ん?どうして?
家内はお喋りだ。
そして、しゃべりながら無造作に手荷物を渡すんだ。
そう、これもまた結婚前に判明した彼女の面白い癖なんだな。
二人で買い物や食事などで外出した時、いわゆるデート?をしている時に、例によって例の如く天気の話しやら夕べ食べた夕食の話しや友人Aの話し、歩いていて目についた花の話しやすれ違った散歩中の犬の話し等々と取っ散らかった話しをガンガンペラペラと話し捲りながら歩いていると、
自分で持っているバッグを不意に目の前に差し出すんだ。
なにせ、まだ付き合いの浅い時期だった俺は、
彼女が何か、例えば着ている服を直したいとか、髪型を整えたいとか靴紐を結び直したいとか、両手を使わなければならない何かをしたいのかと思って、差し出されたバッグは極々当たり前に受け取ってしまう。
バッグを差し出した当の本人は、差し出した理由や何をしたいのか等の説明をする事なく、相変わらず美味しかったラーメンのスープの話しや箸の持ち方の話しをしながらごく自然にバッグを俺に差し出すんだ。
いや、一緒に歩いている彼女が自分で持っているバッグを、「はい」とばかりに差し出させば同然の如くに受け取る。
至って当たり前で自然な振る舞い。
だって、いわゆるデート中の自分の彼女なんだから、
バッグを差し出されれば当たり前に受け取るじゃん。
で、その後に彼女が何か次のリアクションを起こすのかと思いきや、
何もしない。
「ちょっと持ってて。」とかの言葉もなく、その行動に着いての説明は全くなく、相変わらず色んな話しを楽しそうに話し続けながら歩き出してしまう。
ん?
あれ?
なに?なに?
はてなマークを頭の中にいっぱい浮かべながら、俺は彼女の話しに相づちを打ちながら、受け取ってしまったバッグを持って一緒に歩き出してしまう。
多分、そのうちにこの渡されたバッグの説明をし始めるんだろうなと思いつつ、彼女の脈絡のない取っ散らかった話しに耳を傾けながら彼女のバッグを持って歩いていると、
暫くして彼女が
いきなり、突然に、
「あれ?私、バッグをどうしたっけ?」
ちょっと慌てて、
自分がバッグを持っていない事に気付くんだ。
「ん?俺が持ってるんだけど。」
ホッとする彼女。
どうやら、彼女は、
気を許した相手に対しては、自分の持っているあらゆる持ち物を無意識に手渡してしまう癖があるらしいのだった。
その相手と言うのは、
彼女が十分に信頼をしてる人らしいのだが、親や姉弟の場合は、差し出せば断られるので、自分が取った行動が変である事に気が付くし、そもそも受け取って貰えないので常に未遂に終わっているらしい。
なんと言うか、
そんなにもお喋りに夢中になれる集中力?
無心さには、呆れてしまいました。
それを知って以来、
デートの時には、顔を合わせた途端に彼女の持ち物は無意識に無条件で差し出され、俺もそれを無意識に受け取っている。
そんな彼女を妻にしてしまった俺は、なんだかいつも楽しそうに、お喋りに夢中になっている家内のバッグや手荷物を持って家内の隣で相槌を打ちながら歩んでいます。
トホホ、、、