モンゴル武者修行2024初級編レポート⑤


草原最終日(9/18)

楽しい草原生活もあっという間に過ぎ去り、とうとう草原で過ごす最後の日です。
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馬に乗って山へ

朝食

 あまり寝付けずに朝を迎えました。それでも朝日に煌めく草原と川、山を見ると元気になります。朝食はオーナーが車で持ってきてくれました。当初はキャンプに戻って食べるという話でしたが変更になったようです。ゲルの外でどこからかやってきた人懐っこい黒くて大きい犬とともに外で食事をしました。犬はよだれを垂らしていて油断なりません。可愛くていいやつなのですが、病気のリスクを考えると迂闊に触ることはできません。蛇足ですが、筆者は黒くて大きい犬(ビッグ・ブラックドッグ)と聞くと同情せざるを得ない大変不穏な雰囲気を感じてしまいます。

ゲル解体

 朝食後、ゲルを解体しました。今度は遊牧民の力なしです。前日に一度やっているためか1時間ほどで順調に解体ができました。解体したパーツはオーナーが運転してきたトラックに載せました。やはり普段は牛車を使わないのでしょう。

解体されたゲル

乗馬開始

 ゲルを解体してから待っていると遊牧民が馬を引き連れてやってきました。馬に乗って山に松の実を取りに行くという名目で遠出します。私は引き続きリュウセイ号に一人で乗りました。失格になっていなかったようです。前日に加え3、4人ほどがさらに一人で乗ることができたようです。半数が一人では乗れなかったということでもあり、現実は厳しいと言わざるを得ません。
 この日は前日と比べさらに長い距離を走りました。この頃になると景色を楽しむ余裕も出てきました。山を背景に人工物がほとんどない広大な草原を馬に乗って走っていると、長年淡く夢を見てきたことが叶ったのだなという実感と景色の雄大さに胸を撃たれ涙が出そうになりました。学生時代のころを思うと自分の人生の中でこのようなことができるとは思っていなかったため感無量でした。ぜひ一人でも多くの人がこの景色を味わってほしいです。

この景色の中で馬に乗れば最高の気分


 途中で川に入り給水を挟みながら1時間30分ほどかけて山に向かいました。急な坂になっても馬は力強く登っていきます。昔の人も縦横無尽に馬で駆け回っていたのでしょう。

山で昼食

 山の麓に着くと馬から降り自由時間になりました。これまで木がない場所にずっといたので森に入ると少し不思議な気分になりました。森は細い松で構成されており、所々伐採されていました。日本によくある森とはかなり違います。やはり木が育つには過酷な環境なのでしょう。 

森と馬


放牧された馬もいる

 この日は気温がやや低く、風が強かったため少し辛かったです。服装をどう決めるべきか結局、最後までよくわかりませんでした。
 1時間ほど待つとオーナーが車で昼食を持ってきてくれました。寒さと空腹に染み渡ります。腰を下ろしたり手をつく際、山の中でも家畜の糞があるので油断なりません。
  さて、肝心の松の実は松ぼっくりの中にあるそうです。しかし、麓にある松ぼっくりでは小さすぎて実が取れないそうです。結局、昼食の際にオーナーがどこからか持ってきてくれた巨大な松ぼっくりから採取することになりました。この辺りはご愛敬ということで・・・。
 

巨大な松ぼっくり。この中に松の実がある
表皮を剥ぐと松の実が出る。殻を割って食べる。

帰宅、そして雨

 昼食を食べ終わると馬に乗ってゲルに戻ります。その前に体が冷えているから温めようということになりました。どうするのかというと山を登って体を動かすというまさかの解決法でした。戻りは全体的に駆け足でした。気温が下がってきたので早々に戻ろうということになったそうです。リュウセイ号は先頭についてどんどん走ります。時々多少強引に減速し、先頭と距離が開いたところで一気に加速させてみたりもしました。鐙が外れそうになところをこらえ高速で走ると、風になったようで楽しいという他ありません。次機会があればもっと長い距離を速く走ってみたいですね。
 帰り着くころに雨が降ってきました。草原に着いて以来初の雨です。本来ならばもう一度馬に乗る機会があったようなのですが、雨で中止となり、モンゴルでの乗馬はこれで終了となりました。
 この後、乗馬の代わりに乳製品づくりを見学することになりました。

