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JungとMBTI VI:16Personalitiesはどうなの? の続き


【概要】

結論からいえば本稿は一時的な気の迷いである。MBTIは自身をJungに基づくものと位置付ける一方、16Personalities等派生理論とは違うと主張する。一方16PersonalitiesもMBTIとは違うと主張するが、その動機は謎である。そこで根本に遡り、16PersonalitiesがJungをどう位置付けているか探ったところ、違うとの主張が見られた。但しそれはタイプ論ではない、というものであり、Jungに特化して違う、という主張ではなかった。

【初めに】

昨日の投稿

は慌てて作成した為か、今読み返すと論旨に於いて不明瞭である。そこで目的を改めて述べる。MBTIに似た理論として16Personalitiesがある。MBTIは後発組たる16Perosnalitiesとは違うと主張する。これは学問的成果と事業体制を荒らされたくない為と考えると理解できる。だが16PerosnalitiesもMBTIとは違うといっている。即ち

アルファベットを使ってタイプを表す点が似ているため、混同されることもあるが、日本でMBTIの普及を行う日本MBTI協会もHPなどで違いを説明している。また、イギリスにある「16Personalities」の運営会社も、『ABEMAヒルズ』の取材に対し「この2つは全く異なる」と回答した。

https://times.abema.tv/articles/-/10149505?page=1

なのだが、その動機は不明だ。MBTIを継承発展させた、といえば箔付けになりアピールできるし、先人の業績を明示するのは学問的礼節としても必要な事だからだなのに、何故否認するのか(きちんと引用した上で否定するのは構わない)。その謎を解くのが本稿の目的である。

MBTIはJungのタイプ論に基づいている、つまり

●MBTI=Jung

とも主張する。Jungという大学者の名前を挙げる事で自らの学問的妥当性の一助としたいからであろう。勿論、上述の学問的礼節も大きな理由だ。では16Perosnalitiesはどうなの、という疑問が湧いて来る。

●16Personalities≠MBTI

と主張したいのであれば、根本に遡り

●16Personalities≠Jung

とするのも一案なので、この仮説「16Personalities≠Jung」を念頭に置き、16Personalitiesのページで改めて確認する。

なお綾紫は「MBTI=Jung」に疑問を抱いてる。それは既に解説した。具体的には外向/内向や

内向知覚型I__Jの記述

に非常に大きな違いがある事を指摘した。ここからヒントが得られると期待し、タイトルも敢えてJungとMBTIシリーズの連番としたが、その思惑は外れてしまった。

【16Personalitiesの理論】

掲題の16Personalitiesの理論は

に掲載されている。英文トップページからも邦文トップページからもここに飛ぶので、理論の話は邦訳されていない模様である。以下、関連する部分を引用すると共に、Googleによる翻訳も併記する。

Our approach has its roots in two different philosophies. One dates back to early 20th century and was the brainchild of Carl Gustav Jung, the father of analytical psychology. Jung’s theory of psychological types is perhaps the most influential creation in personality typology, and it has inspired a number of different theories. One of Jung’s key contributions was the development of the concept of Introversion and Extraversion – he theorized that each of us falls into one of these two categories, either focusing on the internal world (Introvert) or the outside world (Extravert). Besides Introversion and Extraversion, Jung coined the concept of so-called cognitive functions, separated into Judging or Perceiving categories. According to Jung, each person prefers one of these cognitive functions and may most naturally rely on it in everyday situations.

当社のアプローチは、2 つの異なる哲学に根ざしています。 1 つは 20 世紀初頭に遡り、分析心理学の父であるカール・グスタフ・ユングの発案によるものです。ユングの心理的タイプに関する理論は、性格類型論においておそらく最も影響力のある創作であり、さまざまな理論に影響を与えています。ユングの重要な貢献の 1 つは、内向性と外向性の概念の開発です。ユングは、私たち一人ひとりが、内なる世界 (内向性) または外の世界 (外向性) に焦点を当てる 2 つのカテゴリのいずれかに分類されるという理論を立てました。内向性と外向性に加えて、ユングは、判断カテゴリと知覚カテゴリに分けられた、いわゆる認知機能の概念を作り出しました。ユングによると、人はそれぞれこれらの認知機能のいずれかを好み、日常の状況で最も自然にそれに頼ることができるとのことです。 

ここからJungの名前が見える。Jungの業績として外向/内向や認知機能を挙げているが、逆にいえば言及に留まっている。続ける。

In the 1920s, Jung’s theory was noticed by Katharine Cook Briggs, who later co-authored a personality indicator still used today, the Myers-Briggs Type Indicator® (MBTI®). Briggs was a teacher with an avid interest in personality typing, having developed her own type theory before learning of Jung’s writings. Together with her daughter, Isabel Briggs Myers, they developed a convenient way to describe the order of each person’s Jungian preferences – this is how four-letter acronyms were born. Of course, this is just a very simplified description of the Myers-Briggs theory. Readers interested in learning more should read Gifts Differing: Understanding Personality Type by Isabel Briggs Myers. As we define personality traits and types differently in our model, we will not go deeper into Jungian concepts or related theories in this article.

