やしゃご「アリはフリスクを食べない」を見てきた。

*若干作品内容にも触れてます。具体的ではないはず。

初演の時はまだ仙台に住んでいて、知人から評判だけ聞いていたいつか見たかった作品。

130分休憩なしでしたが驚くほど時間を気にするタイミングがない。ずっと濃密。
シーンの変わり目に長めに佇む無人の部屋が好きだった。

すごいなあと思ったのが、舞台上に出てくる総勢12人がそれぞれの視座で出来事を見ていると感じられたことだった。
正直に、物語はとてもつらかった。
でもそのつらさはどの立場のどの事情を持ってるかで違くて、そのどれもが「そうだよなぁ、そう思ってしまうよなあ」と納得させられていた。
その結果どの立場にも偏っていない物語になってるように感じた。

特に印象的だったのが、
後半のとある語りは泣ける演出になっていて、(もれなく泣いたけれど、)そこで昇華されたらすごく嫌かもと思った時にそれを拒絶する人がいたこと。
その語りに間違いはなくて、でもそれだけが正解でもないことを観客の想像力に委ねる、ではなく舞台上でちゃんと起こせているのは、戯曲・演出・俳優の演技全部のバランスがとてつもなく絶妙だったんだろうなと。一歩間違えば簡単にどちらかに偏っていたと思う。
別のシーンの一見突き放すような一言も、それまでに計り知れないほど葛藤したこと、それでも守らなきゃいけないものがあること、そのために犠牲となることの重さを観客に押し付けるわけではない"分からせる"みたいな塩梅がすごかった。セリフを聞いた数分後にゾッとした記憶。

距離感が違えば見え方も全然違いそうな作品だけど、私に見えたのはそんな感じでした。
恐ろしいほど集中した。

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