10本全て消す。
2.水鉄砲の射線上のローソクを確実に消す。

というふたつの設計思想が考えられ
100点満点であくまでも100点を狙うか
100点満点で確実に60点を狙うかが頭の使い処となるのだ。

余り大きな声では言えないが「魔改造の夜」には
「アタリ回」と「ハズレ回」があると僕は思っている。

ハズレ回と言うのは出場チームが一生懸命頑張っている姿を映し
勝って涙,負けて涙の光景を舐める様に映す「浪花節回」であって
僕はそうした「浪花節」が嫌いだ。

「魔改造の夜」は
技術者の勝つ為の理論の構築,その理論の実践,
なんで現実が机上の計算通りに行かないかの検討,
検討を基にした理論の再構築こそが見所だと僕は思っている。

つまり「魔改造の夜」に涙は要らない。
なんで理屈通りにならないかを悪戦苦闘しながら
検証し解明して行く様を追って行って欲しいのだ。
油汗は流していいが涙は流さなくていい。

今回は「アタリ回」であって
・何で火は水が当たると消えるのか
・火のどの部位に水が当たるのが効果的か
・消防車の放水は何故火を消せるのか
・遠くに水を飛ばすには放物線を描くべきか
・それとも圧縮空気で直進させるべきか
等々の検討の模様が淡々と描かれ「涙」が一滴も流れない。

僕はこういうロジカルな編成が大好きで
「魔改造の夜」の「アタリ回」は
徹底的にロジカルに編成されてるから好きなのだ。

検討と検証の結果,
T橋技科大は放物線方式によるピンポイント消火,
Mブチモーター株式会社は圧縮空気による直進方式による(確実な)部分消火,
Sズキ株式会社はスプリンクラー方式による全体消火を目指す。

2度の試技の結果,Mブチモーター株式会社の圧縮空気による直進方式が
1度目の試技で4本消し,その後その記録は更新されずそのまま優勝する。

1度目の試技の結果を反映して
2度目の試技の結果はより良くなる筈だが
実際はそうはならない事が多い。
技術の分野に於いては「筈」が通用しない事を本番組は教えてくれる。

うまくいった試技が何故うまくいったのか?
そして何故それが再現出来ないのか?
その追究がMブチモーター株式会社を待っている。

今回はドラマチックな展開も名台詞も無いが
技術開発の現場にはドラマも名言も要らず
地道な試行と検証が延々と続く事が描写されているのだ。

10回目の「魔改造の夜」の放送に相応しい
地味でありながら実直な内容と言える。





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