MBTI:判断と知覚が分からない III ~判断/知覚型とは逆の機能~
今回の話題も判断と知覚だ。noteデビュー初期、J/P特性、即ち判断型と知覚型の性格の記述に矛盾があることを指摘した。
上のように既に述べた事の蒸し返しでもあるが、今回、根拠を挙げつつ、その矛盾に関する仮説を再確認しよう。そこで先ず、Myers[1]やKeirsey[2]による判断型と知覚型の性格傾向を大まかにまとめてみると下表のようになる。語句は要約している。
左が判断型・右が知覚型だが、時間が掛かる要素が判断型にも(慎重・用意周到・厳格)知覚型にも(優柔不断)にも現われており、矛盾してると思われることは以前指摘した。次に、
のように群に分けてみよう。第0群"決断力 vs 好奇心"は綾紫が匙を投げた項目、第1群は"判断型=時間が掛かる"と見做せる項目、第2群はは"知覚型=時間が掛かる"と見做せる項目である。
そうすると、第1群に於いては、判断型が手間を惜しまず厳密な判断機能を行使している様子が明らかである。即ち厳格、用意周到である。そして判断機能の行使は時間も精神力も要するから何度も可能なことではなく、よって慎重で計画を重んじ、一度判断機能で処理した事物は何度も再処理すると疲れるので、新しい物事を開始するよりも既に進行中の物事を1つずつ片付けようとする。知覚型は自ら考えるというよりも寧ろ印象を受け取ることを主眼とする知覚機能を使うから、外界に対して即座に反応し続けることに疲れない。よって適応力や寛容さ、衝動性、新しいことを気軽に始める傾向など、速さと、その代償としての考えの少なさとして理解できる様々な性質を示す。
第2群はどうか。たった今、時間も精神力も要する判断機能を行使すると述べたばかりの判断型の側に速さを、速いが考えが少ないと見做した知覚型の側に遅さを思わせる語句が並んでいる。さあて、困った。
ここで判断型と知覚型の定義を思い出そう。外界に対して判断型は得意な側の判断機能(思考か感情)を、知覚型は得意な側の知覚機能(感覚か直観)を行使する。しかしそれは外界に限定した話であって、内界に対して判断型・知覚型は知覚機能・判断機能を優先的に行使するとされている。特に内向型にあっては内界で行使される機能が支配機能である為、IJタイプの得意な機能は実は知覚、IPタイプの得意な機能は判断であることを忘れてはならない。従って知覚型も判断機能を行使する場合があり、しかもその場合、判断機能を内向的な様式で行使する。そうすると外向的様式に於いてさえ厳格・慎重・用意周到などと形容される判断機能が内向的様式で働くならば、完全・正確を期す側面が更に強調されるが外界を余り意識しないから時間を長々と費やすことになる。外向的な判断機能は外向的な知覚機能に比べれば厳格・慎重な機能であるが、それでも外界に対処する手段の1つである限り、何処かに飛躍や曖昧さやいい加減さを宿している。内向的な判断機能はそれが許せず徹底して緻密な判断を下そうとするため、却ってその場その場では役立たなくなってしまう。従って、知覚型を優柔不断とする の部分は判断型の外向的判断と知覚型の内向的判断との違いを時間の長短の視点で見た結果、と解釈できる。
Myersは上の表の項目の他に判断型の特徴として持続力を挙げ、更にSJ型に限った話だが決まりきった仕事を嫌がらない、とも述べている。これも本来おかしな話で、判断型が判断したがるならば常に判断の対象を求め続けざるを得ず、そういう状況では持続力を発揮する余地はないし、持続している最中には判断は行使されないから、退屈を感じることになる。上で、判断機能の行使は時間も精神力も要すると述べたが、それでも判断機能が全く要求されない状況を作ることを判断型が得意とする、というのは矛盾だ。
これも内向的側面、即ち判断型にあっては知覚機能の特徴が現われたと考えれば矛盾しない。知覚機能は現われる事物を受け取るという意味で判断よりも気楽な機能であるから、内向的様式に於いては時のない世界で変化の少ない対象をじっくり味わう側面が現われる。そしてまさに「味わう」という表現がぴったりで、事物をシャープに定義したり解釈したり、という要素は少ない。従って半ば無意識に決まりきった作業をこなすのは、内向的知覚を持った者にとっては簡単なことではなかろうか。これがひどくなると「○○中毒」と称される様相を呈する。しかし外からの観察者にとってこの半無意識状態は、恰も意志力に優れるが故の持続力に見える。MBTIに於いて源流に位置するJung[3]は内向感覚型について
と述べている。
より分かり易い例として昨日紹介したnoteブログも挙げよう。
こちらではENFP-Tと称する方が知覚型であるご自身の特徴として
といった傾向を挙げているが、綾紫流に並べ直すと、
となる。第1a群は巷間でいわれている知覚型の速さを感じさせる特徴、第1b群も知覚型寄りだが、判断型の性質が極端になった場合現れないとも限らない速さとは逆の特徴、第2群は寧ろ判断型寄りとされる特徴である。これに「第一印象」「仲良くなってから言われること」を重ね合わせると、
となり結果は明らか、判断型寄りの第2群の特徴は全て「仲良くなってから」やっと現れている。第1b群の遅刻魔も、完全主義の副作用かもしれない。とするとこれこそ、知覚型の人も判断機能を有するが、内向的な作用をするため外からは見え難い(でもいつかは透けて見える)、というMBTIの解釈と符合する。
以上、判断型と知覚型に於いて逆の側面、即ち知覚機能と判断機能とが心理テストなど特徴の記述で現われている場合もある、と解釈すれば、一見矛盾する傾向を説明出来ることを示した。これが筆者の浅学非才の結果でなければ幸いである。
[1]I.B.Myers著、大沢武志・木原武一訳、人間のタイプと適性、リクルート、1982。MBTIの原典。
[2]D.Keirsey・M.Bates著、沢田京子・叶谷文秀訳、人間x人間 セルフヘルプ術、小学館プロダクション、2001。MBTIの外典。抄訳。原書は内容が大きく改定された第2版に既になっている。
[3]C.G.Jung著、林道義訳、タイプ論、みすず書房、1987。"Psychologische Typen"の邦訳は他にもあるが、全内容を1冊に収めたのはこれだけであるため、筆者は専らこれを引用している。
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