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紛れるメール



「父が他界しました。」

いつもと変わらない音と光に揺られて
業務連絡のように届いた。
お遣いを済ませました、のような
今晩はカレーにします、のような。

「追って詳しい日程を連絡します。」

流れ作業のように
雲が流れるように
大切なはずの人が死んだ。


葬式にも通夜にも行かなかった。
行けなかった。
大切なはずの人はとうに燃えて灰になった。
見送れもしなかった。

子どもみたいに屈託のない笑顔ばかりを貼り付けて
触れられない手になった。
聞こえない声になった。


煙たい匂いも よれた服も
怒鳴り声も 眉間の皺も 苦い気持ちも
こうやって簡単にかなしくなった。

憎かったはずで、それでも大切だったと知った。

コウカイなんて、そんな大層なものではきっとないけど。


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