1920 年代、ユングの理論はキャサリン・クック・ブリッグスによって注目され、彼女は後に、今日でも使用されている性格指標であるマイヤーズ・ブリッグス タイプ指標 (MBTI®) の共同著者となりました。ブリッグスは性格分類に強い関心を持つ教師で、ユングの著作を知る前から独自のタイプ理論を開発していました。娘のイザベル・ブリッグス・マイヤーズとともに、2人は各人のユングの好みの順序を説明する便利な方法を開発しました。こうして4文字の頭字語が生まれました。もちろん、これはマイヤーズ・ブリッグス理論を非常に簡略化した説明にすぎません。さらに詳しく知りたい読者は、イザベル・ブリッグス・マイヤーズ著の「Gifts Differing: Understanding Personality Type」をお読みください。私たちのモデルでは性格特性とタイプを異なる方法で定義しているため、この記事ではユングの概念や関連理論について深く掘り下げません。

ここでMBTIの発案者I. B. Myersの名前が登場する。しかし、

●私たちのモデルでは性格特性とタイプを異なる方法で定義しているため、この記事ではユングの概念や関連理論について深く掘り下げません。

に於ける「異なる方法で定義」、どこまで、即ち「ユングの概念や関連理論について深く掘り下げません」という表現が続く事からは、

●16Personalities≠Jung

と解釈できるのに対し、Myersに触れる中で出て来た事から

●16Personalities≠Jung 且つ 16Personalities≠MBTI

とも読み取れるのである。続ける。

Due to its simplicity and ease of use, the four-letter naming model has been embraced by a number of diverse theories and approaches over the last few decades, including frameworks such as Socionics, Keirsey Temperament Sorter, Linda Berens’ Interaction Styles, and many others. While the acronyms used by these theories may be identical or very similar, however, their meanings do not always overlap. One of the reasons behind such a lengthy introduction is that we want to make it clear that there is no single definition assigned to these type acronyms – each theory defines them in their own way and it is entirely possible that if you meet five people who all say “I am an INFJ”, their definitions of what INFJ means are going to differ.

4文字命名モデルはシンプルで使いやすいため、過去数十年間にソシオニクス、ケアシー気質分類、リンダ・ベレンズのインタラクションスタイルなどのフレームワークを含むさまざまな理論やアプローチに採用されてきました。これらの理論で使用される頭字語は同一または非常に類似している場合もありますが、意味が重複するとは限りません。このように長々と紹介した理由の 1 つは、これらのタイプの頭字語に単一の定義が割り当てられていないことを明確にしたいからです。各理論は独自の方法でそれらを定義しており、「私は INFJ です」と言う 5 人の人に会ったとしても、INFJ の意味の定義が異なる可能性は十分にあります。

ここでSocionicsやKeirsey、Linda Berensの名前が登場するが、Jungと同様、深入りはしていない。淡々としている。そして同じタイプ名でも意味は違う、と結んでいる。綾紫もこの点は感じているが、当時に、Jungとの大きな違いに比べればもはや許容範囲の誤差、とも思っている。結局、ここまでで16Personalitiesがいいたかったのは、「人によって異なる定義を採用している(のでタイプ論には限界がある)」だろうか。続ける。

Regardless of its structure, any type-based theory will struggle to describe or characterize people whose scores lie near the dividing line. A different way to look at personalities is through the lens of a trait-based rather than a type-based model. What do we mean by that? Instead of creating an arbitrary number of categories and attempting to fit people within them, a trait-based model simply studies the degree to which people exhibit certain traits. You may have heard the term Ambivert, which is a perfect example in this case. Ambiversion means that someone falls in the middle of the Introversion-Extraversion scale, being neither too outgoing nor too withdrawn. Trait-based theories would simply say that an Ambivert is moderately Extraverted or moderately Introverted and leave it at that, without assigning a personality type. A trait-based approach makes it easier to reliably measure correlations between personality traits and other characteristics – for example, political attitudes. This is why trait-based approaches dominate psychometric research, but that’s more or less the only area where these approaches are dominant. Because they don’t offer types or categorizations, trait-based theories don’t translate as well as type-based theories into specific recommendations and takeaways. Assigned categories such as Extravert or Introvert may be limiting, but they allow us to conceptualize human personality and create theories about why we do what we do – something that a more scientifically reliable but colorless statement, such as you are 37% Extraverted, simply cannot do.

