MBTI:判断と知覚が分からない ~思考≒知覚 & 感情≒判断?~
【概要】
MBTIに於ける思考と知覚、感情と判断に共通性があるかも、というのが本稿の主張である。
【詳細】
綾紫は自身のタイプを考えるに際し、E/IとT/Fは分かり易く、S/NとJ/Pはそうでない、と述べた。
だがその根拠となったイブリースの記事
のT/Fの話題に、そうとばかりもいえない部分を見つけた。というか以前から気になっていたので改めてここに整理する。早速だがT/Fについて
●T型に死ぬ後ほど嫌いな人間をどうしたいかと聞くと、必ずと言っていいほど「殺す」という言葉が返ってくる。物理的に相手に危害を加えられる最大限の行為だからだろう。ところがF型に聞いてみると、そうではない事が多い。
という記述がある。ここだけを見ると、F型は優しいので直ちに殺す事を躊躇している様に見える。だがそうでもなさそうだ。引用を続ける。
●むしろ「生かしておいて苦しめたい」という返答が多いのだ。
おや、何だろう。
●昔、エルフェンリートというマンガがあった。
綾紫は漫画本・雑誌を読まない。TVも見ないのでアニメも見る機会を有しない。例外は東方2次創作動画、霊夢や魔理沙が活躍するやつだけであるから、「エルフェンリート」と聞いてもサッパリだ。
●主人公のルーシーは自分の親友を殺した調査機関の蔵間という男を心底憎んでいた。ルーシーは特殊能力を持っており、近づいた人間を簡単に殺すことができるのだが、彼女は蔵間だけは絶対に殺さない。ルーシーの目的は蔵間の周囲の人間を殺していって蔵間を不幸にすることだからだ。この発想は非常にF型らしいと言える。これがT型だったら相手が不幸になる前に「お前はもう死んでいる」で終わりである。
「エルフェンリート」を知らないから、主人公ルーシーが蔵馬を憎んだ経緯も知らないし、それ以外のシーンで現れるルーシーの性格も知らない。ただ、書いてある事だけから想像すると、心底憎んでいる蔵馬を殺さない≒食事の際、一番の好物を最後に食べるタイプに見える。少なくとも綾紫には。そしてこの傾向、満足遅延耐性に似ている。
抜粋すると、マシュマロ実験とは
●実験者は、子供に「15分間待てば2つのマシュマロがもらえるが、すぐに1つを食べたければそれでもいい」と伝えます。
●子供たちは部屋で一人で待つことになり、誘惑に耐えられるかどうかが観察されます。
●待つことができた子供(遅延報酬を選んだ子供)は、すぐにマシュマロを食べた子供に比べて、将来的に学業成績が優れていたり、社会的に成功していたりする傾向があることが、後続の研究で示されました。
のように行われな実験であり、眼前の誘惑を避け、マシュマロをすぐに食べる事を我慢できた子供、即ち"満足遅延耐性"の高い子供は後に学力や社会的成功でも優位に立った、とされている。しかしこれに対しては単なる自制心とは違う要素が作用しているという批判もある。
その上、満足遅延耐性の理論的側面は仮に妥当だったとしても、社会的成功に関しては意外と万能でない。MBTIに於けるESTPは
●短期間で結果を出す、綱渡りでもいいのでなんとかする、受注は取った後は知らん、というスタンスは営業職としては正解だからだ。
●営業職に長期的見通し・再現性など不要だ。強引な営業がたたって長期的目線では損失になったとしても[後略]。
という満足遅延耐性とは逆向きの特性からサラリーマンに高い適性を有するとされている。もっといえば企業、いや公共体でも手元資金の確保は何にも増して重要であり、それは明日の1000万よりも今日の100万を手に入れる、またもや満足遅延耐性とは逆向きの行動である。それを怠った成れの果てが黒字倒産である。その逆で意外と大過なくどうにかやって行けているのが、GDP比で膨大な借金を抱えながらも選挙の時だけ国民に甘い政策を垂れるどこかの国の政府
である(心の声:満足遅延耐性の逆の逆の逆・・・「遅延」「耐性」にも否定する意味合いが含まれるのであぁ 面倒)。
横道に逸れたが、満足遅延耐性は是認するならば、MBTIのJ/P特性のJに近い。MBTIの考案者Myers[1]によれば判断型は、
●Sustained effort
Having once decided to do a thing, the judging types continue to do it. This application of willpower results in impressive accomplishments. The tortoise in the race was certainly a judging type. The hare, because he liked to operate in tremendous spurts, was probably an extraverted intuitive but lacked adequate judgment.
とあってイソップ童話の亀のようにコツコツ努力する点に優れている。またこれに関連して
●Acceptance of routine
Acceptance of routine is put last because any marked development of intuition is apt to cancel it out, but judging types with sensing seem able to take routine more philosophically than any of the other types.
