二階席 南東 W列
3年ぶり3度目のサカナクション。
心臓に響き、服を揺らし、全身に襲いかかる音とそれに合わせて広がる光。
毎度想像を超えてくるライブは唯一無二。
恥ずかしさなど捨てて手を上げ飛び跳ねる。
サカナクション、そして音楽の力は本当に年齢や性別、一切の垣根を取り払うことを一人で来ていた母よりも年上に見える女性が教えてくれた。
しかし、声は出せない。
当たり前が変わった。
ここ数日の東京の感染状況を考えると参加するべきでなかったのだろうか、何度も考えた。
実際、武道館公演の多くのチケットがトレードに出されたという。
サカナクションのチケットがトレードの場に多く出品され、当日券も販売されるような事態。
ファンのみんなが考え抜いて参加し、また参加しなかった。
何が正しいのだろうか。
分からない。
葛藤とはまさに。
今回自分は参加することを選んだ。
参加を諦めた方のチケットで。
今回座った席に元々座るはずだった人はどのような人でどのような思いで今回参加を取りやめたのだろうか。
これもまた分からない。
だが参加したことは全く後悔していない。
前日の一郎さんのインスタライブで聞いた、「好きなミュージシャンが今同じ時代に生きていることの素晴らしさ」という言葉。
トレード抽選に申し込むかを決めあぐねていた自分を決心させた言葉だった。
今回のツアーやアルバムの題名にされている「アダプト」。
「適応する」という意。
今世の中は前代未聞の事態に晒されている。
こんな世界に日常になると思ってもいなかった。
当たり前が当たり前でなくなると思ってもいなかった。
何が正しいのか分からない。
それでも生きていかなければならない。
何度も失敗や成功を繰り返していくのだろう。
新型コロナウイルス感染症が広まって2年。
2年も大人しくしていられるほど若くない。
自分自身が決断した事が正解と信じるしかない。
今に「アダプト」し歩み続けていかなくてはならない。
そしていつか、この席に座れなかった誰かと、同じ空間で、思い切りの笑顔と声で、踊りあえることを願って。