その構造に関係なく、タイプベースの理論では、スコアが境界線に近い人を説明または特徴付けるのに苦労します。性格を見る別の方法は、タイプベースではなく特性ベースのレンズを通して見ることです。これはどういう意味でしょうか。任意の数のカテゴリを作成し、人々をそれらに当てはめようとするのではなく、特性ベースのモデルでは、人々が特定の特性を示す程度を研究するだけです。「両向型」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これはこの場合の完璧な例です。両向性とは、内向性と外向性の尺度の中間に位置する人、つまり外向的すぎることも内向的すぎることもない人のことです。特性ベースの理論では、両向性は中程度に外向的または中程度に内向的であると述べ、性格タイプを割り当てずにそのままにしておきます。特性ベースのアプローチにより、性格特性と他の特性(たとえば、政治的態度)との相関関係を信頼性を持って測定しやすくなります。これが、特性ベースのアプローチが心理測定研究で主流となっている理由ですが、このアプローチが支配的なのは、ほぼこの分野だけです。特性ベースの理論はタイプや分類を提供しないため、タイプベースの理論ほど具体的な推奨事項や要点にうまく変換できません。外向性や内向性などの割り当てられたカテゴリは制限があるかもしれませんが、概念化を可能にします。

一転、タイプ論と特性論の相違点の解説が現れる。心理学者はタイプ論と特性論の違いを強調したがる。しかし素人たる綾紫は同意しない。タイプ論は特性論を簡単な説明のために2値化したもの、逆に特性論はタイプ論を実務に落とし込んだものであり、対立的というより相補的だからだ。EysenkやBig Fiveのような特性論に於いてもJungの外向/内向の概念は一応、採用されているが、それはMBTIが行った恣意的なつまみ食いと似たり寄ったりである。そうした点に頬かむりして、タイプ論と特性論の違いを云々するのは頭脳の無駄だ。

With our NERIS® model, we’ve combined the best of both worlds. We use the acronym format introduced by Myers-Briggs for its simplicity and convenience, with an extra letter to accommodate five rather than four scales. However, unlike Myers-Briggs or other theories based on the Jungian model, we have not incorporated Jungian concepts such as cognitive functions, or their prioritization. Jungian concepts are very difficult to measure and validate scientifically, so we’ve instead chosen to rework and rebalance the dimensions of personality called the Big Five personality traits, a model that dominates modern psychological and social research. Our personality types are based on five independent spectrums, with all letters in the type code (e.g. INFJ-A) referring to one of the two sides of the corresponding spectrum. You can see where you fall on each scale by completing our free personality assessment, NERIS Type Explorer®. This approach has allowed us to achieve high test accuracy while also retaining the ability to define and describe distinct personality types.

当社のNERIS®モデルでは、両方の長所を組み合わせました。当社は、シンプルさと利便性のためにMyers-Briggsが導入した頭字語形式を使用し、4つのスケールではなく5つのスケールに対応するために1文字追加しています。ただし、Myers-Briggsやユング派モデルに基づく他の理論とは異なり、認知機能やその優先順位などのユング派の概念は取り入れていません。ユング派の概念は科学的に測定および検証するのが非常に難しいため、代わりに、現代の心理学および社会学の研究で主流となっているモデルであるビッグファイブ性格特性と呼ばれる性格の次元を再考し、再調整することを選択しました。当社の性格タイプは5つの独立したスペクトルに基づいており、タイプコードのすべての文字(例:INFJ-A)は、対応するスペクトルの2つの側面のいずれかを指します。当社の無料の性格評価であるNERIS Type Explorer®を完了すると、各スケールのどこに当てはまるかを確認できます。このアプローチにより、高いテスト精度を達成しながら、明確な性格タイプを定義および説明する機能も維持できました。

ここでやっと16Personalitiesの出自が明確になる。BigFiveだ。

●現代の心理学および社会学の研究で主流となっているモデルであるビッグファイブ性格特性と呼ばれる性格の次元を再考し、再調整することを選択しました。

と明確に述べている。その一方で

●Myers-Briggsやユング派モデルに基づく他の理論とは異なり、認知機能やその優先順位などのユング派の概念は取り入れていません。

とあるように根本から違う、とも述べている。だがこの短い文章に「Jung=MBTI」と見做している様子も垣間見えている。にも関わらずしばしば混同される理由は

●シンプルさと利便性のためにMyers-Briggsが導入した頭字語形式を使用し、4つのスケールではなく5つのスケールに対応するために1文字追加しています。

とあるように、便宜的にタイプ論の形式を流用したからだ。

但し、この話はここで解決ではない。BigFiveとMBTIには学問的にも相関がある事が知られている。実際、下のgoogle検索

でも、学術記事専用のリンクが改めて出現する。であれば完全に

●16Personalities=MBTI

ではなくとも

●16Personalities≒MBTI

程度の主張はできる筈である。違うとしても出自として違ってい、が正解で、何が何でも違うと主張するのは違う、と綾紫は感じる次第である。

で解説したように。

【結論】

何故、特に16Personalities側の主張も

●16Personalities≠MBTI

なのか理由を探る為

●16Personalities≠Jung

という仮説を検証した。その結果判明した事:16Personalitiesの原点はBigFiveであり、Jungやそこから産まれたとされるMBTI等のタイプ論は分かり易い説明の為に便宜的に採用されているに過ぎない。即ち上記仮説は

●16Personalities≠タイプ論

という16Personalitiesの主張の一部としてそうだ、といえる程度であり、
直接の理由ではない。間違いではないが、何とも歯切れの悪い結論だった。

なおこの後、16Personalitiesの理論ページでは信頼性・妥当性の検証や外向/内向次元の解説等が長々と続くし、Keirseyとの類似性も強く感じたが、本稿では触れない。今日はここまで。



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