のように、(知覚機能がSという条件付きながら)ルーチンワークに適応できるとされており、ただマシュマロを我慢するだけの無為なタスクにも耐えられる事を示唆している。このような差はblue
の解説記事ではよりはっきりと著されれており、
●J型は報酬に対する誘因性が低い性格と思われる。SJ型はルールに基づく「秩序維持」を好むために好奇心は抑制され、NJ型はビジョンに基づく「目的達成」を優先するため目先の刺激にする感度が低く、ゆえに一定の耐性を持つ。
●P型は報酬に対する誘因性が高い性格と思われる。SP型は五感を刺激するものに対して、NP型は好奇心を惹起するものを嗜好するところがあるようで、言い換えれば報酬に対する自制が効かず、耐性がない性格ともいえる。ネコにとってのマタタビみたいな感じだろうか。
となっている。ここだけに着目するとNP型は好奇心にさえ訴えなければ誘因性は低そうなのだが。
ここまで、満足遅延耐性を軸として思考と知覚、感情と判断に共通性がありそうな事を示したが、実際そうだろうか。ここでKeirseyの登場[2]である。KeirseyがどこまでMBTIに近いか疑義はあるだろうが、JungとMBTIの違いに比べれば取るに足らない事を以前、指摘した。
Keirseyの考え方に基づき4つの特性E/I・S/N・T/F・J/Pから16タイプに至る経路はMBTIとは異なっており、S/Nから出発する。
A C
B O
S N
T N----S C
R R
A E
C T
T E
Sは具体的、Nは抽象的である。次はKeirseyが何故そうしたのか分かり難い点であるが、
COOPERATIVE
|
|
A | C
B NF|SJ O
S | N
T ---+--- C
R | R
A NT|SP E
C | T
T | E
|
UTILITARIAN
のようにS型に対してはP=Utilitarian・J=Cooparative、N型に対してはT=Utilitarian・F=Cooparativeという、ちょっと捻じれた基準でそれぞれを2分割する。ここまでで思考と知覚にはUtilitarian、感情と判断にはCooparativeという共通性がある。Cooparative=協力的、と直訳して良いのなら、「他者から命じられた」場合に限れば、満足の遅延にも耐えられる、と考えて矛盾は生じない。MyersもINTJとINFJの比較に限った話だが、
●In an academic setting, INFJs may be even better, probably because feeling is more eager to meet a teacher’s demands, whereas thinking is likely to criticize the way a course is conducted and refuse to bother with items it considers irrelevant.
との指摘を行っていて、教育を受ける立場であればF型が他人から言われた事には従うので優秀になり得る様子を示している。
因みに本稿では余談になるが、Keirseyは更にS型に対してはP=Informative・J=Directive、N型に対してはF=Informative・T=Directiveというまたもや捻じれた基準を加え、
DIRECTIVE
|
|
A | C
B NFJ|STJ O
S NTJ|STP N
T ---+--- C
R NFP|SFJ R
A NTP|SFP E
C | T
T | E
|
INFORMATIVE
のように4つずつに分割する。ここまでで8タイプが存在し、E/Iを加えればやっと16タイプに到達する。
では満足遅延耐性を度外視すれば、思考と知覚、感情と判断に共通性は消えるのだろうか。そんな事はない。以前、引用したイブリースの記事
に再登板願うが、そこには
●J型が規範を相手に押し付ける時は規範の意図するところを他人に説明できないことがある。J型が規範を押し付ける時は不機嫌な顔をしながら「ルールだろ!」と怒っている印象で、理由を聞いても「ルールだから」以外にうまく説明できないことがある。
との記述があった。綾紫はこれを、順序立った論証よりも当座の用件に間に合う事を優先する外向的判断の所産、と見做したが、別の個所では
に於いて
●感情と直観・・・主観的機能
主観的機能は曖昧で、突然、生ずるが、それは誰にも分からないし、本人にも制御できない。From nowhereだ。
とも述べた。J型の規範を他人に説明できない所と綾紫が指摘した感情のfrom nowhere、似ている。理由のない結論ほど強いものはない。精神の永久機関だからだ。
以上、満足できる説明ではないかもしれないが、ともかく、思考と知覚、感情と判断に共通性がある「かも」という所には何とか辿り着けたのではないかと思う。
今日はここまで。
[1]Myers, Isabel Briggs; Myers, Peter B.. Gifts Differing: Understanding Personality Type - The original book behind the Myers-Briggs Type Indicator (MBTI) test (English Edition) . John Murray Press. Kindle 版.
[2]Keirsey, David. Please Understand Me II (English Edition) (p.47). Prometheus Nemesis Book Company. Kindle 版.
追伸:中心揃えで崩れたアスキーアート
COOPERATIVE
|
|
A | C
B NF|SJ O
S | N
T ---+--- C
R | R
A NT|SP E
C | T
T | E
|
UTILITARIAN
終端が空白でないなら崩れない模様
+-+-----------+-----------+
| | T | F |
+-+-----------+-----------+
|J| Directive |Cooperative|
+-+-----------+-----------+
|P|Utilitarian|Informative|
+-+-----------+-----------+