没ネタ祭「大福ちゃん」
大福ちゃんは丸くて可愛い
みなを助ける救世だ
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と、ある時から
僕の心象世界に大福ちゃんという存在がいて
愛らしく尚且つ美味しい
空想上の愛玩動物であったわけなのだが
そも大福ちゃんは何処から帰来したイマジナリイなのか
などと、ペンを片手にひとり
大福ちゃんについて思慕していたら
ある時、
おもむろに我が家の小さな人が
大福ちゃんの話を始めた
大福ちゃんは、
小さき人のご学友が飼う
ハムスターであった
ハムスターの寿命は
2年であるからして
大福ちゃんの寿命も相応に短く
小さき人は
大福ちゃんが死んだことを告げて
物語を締めくくるのであった
僕からすれば期せずして
大福ちゃんとの出合いの物語であったわけであるが
奇しくもその出会いはわずか
数分のうちに
別離にいたったのである
大福ちゃんの甘味は如何なるものであったのか。
(いやハムスターであるから賞味などできなかったのであるが)
僕には既にして知る由もない。
とかく今生はサヨナラばかりの世の中である
未発表作品
当初タイトルと「大福ちゃんは可愛い」という一行のみの作品であった所、その都度の改稿を経て現状に至る。しかし、本作がポエジーなのかエッセイなのか、作者にも判別つきかねる。
ならば猶更、これを読まれた読者諸兄は感想に困る事だろう。何せ日記未満の吐露だ。
そう思うと大福ちゃんを世に放つこともできず、下書きに温存して空想の大福ちゃんと戯れる日々。
文机の端に起居する大福ちゃんと仲睦まじく遊ぶのだ。
それは甘く幸福の日々であったかもしれないが、ただ人目に触れぬ餡子は何処かに哀切が付き纏う。餡子はやはり大衆に愛でられる所に本懐があるのだ。
この度の没ネタ祭りに乗じて餡子を献上候。
皆で餡子をご賞味されたし。
敬具
没ネタ祭「大福ちゃん」ムラサキ