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鼓動の在処


ここに、
私の声を録音したものがある

その声は、
中学卒業の日に 思いを馳せて
大地震の記憶を辿っている


私はこれに時折、
自分自身で聴き入ってみる

目を閉じて、
シラと受け流す日もあれば
瞼をそっと持ち上げて受け止める日もある


ここに、
過去の私のかなしみがある

その声は、
間をおいてゆっくりと喋っている
震えていたりなどもする


私はこれに時折、
相槌を打って聴いてみる

両の眼(まなこ)から、
しとりと零れるものがある
涙とも言う、またかなしみとも言うだろう


私の鼓動は、
ここに動いている

私は都度、
かなしみを知っているかと
確かめる

私はまだ、
震える声と この雫のあたたかさを 憶えている


だから私は、
おそらく今まだ生きている

かなしみを湛(たた)えているから、
生きていると知る

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