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「そつてん。」

 先日、東京学芸大学で行われた卒業制作展「そつてん。」に行ってきました。ここでは、美術科の四年生の卒業制作作品の数々が並んでいました。


 その中でも特に印象に残った作品をいくつか紹介させていただきます。

Metamorphose

 銅でできたシダと気泡のような模様ががキャンバスを囲っているようです。
 何枚ものシダを作るのにたくさんの時間と労力を費やしたのだと思います。シダ一枚一枚の開き方や先端の曲線などがそれぞれ違うことがわかります。
 キャプションにこのような言葉がありました。

生きるものは変化し続ける

この言葉を見て、このキャンバスと額縁は、生(変化)と死(停止)を表しているのではないかと考えました。 銅という物質が酸化し緑青を見に纏い自らの腐食を防いでいます。泡沫は揺れ動き形を如何様にも変化させます。 対して布でできたキャンバス(そしてそこに描かれるであろうモノ)は、完成したら最後、絵として静止したまま額縁に封じ込められるでしょう。
 「生きるものは変化し続ける」
この言葉からそんなことを考えました。


断片的な記憶の景色(一部抜粋)

 この作品は、実際は小さな作品が横に連なっているようなものでした。
 キャンバスに乗せられた色の重なりや変化をみて、一人一人が特定の風景に思いを馳せることができるのかもしれないと思いました。作品群の中には極めて抽象的な作品もあり、そこから具象的な思考を鑑賞者にさせる狙いがあるのではないかと思いました。


 他にも多種多様な展示があり、とても楽しかったです。大学の展覧会というと、閉鎖的なイメージが自分の中でありました。しかし今回の展示では子どもたちの姿も見られ、老若男女様々な方が訪れやすい展覧会になっていると思いました。
会期は2024年3月1日〜3月7日までで、もうすぐ終了してしまいますが、毎年行われているので、皆様もぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

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