食道楽「肝臓油地獄と切裂き心臓」
聖人君子の諸君らに本日お見世致しますのは世にも残酷な解体ショウ。そして解体後に肉塊を火炙りする炮烙の刑なり。血を欲するは呪術なり。秘術尽くして悪魔に血肉捧げし黒魔術。サバトの狂宴。残酷写真多くして心臓の弱い方、或いはご婦人はご覧になる際は重々ご注意の程あれかし。
という訳で諸兄。
肝臓は好きかね。
肝臓食わねば血の病は平癒せぬ。所が血の病を抱える者ほど肝臓を食わぬ。
肝臓を食わぬ者に肝臓を喰らわせる為に愚庖宰が厨房に立ち候。
是を当世、「くつくぱつど」と宣する也。人生の八苦に不器用の一苦を足して九苦法度。不器用乍ら細工は篤く篤と仕上げは御覧じろ。
見給え諸兄、之、生き胆なり。
新鮮な生き胆は鮮色で角が立っている。亦た張りがある。この肝に親指小の心臓がくっ付いてゐる。
包丁で切り分けるの図。肝臓は二房に分かれる。心臓は腱にて繋がるので指にて捥る。
心臓を包丁にて切り裂く。
心房心室に血溜まりが出来てゐる。後にこれは水洗いしながら指で除く。心房より伸びる大動脈大静脈は好みによって取り除く。
更に腑分けす。
肝臓嫌いの者のため、なるべく肝臓は薄切りに処すべし。
唐土衣を作るため、薄力粉、片栗粉、醤油、塩胡椒、おろし大蒜をボウルに入れる。
mayonnaiseを入れて此れ等を水で溶く。
何故mayonnaiseなど毛唐の産物入れるものか余にも説明に困るが、mayonnaiseを入れると仕上がりの具合が良い。
西洋人のmayonnaiseは卵、油、酢、塩から作る。
然るに唐衣作るのに適量の卵、油が補えるのであろう。
其処に腑分けした肝臓を入れて絡める。
暫く漬け置く。
此処に人参牛蒡を用意して好みに切る。此処では人参は角切り、牛蒡はslicerで剥片に処す。以上を切り裂き心臓と共にして米炊き鍋に入れる。
米炊き鍋は研いだ米、人参牛蒡、心臓を入れて味醂、醤油、出汁、砂糖等を加えて炊く。
分量は適当。諸君らの好みで工夫し給え。
醤油入れる事で炊きあがりに「焦げ」が出来る。飯焦げて風味が増すので醤油は多めが宜しい。
さても油を熱して油地獄。
生き胆を揚げ候。
地獄の中で生き胆が焼けまする。
熱い熱いと喚きまする。
是ぞ肝臓油地獄。
罪業が燃えまする。
肝臓嫌いの人種は生臭さを厭う為、丹念に揚げ候。肝臓を揚げると油の中で爆ぜるので御注意されたし。地獄の釜の蓋など持ちて油の飛散を防ぐべし。
揚がり候。
心臓飯も炊け候。
盛り候。
盛り候。
食肝は血の病快方せし錬金の秘法也。世にあやかしの秘術魔術は多かれど肝の魔術こそ値千金、確かなれ。
唐衣に片栗粉入れる事でザクザクと衣の堅くなりにけり。肝を薄切りする事で肝の腥味和らぎ唐衣の風味絶佳際立ちて肝臓嫌いも食せるものとなりぬる。
所が。
肝臓嫌い共は食わず嫌いも甚だしく、肝臓嫌いを自認する事からようよう箸を付けぬ。肝臓の滋養を認めぬので、人が薦めて箸を付けても一口二口が精々で多量に食さぬ。
仕方なしに吾が箸ばかり肝臓を摘み候。
世人よ肝臓を喰らい給え、モット。
彼奴等は先ず己が頭の頑固を克服するべし。
ソモソモO型の人間多くして炊込飯の心臓にも気付かぬ。O型人間はおおらかにて人の工夫も知らぬまま、謎肉入った炊込飯を完食するもの也。
何の肉を喰らっているのか気にしようぜ。人の気遣いに気付いて候。
今回の魔術。
一、
肝臓心臓を腑分けする。心臓のこあぐらを除く。肝臓は薄切りする。
二、
薄力粉、片栗粉で唐衣を作る。塩胡椒、醤油等で調味。mayonnaiseを入れる。臭みを消すためおろした大蒜、生姜等を入れる。適度に混ぜる。
三、
肝臓を唐衣に絡める。
四、
人参牛蒡を切って心臓と共に炊飯。予め味醂、醤油などで調味する。水加減はやや多めが良い。少ないと炊きあがりに米の芯が残る。
五、
肝臓を油で揚げる。爆ぜるので蓋を手に持ち油鍋に充てるのが良い。油少なくして揚げ焼く時は肝臓裏返す前に火を止める事で不意の爆発を防いで火傷せずに済む。
肝喰らわば、長命得たり。
諸兄にも肝食の恵みのあらんことを。
諸兄らのご長命を祈り候。
今回のハッシュタグ
#写真
#料理
#魔術
#ネムキリスペクトはまだしない
#人生八苦
小説書こうとしてるけれど構想練り始めるとすぐ寝ちゃうので結局一行も進まない。
今までハツ(心臓)は焼いていたが、ハツを焼くのは手間がかかるため炊き込みが楽。ハツは筋肉質故、牡蠣や浅利の炊き込みにも似て炊飯と相性が合う。
ハツの正道は炊き込み飯也と友人にした所、肝なりハツなり評判が良かったので改めて本記事にまとめ候もの也哉。
さてもとりあへず皆様に愛をいのちを健康を。
ムラサキ拝。