ボーダーコリー体験と虹

ボーダーコリーになる

ゲルに戻ると、今までいなかったたくさんのヤギや羊がいました。大変牧歌的な光景です。


ゲルのそばに現れた家畜の群れ

ところが、キャンプのおじいさんがヤギに向かって激怒しています。ただ事ではありません。少しすると、私たちに仕事の依頼が来ました。内容は、今いるヤギや羊は隣の遊牧民から来たものだから、向こうまで追い立ててほしいとのことです。隣といっても遥か彼方です。ボーダーコリーが羊を追う様子を見てみたいと思ったことはありますが、まさか先に自分がボーダーコリーになるとは思ってもみませんでした。
 一人で追うだけでは群れは分散するだけで意味がないので、複数人で追い立てます。こちらが追いかけると、向こうも全力で逃げます。年甲斐もなく久しぶりに草原で全力疾走をしました。ヤギを追いかけながら走ると、集中して案外長く走れるものです。止まった瞬間は地獄になるのですが…。
 ある程度追い立てると、家畜の川が形成され、先頭についてきちんと元の場所に戻っていきます。はじめはどこまで追わなければいけないのかと絶望していましたが、100mほど追ってミッション完了となりホッとしました。

家畜の”川“

仕事が終わるころ、雨が弱まり日差しが出てきたところで虹が出ました。遮るものがない中で見る虹は非常に美しいものでした。端から端まで草原をかける虹は、日本では見られない光景です。馬には乗れませんでしたが、綺麗な虹を見られたので十分満足です。

綺麗にかかった虹。二重にうっすら見える

馬と写真撮影

 乗馬が中止になったことで遊牧民が気を利かせてくれたのか、最後に私たちを順番に馬に乗せて写真撮影の時間を設けてくれました。乗馬中は写真を撮る機会もないので貴重な時間でした。また、ほんの少しですが一人で乗れた方もいたようなので実に粋な計らいです。
 時折遊牧民が何かのために馬に乗って駆け回ります。その姿はカッコいいというほかなく、かつてのモンゴル帝国はこうしてできたのかななどと感じ入りました。

乳製品づくり(その3)

アロルづくり

 最後に乳製品づくりを見学しました。前日にできた脱脂した酒粕を整形しアロルを作ります。アロルはブロック状の他、フジッリのように細い形にすることもあるそうです。酒粕を穴の開いたボウルに入れ、押し出すことで成形します。穴の開いたボウルはアロル成形のために存在する道具のようです。無駄なものを置く余裕がないゲルで専用の道具を置くということはアロルの地位の高さが伺えます。

細長いアロル

お土産を渡す

 お世話になった遊牧民一家に会うのもこれが最後ということで挨拶とお土産を渡すことになりました。なお、年によっては渡す時間がないこともあるそうです。今回は雨が降ったから時間ができました。一人ひとり準備してきた思い思いのお土産を渡しました。私は加賀棒ほうじ茶とお菓子を渡しました。モンゴルでは「立つ」というのが縁起が良いらしいので"茶柱が立つ"お茶を持っていけば二重に縁起が良かろうと考えました。考えすぎて上手く伝わっていなかったのでもう少しシンプルにすべきでした。気持ちは伝わっていたと信じたいところです。
 ウケが良かったのは酒と布です。お父さんは酒を手にすると非常に嬉しそうに神棚に置いていました。メンバーに布染の職人さんがおり、美しく染色されたチートアイテム見事な作品で、非常に好評でした私も欲しかった
 名残惜しいですが遊牧民のゲルを後にし、次の日の予定を聞きながら最後の夕食を食べました。

最後の夕食もボーズ
やったことリスト ①をやった記憶はない

翌日はなんと4時起きです。
 夜になると急激に気温が下がり、とうとう雪が降ってきました。前日まで昼は暑いくらいだったのに、ここまでの変化は日本ではなかなかありません。モンゴルの環境は本当に過酷です・・・。

草原最終日も盛りだくさんであっという間に終了しました。旅は終盤に入りウランバートルに戻ります。

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