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MBTI:判断と知覚が分からない II ~決断力は判断型の特徴か?~

今回の話題は判断と知覚だ。MBTIに於いて感覚·直観·思考·感情は"機能"だ。これに対し外向·内向·判断·知覚は"態度"、即ち機能が如何に使われるか、を示す概念だ。これまで触れたかもしれないが、態度の指標としての"判断"とは思考か感情かを主に外向けに使うこと、"知覚"とは感覚か直観かを外向けに使うことである。従って判断的態度が習性化している者は知覚的にはなかなか振舞えない。逆も然り。判断·知覚に関しMyers[1]は、「判断型は人生を意思と決断の世界と信じているのに対し、知覚型は人生を経験し理解すべきものと見做す···」と説明しているが、これが綾紫には納得できないのだ。その理由を以下に示す。

Myersは判断型と知覚型の特徴をまとめているが、その一部を抜粋すると以下のようである。先ず判断型から。

  • 決断力に勝る。

  • 計画、規範に従って生き、···その場の状況をこれに合わせるように変える。

  • 不必要、或いは望ましくない経験から自分を守る。

而るに、知覚型はこうだ。

  • 好奇心に勝る。

  • その場の状況に従って生き、偶然や予期しないことにもたやすく適応できる。

  • 経験的であり、···いつも新しい経験の中に飛び込んで行く。

本当はもっと多くの特徴が対比されているが、今回の目的にはこの程度で充分だ。

以上がMBTIに於ける正規の考え方であるが、ここから綾紫の見解を述べる。上記によれば、判断型は決断力に勝る。と同時に、新しい経験に飛び込むよりもそれが値するか否か、事前に吟味したがるようである。ここが矛盾点だ。即ち、決断力、少なくとも綾紫の理解する決断力は度胸や胆力、乃至は"risk-taking attitude"のようなものであるため、凡そ「自分を守る」という言葉で形容される人間は、決断力のある人間ではないのだ。無論、無反省·無思慮故の新しさ志向が凝り固まった前例となっている状況下で慎重な側の決定をするのは勇気が要ることだから、そういう場合の「守る」はまさに決断力のある人間にふさわしい行為だ。しかしそういった特別な状況がない限り、決断力のない者が計画、規範を重視することで望ましくない経験から自分を守り、決断力のある者が新しい経験に飛び込んで容易に適応する、と解釈するのが自然だ。

MBTIで現れた概念を独自に発展させているKeirsey[2]は簡単な心理テストを掲載しており、その項目の一部だが、判断型は

  • 即断する

  • 慎重派

  • 慎重に選ぶ

知覚型は

  • 時間が掛かる

  • 奔放

  • 衝動的に選ぶ

となっている。上記の表で"慎重"という言葉が判断型の側に現れており、"即断"という言葉と矛盾しているように見える。だが実際、これは決して引用ミスではなく、事実だから仕方がない。これだけでなく、KeirseyはSP型(感覚+知覚)とSJ型(感覚+判断)を比較しながら、SP型について

  • リハーサルなしの行動

  • 危機に直面すると活気付く

  • 勇気と忍耐力

  • 楽天主義

  • 瞬時の行動を要求する仕事

  • 瞬時に即決できる上陸指揮官

等の言葉を、SJ型については

  • 従順性

  • 備えあれば憂いなし

  • Murphyの法則

  • 社会集団に属する

  • 伝統を重視

  • 役人への憧れ

  • 遺産を守る

  • 安定剤

  • 心配し過ぎて失敗

といった言葉をそれぞれ当て嵌めている。この比較は飽くまでSP型とSJ型、即ち感覚を直観よりも重視する人間に限った話だ。だからNP型とNJ型もそうだとは限らないが、もし一般化出来るならば、瞬時に即決出来る軍人P型と心配し過ぎて失敗するJ型のどちらに「意思と決断」を多く感じるか、明白であろう。それからKeirseyはSJ型に対し、

  • 常識のもと決断力を発揮

とも言っているが、これは綾紫にとっては決断力の欠如の婉曲的な表現に思える。

従って、判断型と知覚型の違いを決断力に求めるのは矛盾を来す、というのが綾紫筆者の結論だ。決断力から思い出すのは、寧ろ直観である。筆者は直観(とそのライバルである感覚)に関し納得していない。それについては

で述べたし、これからも続ける予定だが、以下、Myersの言葉をそのまま引用する。

  • 直観の現れ方に共通するのはスキージャンプのような飛躍である。

  • 思想や行動の先駆者·改革者には直観型が多い。

  • 植民地時代の初期のアメリカでは、新世界の可能性は感覚的人間よりも直観的人間を強く惹きつけ、潜在的な選択要因が増した。

そうするとここで「直観」「決断力」に置き換えて、

  • 決断力の現れ方に共通するのはスキージャンプのような飛躍である。

  • 思想や行動の先駆者·改革者には決断力のある者が多い。

  • 植民地時代の初期のアメリカでは、新世界の可能性は優柔不断な者よりも決断力のある者を強く惹きつけ、潜在的な選択要因が増した。

としても不自然ではない。

よって判断型と知覚型の違いについてMyersが述べている様に「判断型は人生を意思と決断の世界と信じているのに対し、知覚型は人生を経験し理解すべきものと見做す···」と捉えると、綾紫は混乱する。判断と知覚を理解する基準として、「決断力」は外すべきだ。実際noteでは「判断型=決断力」とは見做していない場合が多いようだ。

↓「決断力」という言葉を用いない例。

↓「決断力」という言葉こそ用いているが、そこだけ浮いて見える例。

↓こちらは知覚型に関する記述だが参考になる。後で考察に加えるかも。

でも何故、Myersは判断型=決断力、と位置付けたのか。蒸し返しだが、Myersの原書を引用する。

Judging types, especially those who prefer thinking, tend to see the power to decide as an enjoyable feature of a job. Perceptive types, especially those who prefer feeling, often find routine decisions a burden and would rather see their way to a solution than deliver a crisp choice between alternatives.

Myers, Isabel Briggs; Myers, Peter B.. Gifts Differing: Understanding Personality Type - The original book behind the Myers-Briggs Type Indicator (MBTI) test (English Edition) (p.209). John Murray Press. Kindle 版.

ここだけ見ると、綾紫は判断型=投資家、特に株価の短期的な変動だけで儲けるタイプの投資家を連想してしまうし、逆に知覚型がもし株をやれば、経営に口出ししそうである。謎は続く。今日はここまで。

[1]I.B.Myers著、大沢武志·木原武一訳、人間のタイプと適性、リクルート、1982。MBTIの原典。
[2]D.Keirsey·M.Bates著、沢田京子·叶谷文秀訳、人間x人間 セルフヘルプ術、小学館プロダクション、2001。MBTIの外典。抄訳。原書は内容が大きく改定された第2版に既になっている。

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