緊急事態につきまして
2015・6月
第2稿
「緊急事態につきまして」・登場人物
堀拓哉(19)学生。北野由紀のことが好き。緊急事態発生中。
山本豪(19)学生。堀の友人。よく振られる。緊急事態発生中。
高橋智子(19)学生。堀の友人。話を聞かない。緊急事態発生中。
ATSUSHI(20)学生。堀の先輩。厨二病に感染。緊急事態発生中。
北野由紀(19)学生。堀の友人。堀くん捜索中。緊急事態発生中?
教師(40)話し方がゆっくりな教師。
クラスメイト数人 エキストラ
教室、昼、授業中、S
堀拓哉(19)、シャーペンかたかたさせたり時計を見たり落ち着きがない。教師の話し方はゆっくりで余計苛立っている。
教師 「じゃあ今週はここまで。来週は課題提出だから忘れるなよ〜」
生徒、荷物片付けざわめきだす。
堀、教室出ようと急いで荷物まとめる。
山本豪(19)が話しかけてくる。
山本 「なあ拓哉聞いてくれよ!まじで緊急事態なんだけど!」
堀、手を止め隣の席を見る。
堀 「何がだよ」
山本 「彼女に振られちゃってさー!もうすぐ夏だよ?!海ですよ?!」
山本、大袈裟に悲しむ動作をする。
堀、笑いながら再び荷物を片付け始める。
堀 「どうせ山本がなんかしたんだろ。もう何人目だと思ってんだよ」
山本 「いや今回はまじで本気だったんだって!ったく、せめて拓也は俺に優しくしてくれよ!」
堀 「はいはい(軽く流しつつ荷物まとめ終える)じゃ、俺急ぐからまたな。夏までに出会いあるといいな」
山本 「おい話聞いてくれないのかよ!そんな冷たいとお前もゆきちゃんに振られんだからな!」
堀、軽く手を振って教室を出る。
山本 「ったく…。俺の話スルーして急ぐってどこに行くんだか」
廊下、昼、S
堀、教室を出ると足早に歩き出す。(周囲は見ずにまっすぐ)
高橋智子(19)、堀を見つけて話しかけてくる。
高橋「あ!堀くん!堀くんってゼミ佐々木先生だったよね⁈」
堀「え?うん(足踏みしながら)」
高橋、台詞被せるように、
高橋「もーいま緊急事態なんだ!先生に呼び出されてて!なんかやらかした覚えもないしなんだろ⁈怒られるかな⁈佐々木先生って怖い⁈」
堀「いや、あの」
高橋「これから行くところなんだけどさー!あーやっぱり行きたくない!行かなくていいかな⁈そんなわけないか!」
堀「たぶん、」
高橋「あ!そういえばゆきが堀くんのこと探してたよ!」
堀「え、」
高橋「てかいつ告白するの⁈男ならさっさとと言っちゃえよ!」
堀「いや、まぁ」
高橋「あーそれより早く先生のとこ行かなくちゃ!めっちゃ怖いよー!とりあえず行ってくる!」
高橋、勢いよく去っていく。呆気にとられた堀、我に返ったように歩き出す。
堀「下の階のほうがすいてそうだよな」
階段、昼、S
堀、#2より足早に階段を下る。曲がり角に突然ATSUSHI(20)が現れる。
堀「あ、ATSUSHIさん!」
ATSUSHI「(テンション低く)堀か…。俺にまとわりついてくる漆黒の闇は誰がもたらしたのか。嗚呼緊急事態。世界は今迷走している…」
堀「どうしたんですか(急いでる感だして)」
ATSUSHI「世界の崩壊…いや、最初から虚無の中を生きてきたのかもしれないな」
堀「いや意味が分からないです(真顔で)」
ATSUSHI、自嘲気味に微笑む。
ATSUSHI「バンド…解散しちまったんだ」
堀「えっ、!先輩ライブとか結構やってましたよね(足踏みしながら)」
ATSUSHI「…芸術性の違いってやつだな…」
堀「なるほど、ちょっと急ぐんで失礼しますね!」
ATSUSHI「あ、おい」
堀、ダッシュで去る。限界近そう。
ATSUSHI「愛の欠如が俺を孤独へと誘う…」
廊下(トイレ前)、昼、S
堀、軽くダッシュで走る。トイレが見えてくる。女子トイレから北野由紀(19)が出てくる。
北野「拓哉くん!(嬉しそうな顔で)」
堀「ゆゆゆゆゆきちゃん(かなりトイレ行きたそうに)」
北野「ちょうどよかった。お話したいことがあったの」
堀、繰り返しうなずきながらじりじりトイレに近づいていく。
北野「拓哉くんって…好きな子、いる?」
堀「えっ」
北野「いるの?」
堀「い、いるとかいないとかじゃなくてね、とりあえず今はね、ト」
北野「ともこちゃん⁈(被せるように)ともこちゃんが好きなの?」
堀「それはないわ!高橋人の話聞かないんだぜ⁈さっきも…」
北野「ほら、仲いいんだもんね、さっきも話してたんだ、」
堀「なんでそうなんだよ!話を聞いてよ!俺が好きなのゆきちゃんだから! 」
北野「え、」
堀「ちゃんと伝えるからとりあえずトイレに行かせて!…あーー!いいからそこで待ってろ!」
堀、北野を指さし言い置くとトイレに駆け込む。
北野、呆気にとられたように立ち続けている。トイレの中から間に合ってよかった的な溜息の声が聞こえてくる。
(しばらくしてから)堀、トイレから出てくる。
堀「あの、さ(きまり悪そうに下を見て頭を掻きながら)
さっきはちょっと、緊急事態だったんだよ」
北野、黙ってうなずく。
堀「もっかい伝えなおしてもいいですか」
堀、顔を挙げて照れくさく笑う。
Tこんな青春も、あっていい
画面暗くなる。
(完)